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酒は、驚く程早く身体にまわっていった。
「ナル、大丈夫か?」
大丈夫、じゃない。激しい運動の後、しかもかなりの空腹。さらに喉の渇きが勝って酒をどんどん流し込んでしまった。
日々の仕事のストレスと最近の睡眠不足。あとは久しぶりにマサと飲んでる事。全てが悪い方向に行ってしまった様だ。
「・・・気持ち悪い。頭も痛てえ」
「もう帰るか。代行呼ぶからちょっと待ってろよ」
言ってマサが立ち上がる。
もう無茶をして酒に潰れる歳でも無いのに。何よりせっかくのマサとの飲みだったのに。情けなくて涙が出そうだ。・・・呆れられたかな。いや、呆れられて当然だろ。
反省点は山ほどあるが、とりあえず今は横になりたい。なんだか寒気もしてきた。明日が土曜で本当によかった。
「ナル。代行来たから。鍵出せるか?」
「んー・・・」
店までは俺の車で来たから、帰りは代行でマサん家回りで降ろして帰る予定だった。
車までマサに支えられながら覚束ない足どりで向かう。・・・慣れた車の振動がひどく気持ち悪い。
「ナール。お前らしくねーなあ。本当に大丈夫か?ただでさえ最近様子おかしかっただろ」
・・・バレてる。そりゃあお前とお前の彼女が一緒に働く所なんて見たくないに決まってんだろ。でも今は言い訳する元気もねーから。
「あっ、すみません。一人ここで―――」
マサの話し声が聞こえる。ああ、もう着いてしまったのか。目を開けるのも喋るのもしんどいから、もうこのままでいいいや。若干夢か現実かも分からないし。
「―――やっぱり、ここで二人降ります。停めてください」
・・・ん?
「ほら、エレベーターまで頑張れって。ナル、そんなデカイ身体は担がねーぞ」
何でマサん家に?まあいいや。もうどうでも―――
翌朝、目が覚めると二日酔いらしい頭痛と、何故か酷い寒気に襲われていた。不思議な事には額に冷えピタまで貼ってあるではないか。
「えーっと・・・」
ここはマサん家、マサのベッド。昨日マサと呑んで、俺が勝手に潰れたんだよなあ。
「げっ、12時半?!」
「ナル、起きた?大丈夫か?」
時計の針に驚いた所で、ハーフパンツとTシャツといった出で立ちのマサが台所から盆を提げてやって来た。そういえば俺も同じ様な格好に着替えているではないか。マサがしてくれたのか?
「お前、完璧カゼ引いてんだよ。通りでおかしいと思った。雑炊作ったから喰って寝とけって」
優しい味の鮭と卵の雑炊は、食欲が無い胃の中にもすんなりと収まってくれた。
そういえばマサは昔から面倒見が良かったっけ。身も心も弱っている今の状態では、気を抜けばうっかり涙が出そうだ。
「ホント、ゴメン」
「らしくねえこと言ってねーで、早く寝て治せって」
言ってポンポンと叩かれた頭が熱いのは、熱のせいにすることにした。




