森に過激な演出を!!
「ねぇ、ホントに合ってるわけ?」
私は額についた汗を払いながら、
後ろからついてきているシネマと シーンに話しかける。
「たぶん、位置的にはあってるむーびー。」
「ギルドの人の言葉を信じるカットっ!」
「.......あいあいさ~........」
あのギルドのお姉さん曰く、私の目当てのパーティーメンバーはこの山にいるらしい。
山登り経験のない私は何が何だかわからず、
明らかな軽装できてしまったが、大丈夫だろうか?
しかし、それにしても――
「んっ?どうしたむーびー?」
「そんなジロジロ見るなカット。」
この2人は本当になんなんだ?
いや、浮いてるじゃん。浮遊だよ?........ふ、ゆ、う。
えっ、ズルじゃん?......なにそれ?
お前ら生き物だろ?地に足をつけて生きろよ。
「......もう、歩くの疲れた。私も浮遊できたらな.......」
「「できるむーびー。」カット。」
だよね?そんな難しい技できるわけないもん。
あぁ~、聞いて損したわぁ~
「.......えっ?できるって言った?」
「そうむーびー。」
「いったい何を聞いてるんだカット?」
「.......はぁ~、へ~、ふ~ん.......」
いや、もう驚かないぞ。
驚くものか。
「どうせ『主演補正』でしょ?」
「おっ、察しが良いむーびーね。」
「でしょうね。」
もう何でもありだろ『主演補正』.........
その後あーだこーだ聞くと、
浮遊のためには体全体の力を抜かなければいけないらしい。
いや、怖かったんだよ?
力を抜くとなんだろう……フワッって落ちる感じがするからさ……
それでようやくーー
「で、できたぁ〜。」
「意外と早かったむーびね。」
私が地面を見下ろすと、私の足が地面から離れているのがわかった。
けど……10センチくらいかな?
二人と比べたらまだまだ足りない。
「もう、ここまで来たなら、高度を上げるのは慣れカット。
けど、浮遊で軽くなったから、俺たちで挟めばちょっとは飛べるカット。」
「じゃあ空からの捜索ってやつができるってこと?」
「そう言うことになるむーびー。」
そう言うや否や、2人は私の服を掴んで上昇する。
その高さはぐんぐんと上がっていきーー
「たっっかっ‼︎」
目測で100メートルぐらいのところまで来た。
わ、私の1000倍……
「さぁ、目を閉じてないで探すむーびー。」
「だ、だって……」
「怖いカット?」
「なわけないでしょ?」
私は自分が言われて嫌なことを全力で排除すると、
ゆっくりと周りを見下ろし始める。
辺りいっぺん森森森……
一体どんな広さだよ?
東京ドーム10個はすっぽりはいるんじゃないの?
私がそんな口を並べていると、それは来た。
「グワァァァッッ‼︎‼︎」
「「「⁉︎」」」
恐竜の叫び声のような、そんな異常音が森に響き渡る。
鳥は飛び、草木は揺れる。
とんでもない咆哮。
「い、いまのって……?」
「モンスターむーびー。」「そうカット。」
えっ、もうジュラシックパークじゃん。
誰か喰われてないよね?
いやだよ私、グロいの嫌いだもん。
あっ、けどモザイクかかってたらいけるかも……
「ちょ、ちょっとだけ近づいてみよっか?」
◇◇◇◇◇
うわうわうわ、いたよ化け物が……
私の真下にはまるでサイを巨大化したような化け物が、
あるパーティーに向けて突進を繰り返していた。
「……あの人たちってことないよね?」
「聞いてみないとわかんないむーびー。」
「この状況で聞けると思ってるシネマの目は節穴かな?」
私が冷静にそうツッコむ。
しかし、2人とも眼下で行われていることのほうが気になるらしく、
ずっと下を向きながら話している。
奇遇だな、私もだ。
「あのままだと多分全滅だカット。どうする?助けるカット?」
「..........まぁ、当たり前っしょ。」
「一瞬めんどくさそうだったむーびーね.....」
めんどくさくはあったが、
1番は私の力が今この世界でどれほどか確かめたいということ。
最初はこれに限る。
人助けはあくまでサブでしかない……
「酷いむーびーね。」
「そもそも襲われる方が悪いと思うけど?」
「それもお前のせいカット……」
そして私たちは戦闘をしているところから50メートルくらい離れた場所に降りた。
やはり、地上から見ても立派なサイでびっくりしたが.........
「あれは『ベヒモス』って言うモンスターむーびー。」
「へぇ~、初めて聞く名前......」
「見た感じサイと似てはいるカットが、
体と重さにそもそもの強さがダンチだカット。」
「........そうなんだ。」
私たちは目の前で死闘を繰り広げられているというのに、
お構いなしにしゃべり続ける。
「この森にはあまりではないはずむーびー......」
「多分これも『主演補正』のせいカット。」
「えっ、待って、どういうこと?」
「だって、『主演補正』には強敵とのエンカウント確率が
上がるというものもあるカット。」
「.........なににそれ?........マジでいらないじゃん。」
流石に最強スキルもここまでだったか.....
そう思いながら再度目の前のベヒモスを見据える。
戦っているパーティーメンバーの剣や矢をはじいては、突進をしている。
見た感じは物理攻撃ではダメージが入らないらしい.......
「もう、なに?ダンプかな?ダンプカーなのかな?」
「まぁ、確かに言いたいことは分かるむーびー。」
あんなものが突っ込んできたら、骨折どころの騒ぎでは済まないだろう。
メッタメッタ、いや、ギッタギッタのバッコンバッコンにされてしまう.........
「ちょっと何言ってるか分からんカット。」
「ふっ、これは漫画の技法だよシーン君。」
私は軽く擬音語について説明(した気になっている)すると、
ふと、ある疑問がわいてきた。
そう、この物語にかかわる重要な――
「あれっ、もしさあのパーティーが私の所属予定のだったら、
先バレになってよろしくないんじゃない?」
そう、もし私の言う通りだったら、
『パーティーメンバーの荷物持ちが世界最強で、
メンバーがピンチになったら手助けしながら進んでいき、
最後の魔王戦で正体を明かして、魔王をぶち殺す』
という台本がボツになってしまう。
「確かに、それはそうむーびー。」
「けどそれだったら正体を隠さないといけないカット。
今ここには顔を隠す仮面とかもないからどうするんだカット?」
た、確かに……
じゃあどうする?駄目元で凸っちゃう?
「「「う〜ん……一体どうすればいい…」むーびー…」カット…」
三者三様で同時に悩んでいたとき、私たちの後ろからバサっと音が聞こえる。
「えっ?」
ベヒモスのせいで高まった緊張感で勝手にモンスターだと判断してしまったが、
そう言うわけではなさそうだ。
「……な、何あれ?」
落ちてきたものに動きはない。
しかし、風にたなびかれてパサパサと音を立てていた。
最初は街から飛んできた洗濯物が木の枝に引っかかって、
時間経過で落ちてきたと思ったが……
「う、嘘でしょ?」
恐る恐るそれお手に持って私は絶句する。
広げてみると服だったが、普段着るような服装ではない。
帽子、杖、ブーツ..........これらがあらわす服装は――
「『主演補正』ってこんなこともあるむーびーね。」
「これぞラッキーってやつカット。」
「えっ、これ着て戦うの?………はずっ。」
◇◇◇◇◇
「逃げろ“ぉ”ぉぉ‼︎」
俺は喉にある空気を搾り出して、そうみんなに叫びかける。
「キャァァ‼︎」
「ヴォォォ‼︎ヴォオ!」
逃げ遅れた俺たちの仲間にそいつは容赦なく攻撃を放つ。
「くそがぁっ!」
俺は走り込んで仲間を抱えると、間一髪で攻撃範囲から出ることに成功する。
後ろを見ると、目視で直径6mほどのクレーターができており、
その攻撃の恐ろしさを物語っている。
「なんで、なんでなんだ⁉︎」
俺たちの前に立ちはだかる化け物。
その名をベヒモスという。
二本の大きな角を持ち、その巨体を使って体当たりをしてくる。
物理攻撃は効かず、魔法攻撃の耐性も高い。
明らかな強敵だった。
俺たちに倒せるはずもなく、逃げ惑うだけ……
それも限界が近い。
体力がある男の俺とタンクはまだ大丈夫だが、
女子のヒーラーと魔導士は息が切れ、動きが鈍ってきてしまった。
あと数回しか攻撃を回避できない。
全員がそう認識している。
ギルドや他のパーティーに連絡を取ろうにも、距離が遠すぎてとれない状況。
あとはやられるだけ……
「もう、無理………キャッ!」
足が疲れたのか、魔導士が小石に躓いてしまう。
不運にも目の前にはーー
「ヴォオォ‼︎」
「ひっ…」
「バカやろうッ‼︎」
ベヒモスが目の前にいる魔導士をじっと見つめる。
それに怖気付いてしまったのか、目の焦点は合わず涙目で座り込む魔導士。
助けに行かなければならないが、この距離は流石に間に合わない……
出来ることは攻撃が避けるのを祈るのみ。
「ヴォロォォ‼︎」
しかし、それに反して魔道士に向けられて振り下ろされる前足。
これは魔導士に限らず誰もが思った。
『死』
「どうした、こんなものだったか?
……弱々しいな、もっと腰を入れて踏め。」
「「「「⁉︎」」」」
パーティー全員が目の前の光景に唖然とする。
なぜか、それはーー
「おまっ………一体……?」
突然現れた女が片手一本で持っている剣で、
ベヒモスの前足を受け止めている光景。
あのベヒモスを片手一本……
男のみならず女がやっていることに強い違和感を覚える。
そして俺は引き寄せられるように女を見る。
戦闘用の服装なのだろうか?
黒に白のラインに白バラを用いた帽子を身に着け、
白い衣類の上に、黒く清潔感がある服をまとっていた。
手には赤バラが模様に入った高級感のあるば杖が握られている。
女はそれをベヒモスの体にちょんちょんと当てると言い放つ。
「……?…腰の入れ方がわからないのか?」
女は喋るはずもないベヒモスに問いかける。
思い通りに攻撃を繰り出せないベヒモスはとても動揺しているらしく、
足に体重を乗せているような素振りをする。
「腰を入れるということは………こういうことだ。」
刹那、女の拳がベヒモスの腹部に叩き込まれる。
「ヴォッ⁉︎」
あのベヒモスがまるでボールのように空高く上がる。
ありえない光景だった。
ベヒモスが空を飛んでいる、そう認識するほかなかった。
全員が空中に意識がいく中、その女が俺たちの方を向く。
「な、なんだ……⁉︎」
「…………」
何も声を発しない女。
すると、手を上に上げて――
パチンッ‼︎
指を弾いた。
すると、
「ヴォッヘッ‼︎」
上からひっくり返ったベヒモスが、どしんと言う音と共に地面に落ちる。
砂埃が舞う中、女はゆっくりと驚くほど冷静に話し出す。
「………我の名は『シアター』。この世界でエンターテイメントを追求する者。」
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