さゆう1
「ねぇねぇ祐人くん」
「なんだい紗代ちゃん」
「リーブ21の『リーブ』ってなんだろうね」
「リーブ?」
「リーブ。」
「うーん、“LEAVE”かなぁ」
「旅立つの?」
「21本旅立っちゃうかー」
「さよならいおーん」
「多分違うかもね」
「多分?」
「でも髪の毛って毎日抜けてるんじゃないっけ」
「あー数十本だっけ」
「毎日抜けて毎日生えるとか」
「そんなシステムもありましたなぁ」
「ありましたねぇ」
「でも生えないから減るんだよね」
「出発だけする、と」
「あくせられーた」
「見送って終わりかぁ」
「『送って別れて、もうそれで終わり』……悲しそう」
「主語は?」
「たんぱく質が」
「髪がか」
「その呼び方……神様みたいで好きじゃないの」
「知りませんよ」
「知らないと思ったので今知らせました」
「ところで今調べたんですがね」
「ケータイですか」
「文明の利器すごい」
「21世紀ばんざーい」
「leaveという単語には、複数意味があるのですね」
「あるねぇ」
「そのひとつに、『その場に残す』という意味もあるのですよ」
「ほうほう」
「荷物を置いて手洗いへ行く、とか」
「傘を置き忘れるとか?」
「髪の毛は忘れ物じゃないよ」
「三本の長い友達ですね」
「あと、子供を残して買い物へ行く、とか」
「子供を残して冥土へ行くとか?」
「さよならいおんじゃないよダメだよ」
「先回りされました」
「とにかくリーブには、物を残すという意味があるそうです」
「なるほど、送って分かれてじゃないのですね」
「経営内容見ればそりゃそうだとしか」
「送って別れてじゃんけんぽん」
「ぐー」
「ちょき」
「突然だね」
「負けた……」
「荷物持ち」
「さんま!」
「のってあげようとも」
「送って別れてじゃんけんぽん!」
「ちょき」
「ぱー!」
「ねぇ『送って別れて』ってなにさ」
「また負けた……」
「あと一回」
「送って別れてじゃんけんぽん!」
「ちょき」
「ぱー!」
「だからなにさそれ」
「にゃああああああああああ!」
「ほいバッグ持ち」
「拒否権を発動し」
「ません」
「します」
「拒否権を拒否します」
「拒否権の拒否を拒否します」
「一人一日一回まで」
「にゃあああああああああ」
「おしまい」
「ちゃんちゃん」
「さぁ家まで来るんだ」
「きゃーきゃー誘拐です」
「泥棒です」
「勝てない!」
高校生の会話