第1話 もうすぐ・・・
ある日の昼下がり、利一は学校の屋上で昼寝をしていた。利一が目覚めると、知らぬ間に隣には愛が座っていた。
利一は愛を見ると慌てて体を起こして言った。
「あっ!ごめん。約束忘れてた!」
「もういいよ。明日にしよ」
そう言うと彼女はのんびりと上を見上げた。空ではゆっくりと雲が流れている。
彼女の名前は 二葉 愛 (ふたば あい)彼女の父親と利一の父親は親友で二人でバルーンの研究をしていた。
亡くなった自分達の父親の後を引き継ぎ、今は彼女と僕で研究をしている。
「帰らないの?」
「兄さんの部活が終わるの待ってるんだ」
「有馬だったら・・・」そう言って愛が後ろを振り向くと、そこには有馬が居た。
「よっ!」利一が自分を見てる事に気が付くと、有馬は手をポケットに突っ込み利一に近づいてきた。
彼の名前は 有馬 龍之介 (ありま りゅうのすけ)利一の実の兄だが生まれてすぐ養子に出されたためみよじが違う。歳は利一より二つ上で学校一の不良と騒がれている。
「何や、お前、約束忘れてたらしいやんか」
有馬は何故か昔から大阪弁だった。ここは大阪じゃないし、もちろん両親だって大阪出身じゃないのに・・・その謎は、利一ですらわからなかった。
利一は有馬には関係ない事だと、気を悪くしたが、悪いのは結局自分なので、有馬には何も言わず、愛の方を向いた。
「ごめん、愛、でも、明日でもいいでしょ?」
利一がそう言うと、愛は立ち上がって言った。
「私は別にいいけど、もしかしてあなた・・・」
利一と愛が家に帰ってきたのは日も暮れかけた夕方だった。本当は愛の家は利一の家の隣だが、たいがいは利一の家にいる事が多かった。バルーンの研究の事で話し合いができるのも理由だが、やっぱり幼馴染だからだろうか?
二人そろって利一の家に帰宅すると小雨が夕食の準備をして待っていてくれた。
今日は昼ごろには帰ると告げられていた小雨は少々ふくれっつらをしていた。
「二人とも遅いのですぅ〜。おかげで計画が丸潰れなのですよ!」
この子は、 岑枝 小雨 (みねぎ こあめ)7才 母親が利一の父親達の研究の手伝いをしていた関係で、利一と愛の研究をたびたび手伝ってくれる。両親はすで事故で亡くなっており、今は隣町で祖父母と暮らしている。
「わー!おいしそうだね。これ全部小雨が作ったの?」
利一が席についたころには、テーブルには、色とりどりの料理が並べられていた。
「そーなのですよー。この僕、小雨ちゃんが腕によりをかけて作りました。本当なら今日はバルーンが完成した特別な日になるはずだったですからね〜。それが誰かさんのせいで・・・」
小雨は利一をジト目で見た。
「ごっ、ごめん・・・」結局その日、利一は何度も謝らなければいけないはめになった。