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真眼と翡翠  作者: 島りすた
接近遭遇
6/10

シンガン

また間が空いてしまいました…。

 谷崎と春樹以外の3人はどこかソワソワと落ち着かずにいるようだったが食事が終わり、食器類を片付けてからお茶を飲んで一息つく。

 ご馳走様でした、と言って湯のみを置いた谷崎は大きく息を吸い、深呼吸してから立ち上がる。

「まず、謝らせて下さい。香緒里さんを危険な目にあわせてしまい、本当に申し訳ございません」

 そう言って頭を下げるが香緒里には危険な目あった覚えがなく、美夜子と利明が谷崎と香緒里を交互に見てくるのにも、どう反応を返したら良いのか分からない。

「あの、危険な目にあった覚えがないんですが…?」

 香緒里が恐る恐るそう聞いてみると、谷崎は下げ続けていた頭を漸く上げる。

「危険だったんだよ。今朝、暴走しかけただろう?」

 そう言って、自分の目を指差す。

 香緒里は漸く何の事か思い当たって、驚く。彼は香緒里の能力を知っていて、暴走しかけた事にも気付いていた。

「…謝られる意味がわかりません」

 少し声が震える。改めて見た谷崎の瞳は、やっぱり右目だけ揺らめいて違和感があり、更に底知れぬ光を見た気がして心が落ち着かない。

「俺も同じ能力を持ってるんだよ。それが共鳴したせいで君は暴走しかけたんだ」

 そう言った谷崎はとても申し訳なさそうに肩を落とし、目を伏せる。

「…先生も同じ能力を…?共鳴…?それなら谷崎先生も暴走しかけた?」

 そんな素振りはなかった、と不思議に思って聞いてみたが谷崎は軽く頭を振って否定した。

「いや、俺は共鳴の波動を感じた程度かな」

「同じ能力なのに?」

「同じでも土台が違う、というか。それもきちんと説明しないと納得できないよねぇ」

「そうですね。それに暴走しかけた時、谷崎先生に目を塞がれましたけど、もしかしてあれも意味がありました?」

「…意味がありました。ちゃんと説明する。すっごい長くなるけど」

「そうですか。ならとりあえずもう一度座って下さい」

 ずっと立ったまま長く説明させるのも、と思った香緒里が座るのを促し、座ったのを見計らって美夜子がもう一度お茶を注ぐ。

「そのお話は私達も聞いても良いお話なのかしら?」

 美夜子が少し戸惑ったように聞く。美夜子は勘が鋭いので、聞いていてはいけない話もあるのではないかと感じたようだった。

「今は大丈夫な話だけを。安全性を考えれば今はご両親は知らない方が良い話もあります。ですが時間が遅くなりそうなので、また後日香緒里さんにお話します」

 そう言った谷崎は1口お茶を飲み、また深呼吸をしてから話し始めた。



「まず、この能力はシンガンと呼ばれていて、両眼共になる者と片眼だけの者がいる。香緒里ちゃんのシンガンは両眼だから片眼のシンガンよりとても厄介なんだ。元々両眼のシンガン持ちは制御の方法を物心ついた時から学ぶような、例えば陰陽師や霊媒師なんかの家系に生まれる。君も恐らく遡って辿ればそういう家系なんだろう。出奔したり駆け落ちしたりした者の子孫って所か。両眼である分、魔力…ここでは霊力か。それが大きく、流れ込む情報量も多い。陰陽師や霊媒師の家で育っていれば、問題なくシンガンを制御できる。だが、香緒里ちゃんはそんな環境では育っていない。シンガンによる知識で多少は制御できるだろうけど、他のシンガン持ちと目を合わせた時の共鳴は知識だけでは制御が難しいんだ。だから暴走が起き、それに気付いて慌てて直接触れて暴走を抑え、ちょっとした封印も施した。…というのが今朝の顛末なんだけど、ここまでで質問は?」

 谷崎が言葉を切って見渡すと、おずおずと手が上がる。ずっと黙って難しい顔をしていた利明だった。

「他のシンガン持ちと目を合わせると暴走すると言ったが、片眼、両眼のどちらの場合でも暴走は起きるのか?」

「いえ、片眼の相手となら共鳴は起きますが、霊力の揺れを感じるとか、同じ能力があるとわかる程度ですね」

「という事は柊君は両眼なのかい?」

「ちょっと複雑なんですが元々両眼で、今は片眼に近いです。力自体は両眼とそう変わらないんですが、情報が歪んだりぼやけたりしてわかりにくいことがあるんですよね。俺の右目、義眼なんで」

 利明の質問に苦笑して答え、右目を軽く押さえる谷崎。義眼だから揺らめいて違和感があったのだろうかと考えつつ、他にも気になる事があった香緒里は手を上げた。

「谷崎先生は陰陽師か霊媒師の家系の人なんですか?あと、封印っていうのは?」

 香緒里の言葉を聞いた谷崎は「あー…そこ食い付いちゃうかー…まあそうだよねぇ」と呟いて右目を押さえていた右手をそのまま上に上げて頭を搔く。

「うーん…俺はそういう家系じゃなくって…今この場では詳しく話せない系なんだけど、生まれた時から力の使い方が備わってる一族っていうかなんていうか…。これは後日改めて教えるね。で、封印の話、ね。封印…封印はねぇ…うん」

 全員からの視線から逃れるように目をさ迷わせた谷崎はあまり言いたくない、みたいな態度だ。説明してくれるのではなかったのかと香緒里は言いたいのだが、じっと見つめ続ける。と、ため息をつかれた。

 ため息つきたいのこっちだ。

「あの、なんていうか、暴走に繋がる知識をシャットアウトするような術かけたんだけど、慌ててたから、なんていうか、ある人達にはとある情報ダダ漏れっていうか、その」

「…責任持って守るっていうから連れてきたんだぞ?」

 何やら言いよどむ谷崎に対し、冷ややかかつ地を這うような低音が響く。先に事情を聞いていたらしい春樹だった。

「そう、なんだけど、俺のミスで俺の事情に巻き込んで本当に申し訳ないわけで、改めてもう一度謝りますごめんなさい!このままだと巷を騒がせてる暴力集血集団に狙われるんでその対策をすぐ、今すぐさせていただきます!」

 両手で顔を覆って言う谷崎に、何故か腕組みした春樹が偉そうによし!とか言っている。

 狙われるってなんですか。

 話を聞いて、物凄く不安になった香緒里だった。

だんだん柊が素を隠せなくなってきてる。

春樹に怒られたあたりとか。


ああ…迷走…してる気がする…。

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