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路地裏で子猫を拾った。

作者: 高城 シロナ

すこし、腐っぽい。

 俺、霧島要(きりしまかなめ)は現在、バイトの帰りで一通りの少ない街道を歩いている。うちの家族は、両親が海外赴任で現在はアメリカに滞在中。姉の(はるか)は都会の大学で勉強している。――…俺は実質一人暮らしの為、生活費を自分でまかなうべく、昼から夜までバイト、高校は通信制だ。ぶっちゃけるところ、自習など殆どやってない。


 「はあぁ……。今月も生活費ちょっとやばいかなぁ……」


 そんな事を考えながら、自分の家(ボロアパート)に向かう。

 せめて、姉貴が仕送りさえしてくれれば嬉しいのだが、以前頼んだら「私も一人暮らしなのよ!アホ言うんじゃない!」と怒られてしまった。


 「しょうがない。本でも売り飛ばすか」


 内心、それだけは絶対にしたくないのだが、今、そんな悠長な事を言っていられる場合ではない。こちとら生活費がかかっているのだ。今ここで食べられなければ飢え死にしてしまう。


 俺の持っている本――と言っても、猫のマンガとか猫の小説とか猫の写真集とか猫の図鑑ばかりである。そう!俺は自他共に認める大の猫好きなのだ。ちなみに好きな毛の色はヘーゼル。純血の猫でいうと、ソマリが大好きだ。猫パンチされたひ。嗚呼、愛おしき猫よ。


 「可哀想だから嫌だけど、どこかに捨てられた子とかいないかなぁ」


 猫好きとして、猫を飼いたい気持ちは溢れかえっているが、その過程で、出会い方も大事だと思う。

 俺としては、正規のペットショップで血統書つきの猫をもらって育てたい。でもしかし、保健所から引き取ったり、里親募集中の猫を自らの手で保護したいという気持ちもある。猫だとしても、この世に生まれて来れたのは人と同じくらい奇跡なことだし、如何に人間と立場が違えどもすぐに捨てたりするのは酷すぎる。普通、人間だとすれば、自分の子供をそこらへんに捨てたりする事などないだろう。

 しかし、人は、一度(ひとたび)猫の事になると、すぐに見捨てようとする。「飼い猫が子供を産んだ。育てられないから誰か引き取ってください」これは人間で言う「人身売買」と同じような事だ。


 そんな事があっては絶対にいけないと、俺は思う。




 たとえ、それが生活費が苦しい人であっても。困っている猫を見つけたら、助けるのが当たり前。当たり前――……。


 「あー……。愚かな人間共め。また猫を見捨てやがって」


 いつの間にか、家の自分が部屋を借りているアパートのすぐ近くまで来ていた。

 俺の前方には、無惨にダンボールに入れられ、そこに「誰か飼ってください」と書かれてある、捨て猫と思しき子猫がいた。


 長い間、この寒い中にいたのだろう。体を丸めて、ブルブルと寒そうに震えている。


 「あー…。こんなんじゃ長くはないな。うーん…しょうがない。飼うか」


 俺は、体長40cm程しかない小さな猫を、自分が持っていたタオルにくるみ、そっと持ち上げた。

 そのまま、少し歩いて、アパートの階段手前まで来た。


 「あんま揺らさん方がいいか」


 そう呟き、できるだけ静かに階段を上る。時折、子猫がタオルのなかで丸くなりながら、耳をぴくっと動かして居る。


 「にゃー」


 子猫は今、初めて鳴き声を発した。とても、小さな聞こえるか聞こえないかくらいの声だった。そして、「にゃー」というよりかは、子猫特有の「なー」という鳴き方だ。



 「ちょっと待ってね。よっと」


 自分の借り部屋の前まで来て、片手で器用に扉を開ける。少し圧力をかければすぐに壊れてしまいそうな程脆弱に見える扉はギィィィと、耳に触る音をあげた。



 猫をそっと、座布団の上におろしてから、俺はジャケットを脱ぎ、そこらへんに放り投げた。そして、そのまま台所に足を運び冷蔵庫を開ける。そこから、牛乳と精製水を取り出す。


 「猫は薄味の方がいいっけ」


 独り言を呟きながら、先ほど冷蔵庫から取り出した牛乳と精製水をブレンドする。


 そして、生活感あふれる居間に戻り、さっき拾った子猫の元に俺特製、薄味牛乳を入れた平たい皿を置く。

 すぐさま、子猫は、皿に飛びつき、小さな舌を使ってペロペロとミルクを飲み始めた。


 「かわいい。めっちゃかわいいやん」


 本っ当に誰だよ。こんな可愛い子を捨てたやつ。すぐ出て来い、俺がフルボッコにしてやんよ。

 

 そんな事を考えている間に、子猫はミルクを飲み終わっていた。皿の中を覗き込むと、綺麗に中には何も入っていなかった。完食だ。


 「にゃー!」


 さっきよりも、元気に鳴いた子猫を見ると、口元は真っ白になっていた。毛の色は俺が大好きなヘーゼル。目は碧色だ。超俺好み。


 俺は、抱きしめたい気持ちを必死にこらえ、猫の口元を、柔らかいティッシュで拭いてあげた。


 「にゃー…」


 子猫は、とても痒そうに、後ろ足で首あたりをかいていた。それも当然だろう。俺が察するに長い間、外に放置されていたのだろう。


 「猫さん。風呂入るか」


 「にゃぁあ!!」


 猫はまるで俺の言葉を理解したかの様な反応をした。ただ痒かったから首を振っただけかもしれないが、このタイミングではどう見ても風呂――多分、水だろう――を嫌がったようだ。


 「……その気持ちは解らない訳じゃないんだよー。ほら猫さんだって痒いの嫌でしょー?」


 俺は、少し不貞腐れた様な声音で猫に問いかけてみた。そうすると、猫はしぶしぶという感じで俺の方まで歩み寄ってきて、脚に頭を摺り寄せてきた。


 「よしよし。じゃあ、風呂場まで行くぞ」


 俺は、あくまで慎重に猫を両手で抱える。

 そして、そのまま、風呂場まで行く。




☆霧島家、バスルーム



 「うわっ!こら、暴れない!」


 さっきは、しぶしぶ風呂に入る様な素振りを見せた子猫だが、やはり、本能には忠実なようで一度風呂に入った瞬間急に暴れ始めた。


 「にゃーにゃー!!」


 「全力で腕ピーンされて嫌がられてる!!」


 少し俺は泣きそうになった。俺、猫好きなのに――


 「ちゃんと優しくするから!とりま落ち着いて……」


 俺はそう言いながら、子猫の頭を撫でる。この猫さんはどうにも頭を撫でられるのが気持ちいいらしい。


 「ふにゃ」


 子猫は、大分落ち着いたみたいだ。俺の膝の上で、やっとおとなしく座ってくれた。


 「じゃ、もうちょっとガマンして」


 俺は、さっきおろしたばっかのおニューの超柔らかいタオルをお湯で濡らし、そこにお肌に優しいボディーソープをつけ、泡をたてる。

 そして、そのタオルで子猫の体を洗い始める。

 少し前に本で読んだことがあるが、猫の体を洗う時には、耳の中に水が入らないように細心の注意を払わなければいけない。入るとどうにも大変なことになるらしい。


 「にゃー」


 子猫は興味津々という表情で、小さな手を伸ばし、タオルをちょいちょいと触ろうとする。その愛くるしい動きがもう言葉にできないくらいに可愛くて、つい抱きしめたくなる。

 しかし、本日二度目のその感情をどうにか押さえ込む。


 俺は、できるだけ時間をかけ、丁寧に猫の体を洗う。

 とても痒がっていた首元から、胸辺り、そのまま両手、腹、両足と。


 「あ、忘れるとこだった」


 俺は、まだこの可愛らしい猫の尻尾を洗っていないことに気がついた。

 

 俺は手早く尻尾を洗おうと思い、優しく触った――はずなのだが…。


 「にゃああ!!」


 子猫はびっくりした様な声を上げ、驚きの反応速度で猫パンチをしてきた。威力はほぼゼロと言っていいほどにか弱いパンチで、とても可愛らしかった。


 「ごめんごめん。すぐ終わるから。ね?」


 と猫に言い聞かせながら、もう一度しっぽに触れようとする。

 しかし、猫の方も触らせないとでもいうように、抵抗して、俺の両手のガードを振り切った。


 「あっちょっあぶな――


 「にゃああ!?」


 猫はそのまま宙を舞うように落下しそうになった。―――のだが、落ちてくる途中、俺の目に泡が入ってしまいよく見えなかったが、気づいたら、猫はいなかった。


 「うわああ!?だ、だれ!??」


 だが猫の代りに俺の体の上に覆いかぶさるように倒れこむ、まだ10歳にもなってなさそうな少年が、一糸纒わぬ格好でいた。よくみたら、その子の頭にはミミ、尻からは尻尾が伸びている。


 「にゃ、にゃああああ!?」


 猫耳少年は、勢いよく俺の上から飛び退く。きっと、この少年が、さっきの猫なのだろう。少しくるくるとした髪の毛や耳、尻尾はヘーゼル色。目は碧色だ。


 というか、どういうことなのだ。普通、猫は猫であって、人間にはならないだろう。


 「ま、まぁ、とりあえず風呂でようか!」


 俺は、まず、子猫元い、金髪に近いの少年の体についている泡をを全て洗い流し、そのあとで自分の体についた泡をシャワーで洗い流す。

 そのまま、脱衣所に行き、少年にタオルを渡した。




☆霧島家、再びリビング



 「あ、あの、あり……が…と」


 驚いたことにこの猫耳少年は、人型の時は人語を喋れるらしい。だが、どこか舌足らずな感じがする。そこも可愛いと思ってしまう俺は病気か?


 「礼には及ばないよ。とりあえず、アンタの名前とか――」


 「なまえ?」


 少年は首をかしげた。そして、そのまま、「リンはリンだよ?」と続けた。


 「リン――。それが名前?」


 「たぶん。あと、リンは、ねこがみさま?だって―……いってた」


 ねこがみさま?猫神様か。なんだそれは。俺を萌え死にさせる神様の総称か?


 「あ、言ってたって。誰が言ったの?」


 リンは、「にゃーー……」と宙を見上げ、何かを思い出しているようだった。そして、数十秒たち、顔を自然な位置に戻すと、「すごいひと」と言った。


 「……誰だよすごい人って……」


 「わかんない。リン……ここにおちて、みんなに、いやな?ことされ、た」


 「な、どういう事だよ」


 俺は、急に真剣になる。まだ、いまいち現状を飲み込めていないが、リンが何となく、思い出したくないことを俺に話そうとしているのは分かった。


 「みんな、リンのこと、いえにつれてく。けど、リン、びっくりすると、ひとがた?になる。だから・・・みんな、すぐすてる、リンのこと。たぶん……」


 多分、リンが言いたい事は、自分は普通の猫じゃなく、何処からか来た別種族で、特性上、驚くと姿を変えてしまうのだろう。そのため、逆に人間が驚いてリンを捨てると。なんとも可哀想な話だ。人の都合で、子供を捨てる。


 俺は、この話を聞いてしまったって事もあるかもしれない。何故か、今ここで、家から追い出したらいけないと思った。いや、ただの猫バカなだけだろう。


 というか、もう一度言っておこう。俺は今月、家賃が払えそうに無いほどに金に飢えている。


 「よければうちにいなよ。俺はそこらへんの人みたいにアンタを捨てたりしないからさ」


 とりあえず笑顔を作って見せた。そうしたら、リンの顔もぱあっと明るくなり、元気に「にゃあ!」と返事をした。



 ということで、俺の家は、|親(海外)、姉(別々の家)、猫神様、そして霧島要こと俺の妙な所帯になってしまった。


 一応言っておくが、今月は非常にやばい。生活費が。

無駄に長い短編でごめんなさい。

文才なくてごめんなさい。


ショタって可愛いですよね。とりあえず、この話は前から書きたかったので、書けてよかったです。


感想など書いていただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こういう飼っている動物が突然人の姿になる話は意外と好きです。短編なので続きがないのが少々残念です。 [気になる点] どちらでもいいような指摘ですが、子猫に人間用の牛乳を与えてはいけません。…
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