おくる
コンコン
『んっ』
「アキナ」
『ガル?おはよう。』
「おはよう。侍女が来たようだ」
『うん』
「アキナ様。ガル様。
おはようございます。」
『おはようございます』
「朝食の準備ができております。
食べられましたら、天還式のご準備を」
『はい』
朝食をとってガルとは別れて
今、ドレスを着せてもらっている。
真っ白なレースのヴェールを頭にかけられ
『なんだか、結婚式みたい』
「整いました」
『ありがとう』
コンコン
『どうぞ』
「アキナ、準備は整いましたか?」
『ジルさん、』
「とてもお似合いです」
『そうかな、ありがとう』
「墓地までは馬車で行きます。」
『はい』
「バルド達も待っているので行きましょう」
「アキナ、おはよう。」
『バルドさん、リードさん、シンくん
おはようございます。』
「アキナとっても似合ってるよ。可愛い」
「ん・・・」
『あ、ありがとう』
「さあ、行くぞ」
馬車が動き出す。
4人乗りだから私、ガル
シンくん、リードさんが乗ってる。
ジルさんとバルドさんは馬で隣を走ってる。
『墓地まではどれくらい??』
「すぐだよ、行くのはエーテルリア墓地って
所で王家のお墓があるところなんだ。」
『そうなんだ。ここも前の街みたいに
何ヶ所か墓地があるの?』
「ううん、王家の墓地が丘の上にあって
その周りを囲むように民たちのお墓があるよ」
『じゃあ、かなり大きな墓地なんだね』
「うん、だから一回謳うだけじゃ、天還できないかも知れない。」
『どうして?
他の聖灯者が天還してるんじゃないの?』
「聖灯者は数が年々減っている。
今いる聖灯者達は国を回っているが」
「前回、聖灯者が来たのは五年前。」
『五年!?』
「うん、白の聖灯者みたいにたくさんの人を
一度に天還出来ないから、時間もかかるんだ」
『・・・』
「その間にたくさんの人がまた魔の者に・・・」
『でも五年も経ってたら皆、
魔の者になってるんじゃ・・・』
「いや、魔の者に殺された者は
魔の者になると言ったが絶対ではない。」
「詳しい事は僕らもよくわからないんだ」
「憎しみが強いまま死んだ者が
魔の者になりやすい。人の心は弱いからな」
『・・・天還しなかったら死んで
魔の者にもならなかった人は?
自分で天に還れるの?』
「いや、魂は彷徨い続けている」
『そう、なんだ』
馬車が止まる
「着いたぞ」
外に出ると
『凄いっ』
前回の街でみたのと比べものにならなくらいの
真っ白な花が咲き誇っていて
後ろには広大な海が広がっている。
騎士達が一際立派なお墓の周りを囲み
片膝をついている。
丘の周りのお墓にはエーテルリアの国の人達が
集まっている。
「聖灯者アキナ」
『王様』
「よく、きてくれた。
これがアルテミスとイースの墓だ。」
2人の名前が彫られたお墓がある。
『はい』
私はその前に座り込む
「死者を導いてやってくれ」
『はい。ガル?』
左手を差し出すと握ってくれる。
「僕たちもついてるからねっ」
『シンくんっありがとう』
大きく息を吸い込んで
私は謳いだす。
アルテミス、聞こえてる?
私、魔核を壊しに行くよ。
がんばるよ。
辺りが光の粒で埋め尽くされる。
墓地全体が光輝き
「っなんということだ。イースっ」
やぁ、ザン、久しぶり
アルテミスは天に送ってもらったんだね。
「っあぁ。すまない。俺はあの時の
お前との約束を。アルテミスを守れずっ」
やっぱり、ザンは気にしてるんじゃないかと
思ってたよ。大丈夫。
アルテミスも俺も天でまた一緒にいられる。
みんなで旅をして俺は楽しかったよ
最後にザンと話したかったんだ。
「うぅ・・・」
聖灯者アキナ、ありがとう
『イースさん』
君の謳は本当に心地いい
これから、
君は過酷な旅に出なければいけない。
だけど、大丈夫。
守護者を信じて。
『はいっ』
ありがとう、
アルテミスも天におくってくれて
ありがとう
「イースっ!」
ザン、しっかりなっ
イースさんはキラキラと光になって
天に消えていった。
墓地には泣き声が響きわたる。
「すごい・・・」
「あぁ、一度にすべて天還された」
「これほどの力とは・・・」
『うぅっヒック』
「アキナ、泣かないで」
『なんだかっ切なくてっ』
「うん・・・」
「聖灯者アキナ、ありがとう」
『王様・・・』
「ありがとうっ」
王様が泣いてる。
『ガル、バルドさん、ジルさん
リードさん、シンくん』
「どうした?」
『一緒に魔核を壊しに
行ってもらえますかっ?』
「「「っ」」」
「もちろん!!」
「はい。必ず守ります」
「あぁ・・・絶対に」
「ん・・・」
「お前が望むなら」
『ありがとうっ』
アルテミスっ
絶対、絶対、魔核を壊すからっ
イースさんと見守っててね
真っ白な花びらが舞い上がって
降り注いでくる。
私がここで出来ることをしよう。