映画にはキャストが必要だ。
私たち3人はあの平原を後にして、最寄りの街に来ていた。
「おぉ~!!すごい、すごい!こんな感じのセット見たことあるかも!」
私は近世のヨーロッパ風の建物にキラキラとした目を向けていた。
映画で見慣れた光景ではあるが、生で見ると話は変わってくる。
これが百聞は一見に如かず、だろうか?
「それじゃあ、百聞じゃないむーびー......」
「そもそも、さっきまでスライムをあんなに刻んでおいていえる言葉カット?」
「だまらっしゃい。」
あの時はあの時でなんか私じゃなかったんだよ。
なんか、憑りつかれてる感じ?
「そんなんはさておきさぁ、私の好きなことしていいんでしょ?」
「まぁ、そうむーびーね。」
「けど、何するんだカット?」
私の言葉にシーンが問う。
やろうと思えば何でもできる能力――
それがいま私の手中にあるのだから.......
さて、どうしようか?
「じゃあ、今までで最高級に盛り上がる魔王退治........とか?」
私が小恥ずかしくなり、赤面しながら言うと、
それとは逆にシネマとシーンはため息をつく。
「な、なに!?........なんか悪い!?」
「い、いや、そういうわけじゃないむーびーが.......」
「なんか王道すぎるカット。」
「お、王道.......」
王道ってなんだよ、私の考えが誰にも思いつきそうな感じに聞こえるじゃん。
あ~、なんか.......ムカつく。
「じゃあ.......」
「「?」」
「パーティーメンバーの荷物持ちが世界最強で、
メンバーがピンチになったら手助けしながら進んでいき、
最後の魔王戦で正体を明かして、魔王をぶち殺すっていうのは?」
ふふん!.....結構いい感じでしょ!?
学校で脚本は具体的であればあれほどいいって教わったからね。
「まぁ、いいんじゃないむーびー?」
「それなら.......俺も賛成カット。」
おぉ、よかった。
また拒否られたら殴りかかってるところだった。
「まぁ、方針は決まったことだし行きますか?」
「そうむーびーね。」
「ここに来るまで意外と長かったカット。」
こうして私たちは歩き出す。
えっ?どこへかって?
それは――
「さぁ、ギルドに行こう!」
◇◇◇◇◇
「多くない?」
私はギルドに貼られているメンバー募集の掲示板を見て絶句する。
全部で1,2,3.......
「50枚以上あるムービーね。」
「こんなに多いと思ってなかった.......」
意外と大きい街だったんだろうか、ギルドの内装も若干豪華だった。
もしかして、これも『主演補正』?
「多分そうかもカット。」
「おい、まじでぇ~。」
すぐ決めようかと思っていたが、これでは決められない。
ここまで来たらもう一枚ずつしっかり見るか?
もう、穴あくまでじっくり.......
「やめたほうがいいカット、それとも変質者になりたいのカット?」
「けどさぁ........」
「それだったら、受付の人に聞けばいいむーびー。」
そう言って、シネマは受付の人を指さす。
そこにはとってもきれいなお姉さんが........
「こっちの世界しかいないのかな、ああいう人。」
「しょうがないカット。」
「あきらめるむーびー。」
2人に挟まれててんやわんやいわれるうちにあることに気づく。
そう今までスルーしてたけど.......
「えっ?てか、なんで2人って大丈夫なの?」
「「ん?」」
「いや、なんか、2人をほかの人が見たら驚きそうだなって思って......」
こんな宙に浮かびながら人に話しかけてくるものなんて、
私以外の人が見たらモンスターだと思って攻撃してくるだろう。
もしかしたら、私もモンスターと繋がってるってなって攻撃されるかも.......
いや、やだよ。私そんなの......
「.......私から半径3メートルくらい離れてくれる?」
「いや、何言ってるむーびー?」
「そうカット。俺らはお前以外からの生物からは見られないカット。」
「そう.......なの?」
なに!?その妖怪みたいな設定!?
えっ?......怖くなってきたんだけど......
精霊じゃなくて妖怪ってことないよね......?
しかし、そんなことを話しながら歩いていると、
受付前のカウンターにたどり着く。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」
「あっ、あの、パーティー募集って......?」
「あぁ、パーティーですね?」
「は、はい。」
私が本当に陰キャ過ぎて、ギルドのお姉さんの綺麗さにビビっているが、
そんなことも関係なくギルドのお姉さんは私に言葉責めをする。
「役割希望はありますか?」
「あ、え、えっと、荷物持ちってあります?」
「に、荷物持ちですか?剣士やアーチャーではなく?」
「はい、そうです。」
「えっ、理由を聞いてもいいですか?」
そう来るよね~。
私でってそう思うもん。
けど、私にもやるべきことがある。
「えっと.......戦闘が怖くてですね.......[←大噓]」
「そ、そうなんですか?」
あぁ、もう何でここにきてんだって顔されてるよ。
.......恥ずかしい、死にたい。
「だ、大丈夫ですよ、そのような方は多々おります。
ご安心してください、私が素晴らしいパーティーをご紹介しますね。」
「......!!」
な、なんだこの人!?
神か!?神なのか!?
えっ?私だったら、台パンからの即時帰宅だったよ?
本当に?......マジですか?
あぁ、こっちにもいい人っているんだな......
てかこの人、顔きれいだし、スタイルいいし、胸だって......
「.......?........はっ!?」
私の頭に電流が走る。
そして、私は恐る恐る視界を下に向ける.......
そう、そこには――
「な、何で.....?」
まっ平があった。
いったい何を食べたらあそこまで成長できるのだろうか?
わ、私だっていっぱい食べてるし!
顔とかにも自信はあるけど........
「お、お客様?」
「へっ?」
私がお姉さんの胸を凝視している内に、お姉さんは何かまとめてくれていたらしく、
両腕に抱えられている紙束があった。
それをドサッと置くと、お姉さんは私の目をまっすぐに見つめる。
「ど、どうしたんですか?」
「......探しましょう。」
「えっ?」
「荷物持ち募集のパーティーをですよ!!」
ここから私たちの地獄の読書タイムが始まる。
◇◇◇◇◇
えっ?疲れたよ?
うん、十分ね。
もう、死んじゃうよ?
女の子にこのクソ労働は死んじゃうよ?
「あ、あと、もう少し探してみましょう?」
「........は、はい。」
お姉さん?まだかよって顔がだんだん出てきてますよ?
「.......なさそうでしたら、もういいですよ?」
「そ、そんな!?.......私はまだあきらめませんよ!?」
お姉さんは一枚一枚目を通していく。
お姉さんの青い瞳が左へ右へ動いているのが見える。
あぁ、本気で探してくれてるんだな。
「はぁ、もういい加減出てきてくれ.......?.......ッ!!」
「ど、どうしました!?」
私は見つけたそれを、お姉さんの前にかざす。
「『荷物持ち募集』.........わぁ!!」
「えぇ、そうです。」
「やりましたね!!.......えっと~.......」
「エミです。」
「やりましたね、エミさん!!」
「そりゃどうも。」
私はカウンターに突っ伏しながら、お姉さんに募集紙を渡す。
やっとだ、やっとスタートできる........
マジで長かったよ........本当に友達家で桃鉄やったくらいキツかったよ。
「お疲れ様むーびー。」
「頑張ったなカット。」
「あぁ、ホントだよ!」
2人が左右から私の苦労をたたえる。
それに母親の温かさを感じた私は、2人に抱き着く。
「き、キツイむーびー!」
「は、離せカットッ!」
放すか。
このまま私の味わった苦行と同じくらいの辛さを味わってもらおう。
「あの~......」
「はへ?」
後ろからお姉さんの声が聞こえる。
その声は何か曇っている感じが......
「どうしました?」
「.........それが......」
それが?
「そのパーティー、今クエスト行ってます。」
「はっ?」
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