表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真眼と翡翠  作者: 島りすた
接近遭遇
10/10

女王様の話

ものすごく間が空いてしまい申し訳ない気持ちと共に今回後半がちょっと…重たい…かな…。

サブタイトルちょっと変えました。(10/2)

 日差しを浴びて色とりどりの花が咲くとても広い庭園。

 見渡す限り、様々な花や植物達が競うように生き生きと花を咲かせている。

 咲く季節が違う筈の花も多いが、どうやって育てているのか。

 その広い庭園にある四阿で、ぼんやりと周りを見る香緒里。

 向かいに座る美女は優雅に紅茶を飲んでいる。

 テーブルの上ではポポが広げたハンカチに座り込み、自身と同じくらいの大きさのクッキーをかじっている。

 傍らにはオレンジジュースが入った小さなグラス。それでも身体の半分くらいはあるのを器用に抱えて飲む姿も可愛らしかった。

 クッキーの匂いがした途端にポポが飛び出して来た時はびっくりしたが、ポポらしいと微笑ましく思った。

 突如頭上から子供の楽しそうな笑い声。見上げると龍がいた。とても長く大きな体躯を優雅にくねらせ空を飛んでいる。その背中に子供達が乗ってはしゃいでいた。

 何だか一気に異世界感でた。

「すみません、うちの子供達です」

 申し訳なさそうにしているのはメイドさんだ。谷崎の監視、という名目でこの場を離れたキースの代わりだと言って給仕をし、傍に控えている。名前はローザだったか。

「良いのよ。私も弟と一緒によく貴方やジェイにしてもらってたじゃない」

 目を伏せるローザに言うと美咲も頭上の龍と子供達を見つめる。

 懐かしいわね、と呟いて微笑むとまた紅茶を飲む。

「さてと。オリちゃんも少し落ち着いたようだし、改めて。先ずは私の本名からにしましょうか」

 そう言って美咲はカップを置くと香緒里を真っ直ぐ見てくる。そういえば、キースに人間としての名前と本名とがあるように、彼女にも別に本名があるのだと今更ながら気がつく。

「オリヴィア・グラントよ。この姿の時はリヴィと呼んで貰えると嬉しいわ。それから柊ちゃんの本名も教えとくけど、ジェイデン・ローレンスというの。ほとんどの人はジェイと呼ぶわね」

 美咲改めオリヴィアの言葉に何故かポポがむせる。

「えぇ〜!?ジェイデン様というですか!?ジェイド様ではないのですか!?ディ様はずっとそう呼んでたですぅ!」

「そうね、ディはそう呼ぶわね。翡翠宮生まれのジェイド君って…まあ、その話は今は置いておきましょ」

 食べていたクッキーをハンカチの上に投げ出して詰め寄るポポに苦笑して答えるオリヴィア。また新しい名前が出てきたけど誰だろう?と考えていると、咳払いと共に「何処から話せばいいかしらね」という声が聞こえた。

「ディについてはまた今度、ね。そのうち会えると思うわ。で、話を戻して。そうね。ざっくりとだけど、先代の話をさせてもらうわね」

 そう言ったオリヴィアは表情を引き締め、目を細めて語り始めた。



 今から約100年程前。

 当時の大地神と地龍神は様々な世界、土地を旅しながら各地の状況を見てまわっていた。光緑神があちこち見て歩き、その土地のものを食べ、そこの空気を肌で感じる事、そしてそれを家で待つ弟妹に土産と共に語って聞かせるのが好きだったからだ。

 当時の彼ら4人はとても仲が良かったが、思春期の男子3人と女子1人と言えば分かってもらえるだろうか。紅一点の闇緑龍神を巡って争っていたわけではないが、それぞれが密かに想いを寄せていた。

 闇緑龍神は親同士が決めたものではあったが、光緑龍神の婚約者だった。光緑龍神は婚約者である彼女に恋をし、当たり前のように結婚するものだと思っていた。

 しかしある日、彼は気付いた。彼女は自分を兄弟のようにしか思っておらず、その想いは光緑神に向かっていると。

 光緑龍神は自分の恋心を封印した。婚約を破棄し、彼女の恋を応援、後押しした。光緑神も彼女を想っていると知っていたからだ。どちらも同じくらいに大切で大事な存在であるからこそ、自分よりも2人の幸せを願った。

 そして2人は想いを通わせる。旅先で幸せそうに寄り添う2人を見守り、これで良かったのだと光緑龍神が思った矢先の出来事だった。

 闇緑神は、光緑龍神のようには出来なかった。

 嫉妬に狂い、光緑神を殺してしまったのだ。

 光緑龍神、闇緑龍神共に闇緑神は主である為『刃向かう』事が出来ずに切り付けられ、動けないままもう1人の主が殺されてしまった。

 そして更なる悲劇が訪れる。

 敬愛する主にして最愛の恋人を目の前で殺された闇緑龍神は一瞬にして邪悪に染まった。

『邪』とは世界全ての敵である。神であっても『邪』に堕ちる事があるが、『邪悪なる神』に堕ちる事は神にとっては最大の禁忌。あってはならない事だった。

 怒りと憎悪によって邪悪に染まった闇緑龍神は、光緑神を殺した剣を闇緑神から奪いその心臓を貫くと、同格の者を生け贄にして死者を蘇らせる禁術によって光緑神を蘇らせた。

 この術によって蘇った者は『邪悪なる者』となる。故に禁術なのだ。

 こうして光緑神と闇緑龍神は邪神となり、大地神の力は光緑神であった男の弟妹に、闇緑龍神の力は光緑龍神の弟へと移り今に至る。

 光緑龍神は目の前で起こったすべてをただ涙を流しながら見ていることしか出来ず、絶望の淵に立たされながら独り新たな主の元へ戻った。

 以上がオリヴィアが光緑龍神ジェイデンから聞いた先代の最期についての話だった。


後半のとこはいつか外伝とかでしっかり書きたい気もしないでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ