表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/45

研究所脱出に

「む、シャルルか。少し遅かったな」


「いったぁぁ……もうちょっと手加減ってもんを——」


「これで研究所の者だった場合面倒になるだろう?仕方ないってやつさ」


「たくっ……こんのメスゴリ――いたたたたぁぁ!?」


「シャルル、口の利き方はもう少し気をつけた方が良いぞ?身を滅ぼすことになる……」


「ギブギブギブギブッ!!!俺が悪かったっ!だから後ろで絞めないで……ッ!!」


 エヴァさんの手がシャルルから離れ、シャルルはようやく解放される。しきりに手やら腕を確認してから憎々しそうにエヴァさんを見、後に私へ視線を向け、汗を拭いながら言う。


「よ、ようルナ。助けに来たぜ!」


「うん……大丈夫?」


「ま、まあなぁ……折れたかと思ったぜ」


「シャルル、そろそろ行こう。もうすぐここの奴らが異変に気づく頃だと思う」


 エヴァさんはハッキリと言って、扉の外を確認している。変装をしたシャルルも先ほどの戯れから立ち直っており、眉間にほんのり皺を寄せている。


「だろうな。……ひとまずは計画通りに」


「わかった。……ルナ、もう一度私の後についてくるんだ。いざとなったらすぐにその手錠を解錠する。そうしたら君の力で敵を倒せ、いいか?」


「わ、わかった」


「……相手は化け物なんかじゃない、人間だ。本当にやれるな?」


「……うん、やる」


 躊躇いながらもそう答える。ほんの数秒だけ私とエヴァさんの視線が交じる。するとエヴァさんは優しく微笑み、では私も最善を尽くさねばな、と言った。


「……準備はいいか二人とも?」


「俺に任せな」


「うん……!」


「よし……行くぞ」


 再びリミナルスペースと呼べる白基調の無限回廊へ出た。変わった様子はないが、仄かに、先ほどよりも音が聞こえるようであった。当然シャルルがこの場におり、先ほどより一人分音が多いということもある。


 しかしそれ以外、なにか別の音がちらちらと増え始めていた。


 エヴァさんが先頭を、私はその後ろを、そしてシャルルがしんがりとなって、三人一列で歩いていた。あの暗い尋問室へ向かっていた時よりもゆっくりと、常に身構えるような心持ちで歩いた。


 すると……なにやら数人が、まだ遠いがぞろぞろと歩いてこちらに向かってきていた。エヴァさんが小さく、ルナは静かに、と言って、ゆっくりと歩き続けた。……やがて向かってきていた者たちが、私たちの前で止まる。

 どこからやってきたのだろう、その道は真っ直ぐで、曲がり角はなく、突き当たりには私が眠っていた牢屋しかないはずである。

 しかしどうだろう、よくよく見やれば向かってきていたのは警官であった。同じような黒衣とブーツ、警官帽を被っており、人数は四人であった。

 ひし形のような隊列を組んでおり、先頭の一人が重々しく言う。


「そこの三名、止まれ」


 エヴァさんの足が止まる。少し遅れて私やシャルルも歩みを止め、ジッとその警官たちを見つめた。先頭の警官は続けて言う。


「そちらが例の異邦人……貴殿らは尋問担当か?」


「ええそうです。先ほどまであちらの部屋で調べを……」


「尋問官は一人ではないのか?」


 どこか疑うような口調に、私はエヴァさんを少し見た。しかしエヴァさんは焦りの表情もなにもなく、ただ淡々と事実を述べるという嘘をついてみせた。


「おや……私は、担当は二名で、と所長には言われておりました。ですのでこちらの者を借りてきたのですが……」


「む……所長直々であったか。これは失礼した、ご苦労である」


「いえ、そちらもご苦労様です」


 なにやら互いに敬礼し、その場ですれ違う。私はヒヤヒヤしながら四人の警官とすれ違い、ようやく最後の一人とすれ違った時、安堵の息が漏れた。


 やがて先ほどの、私が収容されていた牢部屋の前へと辿り着く。するとエヴァさんは急に左の壁を見て、これまた真っ白なボタンを押した。よく目を凝らさなければ気がつかない。先ほどの警官たちはここから来たようだ。


 ボタンを押すと壁でしかなかった扉が開き、六人ほどが乗れるエレベーターが現れた。私たちはそこに乗り込み、エヴァさんが扉を閉めた。続けてなにやらボタンを押し、ゆっくりとエレベーターは動き始めた。


「まだバレていないようだ」


「ヒヤヒヤした……」


「以外に警官ってのもマヌケなもんだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ