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公立小学校もの

星の泣ける話

掲載日:2026/02/28

僕は九歳まで、西袋池にある父の会社の寮に住んでいた。


その寮はトイレも洗濯機置場も共同で、もちろん風呂もない。


近くの銭湯まで通うのが日常だった。


当時、片腕のない人も珍しくなく、入れ墨のある人もよく見かけた。


腕がないのは戦争で負傷したせいだ。


入れ墨は禁止されていなかった。


女湯には十二歳まで入ることができた。


僕は父と一緒に行くこともあった。


帰り道、夜空を見上げると、月も星もまるで僕たちについてくるように見えた。


「ねえ、お父さん。なんで月や星はついてくるの?」


「それは遠すぎて、物が動かないように見えるからだよ」


父の説明は、僕にはよくわからなかった。


当時の東京では、天気のいい夜には空一面に星が瞬いていた。


「星座って、何?」


「星座っていうのは、昔の人が見える星を組み合わせて、形をいろいろなものに例えたものさ」


「じゃあ、明るい星は偉いの?」


「そんなことはない。遠くに見える暗い星を六等星というが、それは地球から遠い恒星、つまり太陽なんだ。遠いだけの話だ」


「じゃあ、星座っていっても、距離は関係ないんだね」


「近いか遠いかも関係するし、光量も関係する。一概には言えないな」


僕はその話を聞いて、少しがっかりした。


星座って結局は人間の想像で作ったものなのか。


父は僕の気持ちを察したのか、話を変えた。


「人間は平等だけど、死んだら位階がもらえることがあるぞ」


「位階って何?」


「偉い人に天皇陛下が授ける位のことだ。校長先生や警察署長は正六位をもらうのが普通だ」


「総理大臣は?」


「普通は正二位だな」


「ふーん。人間って、死んだら位階がもらえるんだ」


「いや、ほとんどの人はもらえないけどな。お前も位階をもらえるように頑張れよ」


それから、僕は銭湯の帰り道、星たちがついてくるのを見るのが、少し楽しみになった。








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― 新着の感想 ―
 いい行いや成果を出した人が労苦を無駄にならずに、位階提供という形で汲み取ってもらえるという意味合いなんでしょうが、少年が父親から早くタヒんで欲しいのだろうかと勘違いしそうで怖い会話でもありますね。 …
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