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転移の条件

今まさに青年は

異世界に転移しようとしていた。


死因など、彼にとっては

もうこの際どうでもいいのだが、

そこはやはり定番の交通事故

ということになるだろうか。


そして青年は

激しく怒りを露わにしている。


「そんなとこに

勇者として転移するなんて、

ただの罰ゲームじゃねえか」


青年の目の前にいる、

転移を司る女神が提示する

転移先があまりにも

ひど過ぎるからに他ならない。


-


前任の勇者が魔王に倒され、

今まさに滅びようとしている異世界。


魔王軍に蹂躙され、

大地は荒れ、土地は痩せ衰え、

作物が育たぬため、

食べ物も少なく、

貧しくお金がない。


成人男女はほとんど

魔王軍と戦って死んでいるため、

残っているのは子供、年寄りばかり。


まともな大人がいないので、

後継者に戦闘や魔法、

武具・防具のつくり方を

教えられる人間すら

ほとんどいない。


とにかく人材がいない。


従ってロクな武器・防具が

そもそも売っていない。


そんな異世界に勇者として転移するなど

余程の縛りプレイ好きな

ドMぐらいなものであろう。


-


「せめてレベル最大で

最高位魔法が使えるようにしろ、

後チートスキル付け放題で」


彼は交渉の一つもしてみせる。


「本当に申し訳ないのですが、

レベルはある程度低いところからしか

はじめられない仕様なのです、

そういう仕組みになっておりまして」


若干気が弱そうな女神は、

本当に申し訳なさそうにしている。


「じゃあ、ダメだ。

そんな無理ゲーに

付き合ってやる義理もない。

転生でもいいから

まっとうな先にしてくれ」


気の弱い女神はしょんぼり。


「そうですか、わかりました。

あなたが、どんな手を使ってでも勝つ、

ゲームマスターだと聞いて

期待していたのですが……」


そう言われると

どうにも断りづらい。


しかし、どちらにしろ

そんな滅亡寸前の世界で

低いレベルからはじめたところで、

まともな魔法を習得する頃には

とっくに世界は滅びているか、

自分は殺されているだろう。


どうするか考えていると

彼の頭に閃きが走る。


「いいか、

今から俺が言う特殊能力を付けろ。


先天性の特殊能力なら

レベルは関係ないだろ。


そしてその能力は

レベルに干渉されないようにしろ、

それが俺からの条件だ。」


「その能力って、

一体何なんですか?」


「能力を自由に創造出来る能力」


「は?」


一瞬何を言われたのか

わからない弱気な女神。



よく話にある


「あなたの願いを三つだけ叶えましょう」


と言われて、


「いくつでも願いが叶えられるようにしろ」


と願うレベルの条件だが

この無理ゲーを何とかしようと思えば、

それぐらいしなくては

ダメだということであろう。


「ちょ、ちょっと

待ってくださいね、

上司に相談してみます……」


弱気な女神はあたふたしながら

どこかに行ってしまう。


『お前に決裁権ねえのかよ』


彼はしばらく

そのまま待たされることになる。


-


ゴリ押しで注文どおりの能力を手に入れた彼、

噂にたがわぬ手段を選ばないっぷりで

これから無理ゲーを攻略して行くことになる。






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