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『ピンポーン・・・』
タイミングが良いのか悪いのか、現実のチャイムが鳴り響く。
「―――悪い、宅急便」
立ち上がる俺の腕をマサが掴む。
「待って。逃げんの?」
「は?ち、違・・・離せって、荷物届いてんだよ」
「ちゃんとナルが俺と、自分の気持ちと向き合うなら離す」
「は?何言って・・・」
「ナル!」
『ピンポーン。ピンポーン』
「―――わかった、わかったから!いいから離せ」
マサの手を振りほどいて玄関へ走った。勿論扉の向こうには段ボールを抱えた体格のよい配達員がいた。
「ナル」
「・・・」
「ナル!」
「・・・・・・」
マサの視線が痛い。
「大和」
「―――っ、何で名前で呼ぶんだよ!」
「お前が返事しねーからだろ」
そりゃ返事出来るかっての。どうにか気持ちがバレずにやり過ごすかで、こっちは頭が一杯なんだよ。
「ナルってさ・・・」
「ん?」
「俺の事、好きなの?」
・・・ええっと?・・・えええーっ?!
「―――」
その予想外の問い掛けに俺の心の壮絶な叫びは声にならず、ただただ鯉の様に口をパクパクとさせるしかなかった。