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3/6

女監督は雨に濡れる。

主人公の口調が変わりますが...........まぁ、強キャラになりきる役者だと思って見てください。


「『テイク3』。」


カチンっ!


そう唱えた瞬間、視界が再度暗転してカチンこの音が鳴り響く。


「.......うっ、.......」


強い能力の反動なのか、はたまた使い馴染んでいないのか、

吐き気を催して視界が揺れ動いているように見える。


そして、私は能力の指定時間へと舞い戻る。


その時間とは―――


「プルプルンっ!」


私の目の前には先ほど倒したはずの青いスライムがプルプルと揺れていた。


そう、スライムを倒す前へと戻ってきたのだ。


「なっ、何してるむーびー!?」

「なんで倒したのに巻き戻してるんだカット⁉︎」


2人が私へと詰め寄る。

その顔には疑問という感情が映っていた。


「...........これじゃない.......」

「「えっ?」」


私は一言だけそう告げ、スライムに向かって歩き出す。

途中においてある、あの枝を手に取って――


「まだ()()じゃない。」


確かシネマの話だと私自身の身体能力は上がっているはずだ.......

なら、どうするか?


どうすれば、この世界にエンタメを持ち込めるのか?


それは至極簡単なことである。



「.......ふっとべ、スライム。」



刹那、私はとんでもない速度で枝をスライムに向かってぶん投げる。

その枝にぶっ刺さったスライムは自身の体の粘度によって枝が突き抜けず、

体が枝に持っていかれてしまう。


それを読んでいた私は強化された脚力で、

枝より100メートルほど先に移動してスタンバイする。


やがてその時はやってくる。


私は真正面から向かってくるスライムが刺さっている枝を見据える。


ゆっくりと誰かに構えでも見せるかのように準備する。

拳を引き、視界を枝の先へと固定する。


そして、目と鼻の先に現れる枝とスライム。

私は強い打撃を加えるのではなく、タイミングを合わせるように拳を振りぬいた。


ベキッ!!

「プルルン!」


枝の先に衝撃が走り、真ん中から枝が2つに割れる。

その真ん中に粘りついていた、スライムも同様だ。

枝が割れるとともにスライムも四方八方に爆散した。

あたりを見渡すと、青い液体がちらほら草に付着している。


「だ、大丈夫むーび!?」

「おい!.....無理すんなカット!」


その後、私に遅れてシネマとシーンがやってくる。

シネマは心配をしてくれているが、シーンは無茶をした私に怒っているらしい。


「おい!聞いているのカット!?」


ボーとしている私にシーンが言い放つ。


が、


そんなことは戯言だ。


「ま、まさか.........お前......」


小声でブツブツと何かを言っている私に、シーンは青ざめた顔で言う。


「今のは2Dだった、画面の前の人たちは喜ぶのだろうか?

 いや、それはない。もっと、もっと躍動感が欲しい。

 けど、どうする?......スライムはすぐに消滅してしまう。

 もたもたしていては時間が無くなって、リスナーが萎えてしまう。」


話しているうちに私の思考はさらに加速する。


「萎えさせないため、最後まで見てもらうためには........

 ......そうか、もっと動きを派手に速くすればいい。

 そうすることで、もっと人気が、視線が集められる。」


「ねぇ、ねぇむーびー.......」


「ということは答えは一つ.......スライムが消滅する前に

 派手と速さを兼ね備えた攻撃を繰り出せばいい。

 速さは『主演補正』で何とかなる........じゃあ、派手さは......」


私は一つの結論へとたどり着く。



「..............3Dだ。」


そうなるともう話は早い―――


「待って、一回休んで.......」

「そうだ、休息を.......」



「『テイク4』。」


カチンッ!!



視界の暗転後、目の前には元気ピンピンのスライムがいる。

私はその実験対象(役者)に目を向けると――


「すまなかったな.........次は少し派手にいこう!」


私は大きく足を上げると、力強く地面を踏み込む。

すると、大地が揺れてスライムが跳ね上がる。


「プルル?」

「次は.........上だ。」


私はスライムを上へと蹴り上げる。


蹴り上げられたスライムははるか上空へ、打ち上げ花火のように上がっていく。

それを見上げた私の顔は――


「ははっ!」


おもちゃで遊ぶ子供のように無邪気な表情をしていた。


高く、高く、蹴り上げられたスライムが太陽と重なって、

私の周りが影に包まれた時、私はニヤリと笑う。


あぁ、いい感じだ。

めっちゃいい感じ――

......なんていうんだろう、この目入っちゃうシーン........


自己思考の中、私はあることを思い出す。


そうだ、私は――


「........こういうのが作りたかったんだ。」


私は力強く大地を踏み込むと、小さなクレーターを生み出して高くジャンプする。


スライムとの距離がだんだん近づくとともに、

耳に風が切り抜ける音が入って、体が上昇していくのを感じる。


「...........さっきはX、Y軸だったな、」


スライムと同じ高度になった私は、

耳がなく声が聞こえるはずもないスライムへと呟く。


片手にはあの枝........

それを私は思いっきり振りかざすと――



「.......今回はZだ。」



天空で声が響いたのも束の間、私は枝でスライムを切り裂く。


すると、スライムは生き残るための本能が働いたのか、

1つから2つへ分裂をする。


それが、私の狙い。


前の世界でスライムは分裂するものだと知っていた私は、

刺すのではなく、切ることでスライムを分裂させることを考えた。

素早く切ることでスライムの数は、指数関数的に増えていく。


さらに、空中で分裂させることでインパクトも抜群となる。


「きゃははっ!」


私は笑いながら嬉々として枝でスライムを切り割いていく。

そして、いつの間にかスライムの数は――


「........多っ....」


1,048,576体になり、ほぼ液体となっていた。

もう光に反射してきらきらとしか見えないほど小さくなったスライム。


それらを空中に留めて先に地に着地した私に、

シネマとシーンが近寄ってくる。


「だ、大丈夫カット?」

「いったいどうしちゃったんだむーびー?」


そう語りかけてくる2人。


そうだ、あれを伝えなければ――


「うん、ありがとう。

 それと...........()()()()()()()()()()()()()()()


「「えっ?」」


2人が驚いたのち、空から水が降ってくる。


「あっ、雨むーびー。」


シネマがそう上を見上げた。

その一方でシーンが疑問を浮かべる。


「さっきまで快晴だったカット……」


そして、2人は理解する。

この水はただの水ではないと――

ごく少量ではあるが、魔力を帯びている。


「「ま、まさか!?」」


2人が一斉に私のほうを向く。

それと同時に雨脚は強く、重くなってくる。


「そう、()()()()()()だよ。」


2人は絶句する。


目の前の女は手を広げて今の現状を深く味わっている。


多分この先もこの女は、気に入らないことがあれば……


自分が気に入るまで続けるという狂気。

それがこの女を最強にさせた。


「さっ、2人とも行こう。」


こうして、この世界に最強がクランクインした。



1,048,576=2の20乗


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