自転車の魅力
ロードバイクと言う乗り物でサイクリングロードを滑走する。風の音、タイヤが地面を蹴る音。それらロードノイズが体全身に伝わってくる。
そうして、僕は脚にもっと力を込めてどんどんスピードをあげていく。
そんな感じでいつもこのサイクリングロードを走っている。
初投稿作品。青年のロードバイク物語。妹とも一緒に…!?
埼玉県にある彩湖。ここは、もっとも家から近くて平坦区間と坂道区間、下り坂区間全て兼ね備えてあるサイクリングロードだ。ここは、時にマラソン大会があったりカヌーの練習場にもなっている。そこで僕はいつも一人で走っている。
スピードで風を斬る音。
地面とタイヤの接地面からの音。
いわゆる『ロードノイズ』がダイレクトに耳に飛び込んでくる。
そして、今にも爆発しそうな心臓をもっと虐めるようにこの小さなペダルに力を込めて漕いでいく。そして、どんどん加速していく。もう既にサイクルコンピューターの速度メーターは50km/hを越えている────でも、まだ足りない。遅い。もっといける。と今跨がってるマシンが言ってるみたいに快調にチェーンがクランクとスプロケットを噛んでいる。
そして、ゴールラインまで後400m、300mと、あっという間に近づいてくる。そんな中なのに、なぜかいつもスローモーションのように景色が後ろへと流れていく。見たこと無いけどきっと走馬灯と言われる物もこんな感じでは無いかと思う。この、現象は嫌いでは無い。筋肉は痺れて心臓も爆発しそうなのになぜか清々しい気分になってしまう。自分が一番輝いてる瞬間だと思う。
そんな事を考えてる内に、ゴールラインを前輪が踏んでいた。
やっと練習が終わったのだ。もう気づいているかも知れないが、これはロードバイクの話。更に言えば、僕『赤坂 陽人』の物語だ。って言うと何だかナルシストみたいになるからなぁ。まぁ、いっか!
因みに僕がロードバイクに興味を持ち始めたのは、ある時友人とサイクリングロードに行った時の事だった。その時は、ままチャリだったんだけど。
正直、一目惚れだった。あんな、物があるなんてそもそも知らなかったのだ。美しいホリゾンタルフレーム。漆黒のカーボンブラックにピンクの蛍光色がさり気無くラインを引いている。ダウンチューブにPINARELLO。反対側にはDOGMA。更にシートチューブにF10と書いてある。そして、極め付きはCAMPAGNOLO BORA ULTRAと書かれたディープホイール。つまり、このマシンに心を射止められたのである。
僕の愛車はと言うと、MERIDA REACTO 4000のチームレプリカカラーに乗っている。
コンポーネントは105でホイールFULCRUM RACING3で組まれた完成車をバイトを頑張って25万円を貯めて買ったのだ。
でも、今ではコンポーネントはULTEGRA R8000。ホイールは、FFWD F6Rに変えている。かなりお金がかかっている。もう、どれだけバイトを頑張った事か、、、。
次は、TTにでもしようかなぁ…うへへ…。
「さてと…今日の最高時速は──58.6km/hかぁ…。60km/hの壁デカすぎだろ!!くそぉ~なんならS-WORKSのエアロロードでも買ってやる!あ、金がねぇーわ…。」
「お兄ちゃんうるさい…独り言辞めてよね?」
「うぇっひぃーーー!?」
イヤホンを片耳にだけ着けて小さなボリュームで好きな音楽を聞いていたが、いきなり部屋の扉が開け放たれ思わず変な叫び声が出てしまった。
「何?友達居ないの?ボッチなの?あ、その変な自転車が友達かそっかそっか。…可哀想。」
とまぁ僕には妹が居る。あいつは本当に口が悪い。因みに2つ下だ。名前は『蒼』
「…名前は大人しそうなのになぁ…一体どこで育て間違った?」
「何か言った?」
「い、いや!?何にも!てか、早く出てけよ!」
「はいはい。自転車と夜を楽しんでね~」
「お、おう…」
ん?夜?あー、なるほど!ナイトライドに行って来いって事か!
「あ、因みに夜走りに行けとかじゃないから」
「なぜ分かった!?」
「ふふーん!」
「しっし!」
どや顔をかましてきたが、それをどうにもせず手で帰れ帰れとやったら素直に自分の部屋に戻って行った。
さてさて、チェーンでも洗ってフレーム拭いてご飯作りますか…。早速パーツクリーナーでチェーンの汚れたオイルを落としていく…そして、リアホイールを外してスプロケットもパーツクリーナーで綺麗に───何と言う事でしょう!あれだけ汚れていたチェーンとスプロケットが鏡のような輝きを取り戻しました!更にこの何の変鉄も無いワウェットティッシュでフレームの汚れを拭き取っていきます…すると?何と言う事でしょう!フレームに微細な泥やオイル跳びがどんどん姿を消していきます!とか何とか劇的なビフォーアフターを繰り返していき愛車はいつも通りの綺麗ボディを取り戻していく。
「今日は、何作ろうかなぁ…うーん。」
やべ。何も考えて無かった。あー、こんな時は────
「おーい!あおいー?」
そう!こんな時は妹を使うのだ!妹が居て良かったぁ…
「何?」
すんごいダルそうに部屋から出てきた。まぁ、出てきてくれるだけ良いかな。
「悪いけど料理手伝って?」
そう言うと、なぜかいきなり目を輝かせた。ほほーん。そんなに手伝いたかったのか!知らなかった。
「良いよ?でも、換わりに~ふふん♪」
「な、なんだよ…」
「あれ頂戴?」
ロードに乗ってないのに、心臓がドクンドクンと鼓動が早くなってきた。何?何だ?何が欲しいんだ!?嫌な予感しか無い。
「何が望みだ…」
恐る恐る聞いてみる。
「ロードバイク!余ってるやつあるじゃん!」
「なっ!!」
「くれないと~あの事ばらすよ?」
「えっ!?な、何!?何の事!?」
ばらすって…一体何が妹にばれてる?そんな事を考えてると変な汗が出てきた。
「宅急便で来た箱にDi2って書いてあったなぁ…あれお母さんに言って無いよね?」
「どうか勘弁を!!」
「頂戴?」
悪魔か!僕の妹は悪魔か!
「取りあえず待ってろ!じゃあ今日の飯、蒼が全部作れよ!その間に準備してやるから!」
「ほいほーい。」
よしっ!準備と言う名の名目でコンポーネント変えてやる!せめて105は渡さん!soraで充分だろう。うん。
「じゃあ頼んだ」
「任せとけ!」
自信満々の顔で見送りされた。ふふん、これからあのロードが下位ランクになる事も知らずに。しめしめ…
「あ、そうだ調べたんだけどさ!私、105が良い!こんぽ~ねんと?だっけ?よろしくね!」
「…あ、はい。すみません。」
「綺麗にして頂戴ねー!」
わー、終わったぁ。あの野郎!ちゃっかり調べやがって!もういい、なんなら新車同様の勢いで仕上げてやる!ホイールだけは、申し訳無いがCAMPAGNOLO ZONDAで勘弁して貰おう。最初のロードしては上物だろう。でも、女性モデルじゃないけど大丈夫なのかな?まぁ、パーツで何とかしてやるか。
そんなこんなで多少脅しもあったが、今。GIANT TCR0の全バラを始めた。
まずは、ホイールの振れ取り。ハンドル周りを外してフォークまでも外す。それから、クランクもBBも。まさに、自転車屋さん。もういっそこのまま赤坂自転車店でも営業しようかしら…
───数時間後───
「ご飯だぞー!食べよー!」
「はいはい。今行くよー」
まずは、手を洗わないと…駄目だ終わらん。後何時間かかるんだこれ!
「悪い、水出して?手汚れて蛇口触れん」
「しょうがないなぁ…はいよ」
「サンキュ」
「で?まだ時間かかるの?」
「うん。結構ね…」
「あ、あのさ…ごめんね?本当はお兄みたいに自分で買わないといけないって思ってたんだけど。じ、実はその。私もお兄と一緒に走りたくてさ。」
「……え?」
____次回に続く_____
はじめまして。ビスケです。時たまイラスト描いてみたり(下手ですが)短編小説書いてみたりといろんな趣味があります。そのいろんな趣味の中で自転車の話を書きたいと思い今回投稿しました。ここまで挨拶。
さて、最後まで読んで頂いて誠にありがとうございます。
いつもは、サイクリングしたりしてますが趣味の1つの小説を書いてみました。連載小説なのでこれからも不定期的ですが書いていきますのでどうぞよろしくお願いいたします。