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ReStart  作者: 中金1945
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第三話 ~回顧~

 見慣れない天井。それもそのはず。ここはあの人の家だ。

昨日一日でいろんなことがありすぎた。寝たところで正直まだ頭の整理がつかない。

取り敢えず起きるか。


「今は何時っ...10時か」


結構寝たな。久々だ。


「ん?」


テーブルの上に紙?いや置手紙か。それと一緒に千円札が一枚と家の鍵?が置かれている。


手紙には、

『おはよう。今日は学校だから昨日の話の続きは俺が帰ってきてからしよう。

 昨日と同じ時間ぐらいに帰ってくる。

 お前の服とかは明日の休みにでも買いに行こう。

 それと昨日飯食ってなさそうだったから千円置いとくから、近くのコンビニで飯買ってくれればいいから。

 出掛ける時は鍵置いとくから戸締り頼む。                         励 』

と書かれてた。


ここまで世話焼かれると恥ずかしいやみじめを通り越して、虚しいよ。悲しいよ。

いい歳した男の大人が、これまたいい歳した男の大人に世話してもらうなんて。

こうなったら少し申し訳ないけど、一発抜いて賢者モードにでもなってやろうか。




 「家、まあまあ広いな」

自己嫌悪に陥るのはやめて今いるここの環境を把握しよう。

家自体はLDKタイプでワンルームのアパートだ。ちゃんとトイレも風呂もある。

元々一人暮らしであろう先生には、一人だと少し大きいぐらいの部屋だ。

俺が住んでたアパートよりも広くてきれいだ。アパートってものは全部狭くて汚いと思っていた。


「腹減った」


それもそうだ。昨日から何も食べてない。

金置いてあったけど使うの少しためらうな。罪悪感というか申し訳ないというかなんというか...

冷蔵庫にあるやつでなんか作るか。一応自炊はしてたし。


「えっと、なにがある...って酒ぐらいしかねーじゃねーか」


そんなもんか。男一人でわざわざ自炊なんてしなくても昨今の日本にはコンビニってもんがあるし。

何なら毎日外食って手もある。


「買いに行くか」


やっぱり少し申し訳ない。が、腹が減っている俺は欲に従い、テーブルに置いてある千円と鍵を手に取り、朝食というには遅く昼食というには少し早いなんとも言えない食料を買いに行くのだった。




 「食った、食った」

コンビニで千円というと中々の大金で結構量が買えるもので、あれだけ申し訳ないだの何だの言ってた俺も結局食欲には勝てず、返ってきたおつりは85円だった。

気になるメニューはというと、おにぎり2個にから揚げ弁当1個、カップ麺1個、それからホットコーナーのチキンと紙パックのコーヒー牛乳1、5ℓ一本。

こんな買って千円以内なんだからコンビニはいい。

それとカップ麺は俺のじゃなくて一応先生のために買った。俺はそこまで自己中じゃない。

ちゃんと先生の事も考えてるし、先生が食べなかったら俺が食べればいい話。

居候させてもらってる身の程はわきまえてるつもりだ。


「話の続きねぇ。したくねーな」


先生が帰ってきたら昨日の話の続き。しかも明日は日曜で休み。

なんてタイミングのいい。

話の続きなんてめちゃくちゃしたくない。




 昔話の続きの続きをしようと思う。

高校三年生に上がってからも、部活の様子は変わらなかった。

俺と久乃が暴れて、残りは最低限やる。それだけ。

俺はそれでいいと思っていた。それが普通だと思ってた。

俺はそんな奴らがいつから”邪魔”だと思い始めたんだろう。

そんなこともきっと今だから言えたことで、当時は邪魔なんてことも気づいていなかったかもしれない。

最初はもう少しコートでプレーをしてほしかった。俺しか打たないからマークは全部俺に向く。

そうなるととてもじゃないけどスパイクなんて打てない。

最初はこの程度。けどとてもじゃないけどあいつらにそんな事はできない。

そう決めつけて、メンバーに話もしないで続けていった。

人間は欲の尽きない生き物だ。

次に俺は、プレーができないならコートに立つなと思った。

コートに立てるのは、実力が認められてチームの代表としてプレーすることを許された奴だけだ。

そんな覚悟もない奴が試合に出るのはすごく腹が立った。

そのくせして学校ではスタメンだからとでかい顔して、たまたま当たって上げただけのレシーブを自慢している。それがたまらく嫌になった。




 ある時俺に吉報が届いた。なんと同じブロックの選抜メンバーに選ばれたのだ。

いざ選抜メンバーと練習してみると、みんな個々がとてもうまく、さらにそれがまとまって連携が図れていることに感動した。

ブロック対抗戦では準優勝だったが、ブロック別、そして全ブロックの最優秀選手に選ばれた。

そして部活のチームに戻った時、最後に思ったことがある。

やる気がない奴らとやったって意味ないんだし辞めてしまえばいいと。

けれどこれほどのめりこんだバレーボールをすぐにやめることはできなかった。

だから少し変えて休むことにした。

事あるごとに理由をつけて部活を休む(サボる)ようになった。

最初は練習だけ休み試合には出るようにしていたが、少しすると練習試合も休むようになった。

もちろん先生が黙っているわけもなく何度も事情を聞いてきた。

けど俺は部活のメンバーだけじゃなく、やる気のない奴をスタメンに選んだ先生にも怒っていた。

幸い自転車通学だった俺は放課後先生に職員室に呼ばれても逃げることができた。

そんな逃げるような、指名手配犯みたいな学園生活を送っていると、なんと久乃も俺と同じように部活を休むと言い出した。

理由は俺と同じメンバーに嫌気がさした。

純粋に同じことに不満を持つ仲間ができてうれしかった。

その日から俺と久乃は二人で部活を休み始めた。

バス通学の久乃に合わせて俺も自腹でバス代を出しながらバスで帰った。

帰りに久乃と寄り道して帰ることがとても楽しかったのは今でもいい思い出だ。

そんな生活を続けて、気づけば高校生活最後の大会が目前だった。

そんな時事件は起きたんだった。






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