忘られない血の匂い
響く破裂音、飛散する赤と悲鳴、、
慈善家「真っ直ぐ勝ちに来たか、そういう感じね」
タリヤ「何故、、」
慈善家「何故って君の脚本なら結果は変わらないと思うけど?」
慈善家「私がチャンバーを回す権利を失い、どうせ負ける、それが早いか、遅いかの違いでしか無い、」
慈善家「おめでとう、景品だ、好きな奴隷一人持って行くと良い」
タリヤは地面に転がる死体の顔を見る、何歳程だろうか、12?良くても15歳程の子供の死体が目の前にある、そしてその死体は最後の最後まで恐怖と絶望に感情が支配され、
表情はあまり無く、でも目尻に涙が溜まり、そして、死亡したはずなのにまだ食いしばり続けてる口を見る、、
死亡し、体に既に力は入っていないはずなのに口は僅かに空いていて、隙間から食いしばり何かを必死に堪えようとした様子が伝わってくる、、、
タリヤ「このルール継続だ」
慈善家「良いだろう、奴隷を選ばなければ私が勝手に渡すぞ」
タリヤ「奴隷はいい、貴様の名前を教えろ」
慈善家「私の名前に数百万の価値は無いさ、奴隷も名前も教えてやろう」
蒼牙「蒼牙と呼ばれていた、本名では無いが、本名はもう何年も前に忘れてしまったからこれが本名の様な物だ」
タリヤ「蒼牙か、その名前今日から二度と名乗れなくなる、今のうちに名乗っておくと良い」
蒼牙「そうさせてもらうよ、渡す奴隷はこいつだ」
蒼牙は1番奥で、奴隷同士で唯一関わりあっていなかった暗い少女の腕を掴んで、突き飛ばす様にタリヤに渡す
タリヤはその暗い少女の顔を一瞬見つめて、顔を逸らし蒼牙に聴こえない程度の小声で告げる
タリヤ「あの子、、救えなくて、すまなかった」
薄い布を身につけた少女に自分のコートを脱ぎ、被せる
蒼牙「では早くも次のゲームの開始だ」
第二ゲームは静かに開始した
ロシアンルーレットはルール的に勝ち方が少ない、だから狙える勝ちが少ない、ルールにもよるが、今回のルールならある程度の実力があれば、チャンバー回しが残ってる限りは必ず生き残れる、
そして蒼牙が狙っている勝ち方は長期戦をし、タリヤの集中力が薄れ、弾の位置の管理が出来なくなっていくまで精神的不安、精神的ダメージをタリヤに与え続ける戦法
そしてタリヤは今、目の前で殺された少女が自分の戦略のせいで、死んだ事に申し訳なさを感じてる自分に困惑していて
自分がどういう勝利がしたいかが分からなく、自分の戦略をこのまま使い続ける自信が無くなって来ている、、
明確に蒼牙の思惑通りに進んでいるこのゲーム、タリヤはどう勝つ、、
蒼牙「そろそろ分かったか?何故私が最初先行を捨て、実質的なそちらの先行にしたか」
タリヤ「精神的揺すり、そして俺がこの勝負で勝ちを優先するか、それとも命を救う方法を模索する為にゲームを伸ばし続けるか、それの確認だろ?」
蒼牙「流石、富者を蹴落としてただ無名の中学生から堕者の処刑人と呼ばれるまでに勝ち続けた超人」
蒼牙「処刑人と呼ばれてるが、実際対峙してみると子供を殺しても表情を変えずにギャンブルをする狂人だったとはw」
(見え透いた挑発、、2度目は乗らん、、)
(この見え透いた挑発に乗ったせいでさっきはアイツが勝利では無く、俺の心の揺さぶりをするという本当の目的に気付けず、少女を死なせた、、、)
(とりあえず今回は何か思い付くまで全力で伸ばす、、)
今のタリヤの目標は、蒼牙に時間を伸ばそうとしてると勘付かれる事がない様に、自然に思考時間を増やし、それでいて賭博の道具として扱われている奴隷達、そして景品の奴隷達、全員の解放
当然だが既に全員の救出は不可、この時点でタリヤは自身の今回の勝利を想像出来ずにいた、
一度のミス、ただ一度のミスが全員を救い出したいタリヤと、純粋な勝負師である一人の男としての自信をどちらとも揺るがす
初めての自身の行動が、人の命を直接的に目の前で終わらせる人間をチップにしたギャンブル
それも死ぬ相手は自分の意志でギャンブルをしていなく、それでいて皆、死に恐怖を感じ、人を思いやる事が出来る人間、人の為に悲しむ事が出来る人間、
今までタリヤが刈り取って来たクズとは違う、、
それを理解し、怯え、震えそうな手を、気持ちを表に出さず、テーブルから弾丸とリボルバーを手に取る
(緊張と、不安で指先が冷たく感じる、、)
冷たい指先と、冷たい弾丸が少しの間触れ、離れる、、
ストン と軽い音を立てて弾倉に弾丸が落ちる、、
カチッ と音を立ててシリンダーを元に戻し、見慣れたリボルバーの形になる
右目で地面に転がった死体を横目に見ながら右手でハンマーに指を掛ける、、
(銃のハンマー、、重いな、、こんなに重かったかな、、いつも、、)
リボルバーのハンマーを上げる動作をいつもより0.数秒だけゆっくりする、そして意味も無く、ハンマーを上げたあと右手から左手に持ち変えて数秒稼ぐ、そして無駄に喋らず、引き金を引く、また0.数秒時間をかけて丁寧に、、
そして今までと緩急をつけ、勢いよく引き金を引く
カチッ
二人の間に会話は無く、タリヤは表情を変えずにリボルバーを机に置く
蒼牙も何も言わずにリボルバーを受け取り、チャンバーを回す、、
カラカラカラカラ ガチャン
カチッ
弾丸はまだ冷たい、、
前のターンで蒼牙がチャンバーを回し、引き金を引いたって事は次の弾の位置は当然前回と同じなら、
今回タリヤがチャンバーを回し、弾の位置を調整すれば次の弾は必ず、蒼牙に回り、タリヤの勝利、、
だが、蒼牙がそれを読み、一発ずらして置いていれば、俺がチャンバーを回すと、弾が綺麗に俺の番に必ず発動する、、
一個後に置いてればチャンバーを回し、一発撃った時、部屋は再び赤が増える
蒼牙が俺に勝ちに来ていれば、俺はチャンバーを回し、弾の位置を変えれば当然負ける、、
そして蒼牙が俺の精神の動揺を誘っているだけなら、恐らく今回は俺が勝つ、
精神の動揺を狙ってる場合アイツが俺にさせたいのは、目の前で子供を殺し、俺が引き金を引く事に躊躇を持たせ、
恐らく3回戦以降の心理戦で有利にするための敢えての最初の2回に負けにくる可能性もある、、
だが、精神的動揺を誘う為の行動ならば1番は俺に少女を撃たせる事、、
そう考えれば、負けの確率が高く、精神的動揺も誘い難い前回と同じ弾の位置である可能性は低い、、
タリヤはリボルバーを手に取り、ハンマーを起こす
(これでターンを伸ばす事は成功しそうだが、伸ばせても未だに一切奴隷を解放する手段を思いつかない、)
(そもそもそこまで考える余裕はあまりにも無い、普通に戦っても勝てるか分からない相手にハンデ背負って戦うのは余りにも辛い、、)
カチン
今までと音が少し違う、、ハンマーが空気を叩く音では無く、
ハンマーが雷管を叩き、中の火薬を爆発させる為の作業を終えた音、、
この足音さえ反響する小さな密閉された部屋で、断末魔が響く事は無かった、正確には断末魔が響くような時間の余裕は無かった
一発が綺麗に急所にあたり、痛みを感じる間も無く、一瞬の内に二人目の命が目の前で消えた
蒼牙「へぇ深読みしちゃったかぁw」
蒼牙「良い顔になったじゃんw」
タリヤはリボルバーが発射するのを予測出来ておらず、反動を受け止めきれず、顔に銃身が直撃し、顔の何処かから血が流れた
そしてタリヤは数秒間放心状態になり、数秒後顔のどこかから流れた血、そしてそれ以上に地面溜まった血の水溜りを見て今回の勝負の結果がどうなったかを知る
そしてタリヤは体の感覚徐々戻る、指先は自身の血で温かく、それと対象的に目の前にいた奴隷の少年は体温を失い、冷たくなっていく
今タリヤが落とし、床に転がったリボルバーに装填されている薬莢も熱くなっていて、この弾丸が熱を持つ度に人が1人冷たくなるこの絶望的状況は今のタリヤの思考能力を下げるのには何よりも有効な攻撃となった
蒼牙「で、今回負けたって事はアンタは金を支払うはずだな」
タリヤ「わかる、すぐ払、」
蒼牙「勘弁してやるよ、これでな」
蒼牙は本来タリヤが勝利したら解放されるはずだった奴隷が弾かれた
タリヤはもう思考能力を失った、勝負にも負け、本来の目的だった全員の救出は1人以外誰も出来ていない、、
蒼牙「おい、お前片付けとけ」
蒼牙はまだ生きてる奴隷に命令する
奴隷「わか、、りま、した、、、」
奴隷は悲しみのせいか、恐怖のせいか、それとも怒りか、それとも全てなのかは分からないが涙を流し、震える声で返事していた
(俺はこの目の前で震え、泣く事すらこの年齢で我慢させられてる様な子供を救う事が俺には出来ないのか、、)
(結局、俺には人を救って誰かの希望になれる様な人間になる器なんて無かったのかも知れない、、)
(心の何処かでいつも考えていた、いつかこんな事しか特技がない奴でも人を救えるんじゃないかなって、、だから俺は弱者を踏み付け金をむしり取り、人として扱わない様な人間ばかりを狙い、そいつを破滅させ、間接的に人を救おうとしていつも賭博をしていた)
(転生する前の様な、、いつも人に救われるのを待つだけの弱者じゃない、、)
(俺が求めている力は、救われるのを待ってる弱者の手を握り、真っ直ぐ見つめ、精神的にも肉体的にも人を救って、人に感謝されて、、、)
(誰か、誰でもいいから、誰かの1番に、誰かが俺が死んだ時に誰よりも泣いてくれる様な、、)
(俺を、、、その人の1番にしてくれる様な人が、、)
(今俺が折れたら、、残りは必ず死ぬ、、)
(でも俺が貼り続ければ、、誰か1人くらい、、)
(救えるはず、、)
蒼牙「下準備完了かな、そろそろ楽しめるかな」




