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見えない敵

勇者は攻撃の手を休めることなく、

テロとして破壊活動の限りを尽くした。


眼前に広がる

地獄のような光景を前に

なお追い討ちをかけていく。


逃げ惑う魔族や魔物、

その先から超大型トラックが出現し

轢きながら逃げ道を塞ぐ。


魔王のように転移を使って

逃げた者はいたかもしれないが、

そもそも転移は

勇者や魔王レベルでなければ使えない技であるため、

居たとしてもごくわずかであろう。



魔王を暗殺することには

失敗した勇者だが、

これだけの数の敵を

一網打尽に出来るチャンスなど

そうそうない。


上手くいけば

数十万の敵兵力を

ここで削ぐこと出来るのだ。


魔王様、

こんなに兵を集めくれてありがとう、

そう感謝したいぐらいの気持ちである。


それでも魔王を

仕留められなかったことに

苛立ちと悔しさはあったが。


-


城の脇にある

見張りやぐらから

傍観している勇者。


誰の目にも見られぬよう

存在を消して。


勇者は自ら名乗り出ることも

姿を見せることも決してしない。


見えない敵が一番恐ろしいのだ。


見えないテロリストに

怯え続けてもらうのも大事なこと。


隣人がテロリストや

大量殺人鬼かもしれないという恐怖、

疑心暗鬼。


おそらくこれからは

内部工作、撹乱も必要となるだろう。


勇者一人に対して

魔王軍があまりに多過ぎる。


お互いがお互いの足を

引っ張り合ってもらって、

あわよくばお互いに

殺し合ってもらいたい。


それが魔王暗殺に失敗した

勇者の次の一手。


-


集まった群衆の

大半が死んだ凄惨な現場。


負傷はしているがまだ生き残っている

魔王軍の要人らしき者を見つけた勇者は

姿を消したままそこに近寄る。


剣で要人の両目を斬り、潰すと

勇者は魔王軍へのメッセージを伝える。


魔王にだけではなく、

他の者達に伝わることが

今回は肝要でもあった。


「いいか、これは伝言だ。

魔王とお前の仲間に伝えろ。

勇者は魔王さえ死ねば、

他の者を殺すことを止める」


勇者はあくまで

自分が勇者であるとは名乗らない。


誰が伝えているのかわからないような

メッセージの伝え方をする。


勇者には仲間がいると

相手は思うかもしれないし、

勇者本人だと思うかもしれない、

だがそれでいい。


勇者の次の計画は

もうはじまっている。


離間の計。


そのためにはこの大虐殺は

どうしても必要なものでもあった、

少なからずこのテロリスト勇者に

恐怖を感じてもらわなくては意味がないのだ。


魔王の命さえ差し出せば、

他の者は助かる。


それを聞いた時

少なからず敵内部には

変化が生じるだろう。



そして、もう一つ。


「勇者が何故この集会を知り、

襲撃出来たと思う?

お前らの中にいるんだよ、

勇者と通じている内通者がな」


もちろん勇者に内通者などいない、

これを信じるかどうかもわからない。


しかし敵内部には少なからず

疑心暗鬼が生まれて来る。


最初は小さいものが

その内段々大きくなっていくし、

そのための仕掛けもする。


メッセージを伝えると、

勇者は目を潰された要人だけを逃す。


『後は全員皆殺しだ』






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