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真眼と翡翠  作者: 島りすた
接近遭遇
7/10

護石と妖精

 暴力集血集団、通称ヴァンプ。

 正式にそう名乗っている訳では無いが、通り魔的に人を襲っては流れた血を集めて持ち帰る為、吸血鬼=ヴァンプと呼ばれるようになった。

 彼等の最大の特徴は先述の通り血を集めている事だが、もう1つの特徴がある。その集団のメンバーは元々不良であるという訳でもなく、問題ない普通の人がある日突然引きこもり、数日後に集団の仲間入りをするという。そして個人差はあるが、またある日突然昏睡状態で救急搬送され、引きこもった所から全く記憶がない。また不思議な事に、全員が傷害罪を受け入れ、罪を償う選択をするのだ。

 そうしてメンバーが入れ替わるというのに彼らは常に統率がとれた動きをする。まるで何かに操られているようだ、と香緒里は思っている。

 その集団が香緒里を狙うかもしれないと言うが、彼らの標的は決まりがあるわけでもなく、たまたま出会ってしまった不運な人が襲われる形だ。

「狙われる理由は、谷崎先生と何か関係があるんですか?」

 問いかけると谷崎は項垂れたまま「ある」と答える。

「彼らを操っている男…というかオネェ…?がいるんだけど、ソイツとは昔から因縁があるんだ。今の香緒里ちゃんは俺がシンガンに条件付きの封印をかけたのがハッキリわかる。力ある者にならね。で、奴にもわかる。そうしたら、君のシンガンを利用する為に封印を解いて暴走させ、あらゆる情報を得る為の道具にする。…そういう奴だよ。アイツは」

「ちなみにだけどソイツに既に香緒里の事がバレてる可能性は?」

「それは無い。さっき俺のシンガンで確かめた」

「なら、まだ間に合うんだよな?」

「ああ。春樹もごめんな。こっちの事情でアレコレ制約かけてたのに、結局こんなで」

「香緒里を守れるなら何でもいいよ。『いつか』が今に限りなく近くなっただけってことだろ?」

「そうだな。忙しいとか言ってられない状況だし。何より『主』の1人が夢から覚めたし、今なら何とか」

 制約とか何やら不穏な言葉が聞こえたが、谷崎と春樹だけでなにやらわかりあっているようだ。香緒里はちっとも覚えがないが、谷崎と会ったことがあるらしいので、もしかしたら香緒里のシンガンに対して何か対策をしてくれようとしていたのだろうか。

 まさか、と思いつつ2人を見ていると谷崎が表情を引き締め、また香緒里を見る。

「それで、対策なんだけど」

 そう言うと持ってきた鞄を開け、小さな箱を取り出してテーブルに置く。

「これを常に身に付けていて欲しい。サイズは勝手に合うようになってるけど、指じゃなくても鎖を通して首にかけておいても大丈夫だよ」

 谷崎が取り出した箱を開けて見せてくる。中には小さな深緑色の石が付いた指輪が入っていた。

「これを、ですか。何か特別な指輪なんですか?」

 箱を渡された香緒里は指輪を取り出し、眺めてみる。石がどことなく不思議な輝きを放っている気がした。

「超特別製かなぁ。とある女神に力を込めてもらった護石だよ」

 今なんて言ったこの男。

 女神って何だ。

「ここ御堂市は特殊な土地で、神とか女神とか呼ばれる存在がゴロゴロいるんだよね。詳しくは言えないけど、そのうちの一人っていうか一柱?にお願いしてつくってきた。俺の術の気配なんて完璧に隠してくれるよ」

 さらりとなんでもない事のように言うが本当に何を言ってるんだこの男。

 ゴロゴロいるとかどういう事なの。

「いやー、お願いしたらめっちゃ喜んで最後のお仕事がんばるわー!って張り切って力込めてくれたんだよね。あの人女神的な仕事は暇してたからね」

 ニコニコしながら言うが、ちょっと意味がわからない。

 とんでもない事暴露してんじゃなかろうか。

 てか最後のお仕事とか何なの。

「あ」

 言いすぎたと気付いたのか。しまった、とでも言いたげな顔で押し黙った。

 しばしの沈黙の後。

「今のは聞かなかった事に…」

 と途方に暮れた表情で言うがどこを聞かなかった事にしたらいいやら。佐山家一同言葉がでなかった。

 そうしてまたしばらく全員が押し黙り、しばしの沈黙。

 唐突に持ったままだった指輪が震えた。

「え、何これバイブ機能とかついてるの意味わからない」

 慌てて指輪を箱に戻すと、指輪の石から光が飛び出す。

 光はふよふよと漂い、香緒里の目の前で止まると人の形を成した。

 体長10センチ程度の愛くるしい幼女がたんぽぽの綿毛らしきものを持って浮かんでいる。

「ちょーっと失礼しますねぇー?貴方がカオリ様ですかぁー?」

 10センチ幼女が喋りだした。

 もう色々と理解が追いつかない事が起こりすぎて放心しかけた香緒里が曖昧に返事をすると、10センチ幼女はニコニコしながら飛び跳ねるように上下に動く。

「とっても素敵なお姉さんで嬉しいぃ!ポポはポポですぅ!よろしくですぅ!」

「ちょ、こらポポ!まだ出ていいなんて言ってない!」

「ジェイド様がなかなか紹介してくれないのがわるいんですぅ。早くご挨拶したいのにぃ、ぐだぐたもごもごしてるからぁ、待ちきれなかったんですよぅ」

 谷崎が慌てて声を出すと、ポポというらしい幼女がふよふよと谷崎に寄っていき、両手を腰に当てて抗議するように言う。

「…今は柊って呼んでくださいポポさん…」

 両手で顔を覆った谷崎がボソボソ言うとポポは「わっかりましたぁシュウ様ぁ!」と言ってまた跳ねるように動く。

「わからない事があれば、このポポが色々と大丈夫な範囲で説明してくれます。…ポポ、姿見せるのはこの家族と俺が許す範囲の者たちだけにして…」

 ポポはニコニコしながらはぁーい、と可愛らしく返事をする。

「今日はそろそろおいとまします。なんか、本当にすみません色々と…。香緒里ちゃんにはまた説明しないといけない事と教える事があるので、日曜日、もし空いてたらで良いんだけど」

 何故か肩を落として疲れた表情の谷崎が香緒里を伺う。特に用事も約束もなかったので了承すると、ほっとしたようにふにゃっと笑って帰って行った。

 この表情(かお)はやっぱりときめくんだよね。

 悔しいけど。

 変態だけど。

 少し高鳴った鼓動を抑えるようにため息をついて、深呼吸する。


「なんだか、不思議な人だったな。柊君という人は」

「そうねぇ。香緒里を危険に晒したって謝ってたけど、色々と対策してくれたり」

「怒る気にはならんな。彼は沢山悩みを抱えていそうだ」

「あー、確かに色んな問題抱えすぎて時々本気で心配になるな」

 利明、美夜子、春樹がゆったりとお茶を啜りながら谷崎について話すのを横目に、香緒里はふわふわと浮かぶポポについて考えてみる。何もわからない。

「…聞きたいことがあるんだけど」

 問いかけるとポポは何がそんなに嬉しいのか、なんですかなんですかぁ?とニコニコしながら跳ねる。

「えっと、ポポちゃんは、何なのかな」

「何と言われてもぉ…ポポはポポですぅ。…あ!たんぽぽの妖精のポポですぅ!」

 最初、質問の意図がわからななかったらしく首を傾げたが思い当たったらしく、また跳ねる。跳ねるのはデフォなのかな。

「あとぉ、連絡係兼カオリ様の護衛役なのですぅ!」

 ニコニコと飛び跳ねながら意外な答えが返ってくる。

 護衛役?と聞き返すと、そうですぅ!と答え、ふよふよと移動して指輪の上に乗る。

「この指輪の翡翠に宿ってぇ、いつでも!どこでも!カオリ様を危険から守るのですぅ!ポポじゃ難しい危険の場合は即ジェ…じゃなかった、シュウ様に知らせるのですよぉ。知らせるのは一瞬ですからぁ。危険デンジャーヘルプミーってシュッてしたら、直ぐにシュウ様に伝わるのですぅ!」

 持っているたんぽぽの綿毛を振り回しながら教えてくれるポポ。綿毛は魔法使いの杖的な気持ちで振り回してるのかな。可愛い。

「この翡翠ぃ、すっごく住み心地良いしぃ、カオリ様はとっても素敵なお姉さんだしぃ、この御役目貰えたポポは幸せ者ですぅ!」

 嬉しそうなポポを見てほっこりする。

「そっか。ポポちゃんにあんまり危険な目あって欲しくないんだけど、ずっと一緒に居てくれるのは嬉しいな。よろしくね、ポポちゃん」

 香緒里の言葉に「はいですぅ!」と返して踊るように飛び跳ねるポポ。

 香緒里とポポのやり取りを見て和んでいたらしい利明は「家族が増えるのはいいな」と呟き、美夜子と春樹も笑顔で頷いた。

 こうして佐山家に新しい家族(?)が増えたのだった。

幼女(10センチ)降臨。

やっと出せた…。

早く彼女を書きたくてたまらなかったんです。

そして罪悪感と色々諸々で打たれ弱くなってる柊。次辺り変態が爆発しそうです。(予定は未定)

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