獣人王
朝、目が覚めると
「おはよう!アキナ!
君のことは絶対僕が守るからね!」
『シンくん?おはよう。
ありがとう。』
「今日はエーテルリアまで行く。いけるか?」
『はい、大丈夫です』
「ん・・・」
リードさんが手を差し出してくる
『??』
「リードが馬に乗せてくれるそうですよ」
『ありがとうございます』
リードさんの馬に乗せてもらって
後ろにリードさんも乗ってくる。
リードさんの長いしなやかなしっぽが
お腹に巻き付く。
「これで落ちない」
『ふふっそうですね。ありがとうございます』
それから二度と休憩をとって進むと
とっても大きなお城が見えてきた。
お城を中心に周りにたくさんの建物があって
その建物を囲むように壁がある。
後ろには広大な海。
『すごい・・・』
「あれがエーテルリア。
獣人の王ザンが治める国。」
リードさんが教えてくれる。
『ザン・・・』
「行くぞっ」
門の前、バルドさんが門兵に声をかけ
「バルド様!!」
「門をあけてくれ」
「はっ!!開門!!」
開けられた門をくぐると
そこは映画でみたような賑やかな城下町。
「バルド様よっ」
「リード様、ジル様、シン様もいるわっ」
人間や獣人さまざな人が声を上げる。
人混みを抜けて城門までくる。
「バルド様。おかえりなさいませ。」
「あぁ」
「獣人王ザンに面会を・・聖灯者をお連れした。」
「はっ!どうぞ」
城の中にはいる。
こそこそっとシンくんに
『シンくん』
「なあに?」
『バルドさんは偉い人なの??』
「あぁ、だって王子だし」
『王子!?』
「そう。獣人王ザンの息子」
『えー!シンくん達ももしかして
とっても偉い?』
「え~リードは王弟ライの息子だよ。
僕と兄さんは
隣国バシレウスの人王ガイアスの息子なんだ」
『えー!』
「どうした?」
『ごめんなさい。
私、あなたが王子さまって知らなくてっ』
「何を謝ってる?白の聖灯者は
獣人王や人王より上の存在。」
「そうそう、この世界で白の聖灯者は
なにより上の存在だよ」
「あぁ。今から獣人王ザンに面会する。」
『えっ』
「バルドさんのお父さんって
アルテミスの守護者だったんだね」
「そうだ。」
「僕らの父さんの兄も守護者だったんだよ」
「ええ、私達は守護者に選ばれてから
10年自国で鍛えてきました。それからは
ずっと一緒にこの国でともに鍛錬を組んできました」
『そう、だったんだ』
「とにかくお前が気を使うことはない。」
『ガル』
「行こう。アルテミスの墓にも行きたいのだろう?」
『うん』
「獣人王ザン様!
バルド様、リード様、ジル様、シン様
聖灯者様と守護者ガル様ご面会を!!」
「入れ」
中に入ると様々な獣の耳や尻尾を持った
獣人の人達とその中心の立派な椅子に
威風堂々、まさにライオンな獣人が。
そのそばに人間の綺麗な女性が。
「父上、母上ただいま帰りました。」
「あぁ、よく帰った。
ガル久しいな。息災か?」
「ザン、久しぶりだな」
「そこのフードの小柄なのが
白の聖灯者か?」
「あぁ、白の聖灯者アキナ」
「顔をみせてくれるか?」
『はい・・・』
パサッフードを脱ぐ
「白の証・・・」
ザワザワ ザワザワ
みんなが動揺しはじめる。
「これで魔核を封印してもらえるぞ」
「そうだ、はやくいって封印してもらおう」
『っ』
(怖い・・・)
『ガルっ』
ガルの手を握る。
「大丈夫だ」
「静まれっ!!」
「白の聖灯者アキナ、すまない。
みな、長年魔の者に悩まされてきた。
それ故なのだ。」
『いえ、大丈夫です』
「我が国でも天還を頼めないだろうか?」
『はい、、』
「有り難う。では、明日。
今日はゆっくり休んでくれ。」
客室に案内されホッと息をつく。
ガルもバルド達もそれぞれ別々の部屋に。
コンコン
『はい』
「失礼致します。白の聖灯者様。
侍女のレイと申します。
お食事をお持ちいたしました。」
『ありがとうございます』
「明日は天還式を行うとの事で
こちらの服をお持ちしました。」
彼女がみせてきたのは
真っ白のワンピースドレス
ふわふわキラキラ輝いて
腕はレースで出来ている。
『死者を送るのにこんなに輝いてていいの?
普通、黒色とかじゃないの?』
「白の聖灯者様は白を」
『そう、なの』
「はい。もうおやすみななられますか?」
『うん、そうしようかな・・・』
「では、湯の用意を」
『あっガルのお部屋ってどこかわかりますか?』
「守護者ガル様のお部屋は右隣のお部屋です。」
『そっか、わかった。ありがとうございます。』
お風呂に入って天蓋付きベッドに横になる。
『寝れない』
ガルの所に行こう。
廊下に出ると中庭が見えた。
ちょっと行ってみようかな…
『わぁ、キレイな薔薇』
噴水があって薔薇がキレイに咲き誇ってる。
「眠れないのか?」
『獣人王ザン様』
「ザンでいい。そなたのほうが
我より偉い」
『いや、だけど年上ですし』
「さっきは臣下たちがすまなかったな。」
『いえ。私もきっと闇の中で
小さな光をみたら
それに手を伸ばしてしまうから』
「・・・」
『あなたも守護者だったんですよね』
「あぁ、」
『怖くなかったですか?
白の聖灯者に命をかけるのは』
「怖くなかったといったら嘘になるが、
守りたかった。家族も友人も
民たちも・・・アルテミスも」
『・・・』
「魔の者達のせいでたくさん死んだ。
仲間も民も。また同じ事が繰り返さるのは
耐えられん。そなたには酷な事を言ってるとは
わかっている。我が息子も守護者に選ばれ
旅に出れば死と隣合わせだ。
だが、息子は前を見ている。
そなたを絶対に守ると・・・魔核を消すと・・・
息子だけではない、リード、ジル、シン
もちろんガルもだ。」
『はい』
「すまないな。ゆっくり休んでくれ。
明日は頼む。おやすみ」
『おやすみなさい』
王様がいなくなって、しばらく考えこんでいると
「アキナ」
『バルドさん』
「父と話したか?」
『はい』
「ゆっくりでいい。
俺達はいつでもそばにいる。」
バルドさんが頬に触れる。
『はい』
「さぁ、明日も早い。
おやすみ」
『おやすみなさい』
バルドさんと別れ、ガルの部屋をノックする
『ガル?』
ガチャ
「眠るぞ」
『うん』
獣になったガルが乗っても大丈夫なベッドに
二人で横になる。
『ガル・・・』
「どうした」
『私、魔核消しに行く』
「そうか」
『うん。できるかな』
「出来る。後は守護者を信じろ」
『うん・・・』
「おやすみ」
『おやすみなさい』
すぅ~すぅ~
アキナが眠って人の姿になる。
頭を撫でで抱きしめる。
「アキナ、いい夢を」
おでこにキスを落とし眠る。
朝、
アキナが起きる前にまた獣の姿ならなければ。