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大陸二分の計

敵拠点を強襲する電撃作戦を

いつまで続けるか考えていた勇者だが、

その兆候はわかりやすい形で示された。


転移強奪を使った

爆撃機による絨毯爆撃、

高空から落下する爆弾が

敵拠点である城に着弾する寸前、

上空に巨大な魔方陣のような

シールドが張られ

これが防がれたのだ。


人間世界の通常兵器でも

魔道士が本気で展開した

シールドは打ち破れないということか。


ここでムキになって

シールドを打ち破ろうとすることはない、

ここは撤退で全く問題ない。

今はまだそこに労力を

費やす時ではないのだ。


そして、これは同時に

この奇襲作戦が敵の間に

何かしらの手段で

伝わったということでもある。


となれば初手の奇襲作戦も

一旦ここで終了とせざるを得ない。


敵が警戒しているところに

出向いたのでは

それは奇襲とは言わない。


勇者的にはいい頃合ではなかったか

とも思う。


後はまたほとぼりが醒め

敵が忘れた頃にでも

突発的に奇襲をかければよい。


勇者はそう思いながら

次の行動に移ることにする。


-


数々の魔王軍の拠点を

瞬く間に潰した新しい勇者、

これに激怒した魔王から

勇者抹殺指令が下される。


当然そうなることを

予想していた勇者は、

しばらくは表立った活動はせずに

もう一つの中長期計画に

着手することにする。



まずは魔王の敵勢力圏内、

そこの環境を調査するために

敵勢力のど真ん中に

単身で潜入して行かなくてはならない。


当然人間などは住むことを

とっくに放棄している地なので、

人間がいるだけで目立つというエリア。


勇者は自らとバイクを透明化する

インビジブル能力をつくり、

バイクで敵地へと乗り込んで行く。



当然舗装などはされていない道、

バイクでもなかなか厳しいのだが、

そこはお得意の能力を使って

荒地や森の中でも

走れるようにはしていた。


道中は魔王軍配下と思われる

亜人や魔族、魔物、魔獣しかしおらず、

スリリングな旅でもある。



敵勢力圏内の拠点、

その周辺環境を見回る勇者。


それは何処も

奥深い森林に囲まれており、

そばを美しく澄み渡るような

清らかな川が流れている。

中には湖のそばにあることも。


『やはりか』


勇者は自分の仮説に対する

確信を深める。


敵の拠点があるということは

敵は少なくとも

周囲の環境には適合している

もしくは比較的

快適であるということ。



『こんな綺麗な

水と空気の中で暮らしてんなら、

環境破壊とか汚染とかで

一発で死ぬんじゃないか?』


目の前を流れる

透明に澄み切った川を

見つめる勇者。


『例えば、

この川に毒でも流したら、

奴らは死ぬんだろうか?


水や食べ物で

生命活動を維持している者達であれば

おそらくは全滅するだろう。


しかしな、

こちらの毒と言っても

よくわからないし、

トリカブトでも効くのか?


今度あの魔道士見習いの小僧に

聞いてみるかな』



この異世界が

どうであるかはわからないが、

少なくとも勇者が元いた人間世界で、

ファンタジー系の生物は

そもそも人間が大自然を畏怖して

生み出されたという背景があり、

それがどんな種族であろうとも

大自然とのつながり無しでは

成立しない筈なのだ。


それを裏付けるように、

ファンタジー世界には

ヘドロ怪獣や公害怪獣に

該当するような存在はいない。


もしこちらの異世界も同様に、

大自然との繋がりが

あるとするならば、

この世界の自然を

環境破壊、環境汚染すれば

そのうち奴等はいずれ死ぬ筈、

それが勇者の仮説。


だがそれが影響力として現れるのは

時間が掛かることでもあるので、

目前の短期目標というよりは

中長期計画ということになる。


いずれは大陸を物理的に二つに割って、

環境汚染された西側に魔王達を閉じ込め、

人間達には東側半分に高い壁でもつくって

そこに閉じこもっていてもらおう、

それが勇者が考える中長期計画。


『天下三分の計』ならぬ

『大陸二分の計』。






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