守る
side バルド
アキナは慣れない旅で疲れたのか
すぐ眠ってしまった。
「ガル」
「なんだ」
「いつもそうなのか」
「・・・あぁ」
「どうして」
「アキナがはじめて天還した夜から
こうして寝たがる。」
「そうか」
「不安なのでしょう」
「でもさっガルも男なのに~」
「我は手を出さない」
「・・・」
俺がはじめて聖灯者をみた時
フードを深く被りその顔は見えなかった。
だが、随分と小柄な人間だった。
村ではじめて顔をみたとき
守護者の証が酷く疼いた。
茶色のふわふわした髪に
黒色の瞳。
守らなければいけない。
なにがなんでも。
そう、さらに強く思った。
アルテミス様に守護者に選ばれた時
俺はまだ9歳だった。
見たこともない相手を守るためと言われ
がむしゃらに鍛えてきた。
魔の者の群れの中に戦いにいった。
いつ現れるかもわからず、20年たった。
もう現れないのではないか。
そう、思っていた。
きっと選ばれてから一緒に育ってきた
ジル達もそうだっただろう。
アルテミス様は死後ずっと
彼女を呼ぶために聖灯を使っていたんだな。
ガルがアルテミス様は天に還った。
そう言っていた。
もっと早くきてもきっと彼女は
守れなかったのだろう。
この20年で俺達は強くなった。
この20年がきっと必要だったのだ。
まだまだ強くなって
アルテミス様と守護者イースのような
悲劇はおこさせない。
何より彼女が近くにいると
力が湧き上がってくるのだ。
これが白の聖灯者の力。
本人は本当にただの人間の女。
ちょっと力を込めて俺達獣人が握れば
簡単に腕の骨が折れるだろう。
「守れるかな…」
「シン」
「だって、本当にただの人間だよ?
守りたい。絶対守りたいけど。」
「か弱すぎて怖いですか?」
「うん。」
「魔核に近づくにつれ、魔の者も活発になる」
「・・・」
「俺達の20年はこれからの為にある」
「バルド・・・」
「そうですよ、シン。」
「彼女を支え守るのが俺達の使命」
「・・・アキナの心は弱い。」
「ガル」
「悲しみに敏感だ。お前たちも
支えてやってくれ」
「あぁ」
「アキナは元の世界には帰れない。
家族も友もいない世界に放り出され
死もみたこともないのに
死者を送らなければならない。」
「ツラいよね」
「その心を守れるのも我ら守護者だけ」
「うん、がんばるよ。
魔核を消してずっとアキナを守る」
「シン、そろそろ寝ろ。
明日はエーテルリアまで行く。」
「うん、わかってる」
焚き火のパチパチと言う音と
フクロウの鳴き声。
「必ず守る」
命に変えても