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序章 僕は今・・・
バルーン
利一が初めてその名を耳にしたのはまだ4歳になる前だった。
8年前父に見せてもらった絵は今でも利一の中で強く印象にのこっている。
亡くなる前父は、『バルーンはもうすぐ完成する』『バルーンは世界を変える』と言っていた。
父は朝から晩までバルーンの研究にのめり込んでいた。
父が研究中に死んだと聞かされた時も、利一は父の気持ちがわからなかった。
父が死んでも完成させたかったバルーン・・・なぜそこまでしてバルーンにこだわるのか?
利一には、どんなに頭を捻ってもわからない問題だった。
何故なら利一には、バルーンがただの化け物にしか見えなかったからだ。
赤くて先が3つに分かれた帽子、細い目、身長は30センチほどしかなく、まるでピエロのような服・・・
生前、父は、一度だけバルーンの事を神だと言っていた。
しかし神の見かけとはかけ離れていた。
似ていると言えば、トランプに書いてあるジョーカーの絵の方がよっぽどにていると思ったほどだ。
−だけど僕は、愛と共にバルーンの研究を始めた−