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一歩


胸が苦しくて苦しくてたまらない!


私は人が死にゆく所をみたことがない。

20年以上生きてきたけど

祖父も祖母も健在で

テレビで人の死をみるくらいだった。

自分でも心が弱いのは知ってる。

話したこともない、誰かが死んだ。

その身内のインタビューだけでも

ボロボロ涙が零れた。


人の死を見たことないのに

人の死には人一倍敏感だった。

人だけじゃない、漫画やアニメの

架空の人物でも。


現実で人の別れをみるのは

テレビでみるより、もっともっと

心を抉るとても悲しい光景だった。

これをこれからもしていくの?・・・


「あの、聖灯者様?」

10歳くらいの男の子だ。

『どうしたの?』

ゴシゴシと涙を拭いて返事をする。

「ありがとう。」

『え?』

「お父さんとお別れをさせてくれて。

お父さんは僕らを守ってくれたんだ!

最後にありがとうっていいたかったんだ!

それを聖灯者様は叶えてくれた!

だからありがとう!!」

『悲しくないの?もう会えないのに』

「悲しいよ、悲しいけど

最後にありがとうって言えたから。

最後に笑ってるお父さんに会えたから!」

『うぁあぁ』

「どうしたのっ?どこか痛いの?」

『ヒックありがとう』

ギューッと男の子を抱きしめる。


「そろそろ帰らなきゃ!

お母さんが心配しちゃう!」

『そうだね、ありがとう』

「聖灯者様ももう泣かないで?」

『うん、もう泣かないよ』

「じゃあ、またねー!ばいばいー!」

『うん、ばいばい』


男の子は走って帰っていった。


「落ち着いたか?」

『ガル』

「お前の力はそういうことだ」

『胸が苦しいけど

みんな喜んでくれたんだよね?』

「そうだ。魂だけが天に返っていくのと

大切な者と最後の別れの挨拶ができるのは違う。

みな、前を向いて歩き出す。」

『うん。ガル、』

「なんだ?」

『また、死者を天に返す時は

手を握っててくれる?』

「お前が望むならば」

『ありがとう』


あれから、私たちは宿屋に行き

3日後にまた天還をする事を聞いた。

それまでに私の服や必要な物を揃える。

『ねぇ、ガル』

「なんだ?」

『ガルって獣だったのにお金あるの?』

「あぁ、大丈夫だ。

3日後、お前に会わせる者がいる」

『だれ?』

「守護者たちだ」

『守護者?それって』

「お前を守るものたち」

『ガルとは違うの?』

「我はただお前のために生まれた。

守護者たちは20年前、アルテミスが死ぬ前に

選んだ者達。」

『20年前?アルテミスってそんなに前に死んだの?』

「そうだ。お前の世界とここの時間軸は違う。

アルテミスは20年前に魔核を封印したが

その時の傷で死んだ。だが、死ぬ前にお前の謳をきいた。

それから、アルテミスはすぐお前のために守護者を選んだ。

その者に白の聖灯者を守る力を与え、育てるように頼んだ。」

『アルテミスが・・・』

「守護者は聖灯者の証を身体のどこかにもっている。

我はここに」

ガルが服を捲るとおへそに白い石が埋まってた。

『死んだのに話が出来たのはなぜ?

20年も前に亡くなったのに。』

「アルテミスが白の聖灯者だったことと

お前の謳のおかげだ。魂だけあの泉に残しておいた。

そこにお前を引き寄せお前の強い聖灯で姿を現せた」

『・・・そうなんだ』

「守護者は今の所5人」

『5人も?』

「アルテミスは10人いた。だが、」

『10人もいたのに・・・』

「それ以上は今は考えるな。とにかく

お前はアルテミスより強い聖灯を宿している。

その分、守護者も強い。お前の加護を受けて。

簡単にやられたりはしない」

『・・・』

「少し休め。あとで食事をもってくる」

『ん、わかった』


ガルが部屋を出て行って

ベッドに横になる・・・


目を閉じて『少し眠ろう・・・』


夢を見た

アルテミスと金髪の男性が花畑で

手をつないで何かを話してる


『アルテミス!』

返事はない。聞こえてないみたい。


「イース!」

「アルテミス」

「大好きよ」

「俺も愛してる」


場面は急に変わって

暗くて禍々しい雰囲気


周りにはたくさんの魔の者達


囲まれるようにアルテミス

そしてイースと他にも獣の耳を持った男と

人間達がいる。


「アルテミス!」

「イース!!」

「アルテミス!イース!危ない!!」


イースがアルテミスを庇って背中を斬られる。


「イース!!!」

「アルテミス・・・すまない」

「いやよ、いや」


仲間が魔の者を倒して近づいてくる。


「イース!」

「いや、イース、逝かないで」

「あと、、すこしだ。魔核を・・・」

「できないわ、イース。お願いよ・・・」

「アルテミス!急げ!また魔の者が集まってくる!」

「きみを、、まもれて、よかった、、」

「イース・・・ごめんなさい」

「あいしてる・・・」

「わたしも」

「いけ!!ザン!アルテミスをたのむぞ」


「イース!わかっている!」


ザンと呼ばれた獣耳の男性がアルテミスを引っ張っていく。


そこで目が覚める。


涙で頬がびしゃびしゃだ。


『アルテミスとイース』


「アキナ・・・入るぞ」

『ガル』

「どうした?何かあったのか?」

ガルが涙を拭ってくれる。


私は悲しくなってガルに抱き付く。

ガルは何もいわずに抱きしめベッドに座る。

膝の上に乗せて止まらない涙を拭っていく。


『アルテミスとイース』


「なぜ、イースの名を・・・」

『夢をみたの』

「・・・」

『イースは恋人だったのね?』

「あぁ、アルテミスとイースは恋人だった。

イースは守護者だった。イースはアルテミスを支え

魔核まで連れて行った。だが、」

『アルテミスを守って』

「あぁ、その後アルテミスも魔の者の攻撃を受け

すぐではないが亡くなった。」

『イースはちゃんと天に還れたの?』

「いや、イースの遺体は回収出来なかった。」

『私の力だったら遺体が亡くても死者を送れる?』

「それは・・・わからない」

『ガル、アルテミスのお墓ってどこにあるの?』

「エーテルリアという所だ。」

『ここから近い?』

「守護者たちはエーテルリアから来た。

そう遠くはない。次に行こうと思っていたところだ」

『エーテルリアに行ったらアルテミスのお墓に行きたい』

「わかった。着替えと晩飯を買ってきた。」

『ありがとう。ガル、ガルは街からでたらまた

獣の姿に戻る?』

「あぁ、本来はあの姿だからな」

『ここでちょっと戻れない?』

「ここで?なぜ?」

『一緒に眠ってほしいの』

「・・・お前が望むなら」


ガルが獣の姿になる。

部屋の半分ガルでいっぱいになるけど

横になったガルに擦りよって眠る。

『ガル離れないでね』

「お前は我の光。離れはしない」

『うん、おやすみ』

「あぁ、ゆっくりやすめ」



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