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03 初手詰み

「…、(どこだここ? クソ! 目が見えづらいし手足も満足に動かせねぇ)」


 あの女神レティに転生され、ミヤビは意識を覚醒させたのは良いが、本当に赤ん坊からのスタートで《天前 雅(あままえ みやび)》の意識は持っているが、ただそれだけで身体も満足に動かせなければ、言葉も喋れないし赤ん坊だからなのか目も見えづらい。

 しばらく悪戦苦闘(あくせんくとう)していたミヤビだったが、どうにもこうにもならなかったので一旦休憩をする事にした、生まれたばかりで体力も無いのだ。

 落ちついて周りに意識を向けたミヤビは近くに誰かが居る事にここでようやく気付き、何かを話している様子の2人に顔を向ける。


 「どうするこの子?」


 「どうするも何も今のオラ達じゃ育てられねぇべ、適当にそこらの山さ捨てていけば勝手にいなくなるだべ」


 「でもせっかく産まれたオラ達の子じゃねぇだべか! こんな可愛い子を捨てるなんてあんまりじゃないか…」


 「だども、こんな何も持ってねぇこんな体のその日暮らしのオラ達に育てられたってこの子が幸せになれるわけがねぇ! ならまだ物心つく前に死なせてやった方がまだいいべさ」


 「…(ヤバくね?)」


 転生初日から軽く、というか結構()んでる感がある会話に焦るミヤビ、逃げ出そうにも満足に動けない身体なのでそれも出来ない。


 「(下の下の平民スタートってこんな崖っぷちなの!?)」


 確かに下は下でも平民スタートなら貧乏ながらもなんとか育ててもらえるとは思うのだが、いきなり死亡フラグがビンビンに立つとは誰が予想出来るだろうか、これならまだ奴隷(どれい)スタートの方がマシじゃないかとミヤビは思う。


 「こんな赤ん坊じゃ奴隷商人(どれいしょうにん)にも買ってもらえねぇべ、だからこの子は(あきら)めれ、オラ達も自分の明日を心配しなきゃなんねぇんだ、分かってくれ《メルカ》」


 「…分かったよ《アルバ》、こんな《呪い》にかかっちまった夫婦に育てられちゃこの子も不幸になっちまうさね、ただ今日だけは一緒にいさせてくれないかい? 1日だけでも、母親をやらせておくれ」


 「そうさな…、オラも今日だけは父親でいるべさ」


 産まれたばかりの赤ん坊を捨てるのだから何か事情はあるんだろうと思っていたミヤビは親であろう夫婦を近眼の人がやるみたいに(まぶた)を細くして注意深く凝視(ぎょうし)する、するとさっきまであまり見えなかった周りが少しハッキリと見えるようになった。

 そのまま2人の容姿を観察すると、声からは想像出来ないほどに老いていた。

 まさかの超高齢出産!? とビックリしたが先程の会話に《呪い》と出てきた事から、おそらくこの姿が呪いによって引き起こされたのだろとミヤビは考える。


 「…(にしてもどうするか、かなり詰んでね?)」


 かなりというか、もう詰みである。

 何かに呪われ、姿が老人になった夫婦に、満足に喋れも動かせもしない身体、そして捨てられる流れ、こんな状況なんて神の奇跡でもないと詰みである。

 そんなミヤビも両親も重苦しい思考に染まった空間に、突然(まばゆ)い光が現れた。


 「な、なんだべこの光は!?」


 「あんた! なんだべこれは!」


 「…(!?)」


 やがてその光が徐々になくなり、ビックリする夫婦とミヤビがその光のあった方を見てみるとそこにはザ•清楚(せいそ)とでも言うような美しい女性が立っていた。


 「ふぅ、ハイ! そこの2人正座」


 「「はっ?」」


 「はっ? じゃねぇんだよ! 正座あぁぁ!!」


 いきなりブチギレモードのその女性がそう叫んだ瞬間、ミヤビは今まで感じた事の無い見えない圧に息が止まる、おそらく夫婦も今まで感じた事の無い圧に即座に正座する。


 「黙って聞いてれば捨てるだの諦めるだのクソ暗い話してんじゃねぇよ! ったく、なんでこんな事になってんだよ、レティの奴まさかミスったんじゃねぇだろな? 次あったら思いっきりビンタだ!」

 

 あ、ビンタは二発ほど思いっきりしときましたハイ。


 「オマエ合格! だが後で俺も()る」


 「あ、あの、誰と話てるだか?」


 「あぁ? 気にすんじゃねぇよこっちの話だ」


 「は、はい」


 メルカはめっちゃ美人なのに口の悪そうな女性に恐る恐る聞いてみるが一瞬で黙らされる。


 「おっと、忘れてた」


 パチン!


 「ぶはっ! ハァハァハァ」


 「ハハハ、俺の圧で死ななかった根性は褒めてやる」


 女性が指を鳴らすとミヤビだけが圧から解放されやっと呼吸を再開させる。


 「(なにが褒めてやるだ! ガチでもうちょい遅かったら死んでたぞ! なんだこの女? やべぇどころじゃねえぞ)」


 呼吸を落ち着かせたミヤビは、心の中でそう悪態(あくたい)をつく。


 「悪かったって、これから助けてやんだから機嫌(きげん)直せよ」


 「(!? 考えが読まれてる?)」


 「あぁ、読めるぞ? 後オマエがさっきから胸ばっか見てるのも分かってるから、童貞(どうてい)くん?」


 「(ど、童貞じゃねぇし)」


 「いや、どうみても童貞だろ…」


 産まれた日に童貞じゃないとか色欲(しきよく)権化(ごんげ)を通り越して化け物である、反射で答えてしまったミヤビは恥ずかしさで顔を赤くする。


 「んなことはどうでもいいとして、おまえら何に呪いを受けた?」


 女性はミヤビから視線を夫婦に移し質問をする。


 「分からねぇんだ、事情は言えねぇんだがオラ達人里(ひとざと)から離れてこの《エルブの森》で、夫婦で街の冒険者みたいに狩りをしながら暮らしてたんだが、メルカがこの子を身籠(みごも)ってからは、オラ1人で狩りをしてたんだ、昨日もこの子がもう産まれそうで、でもなかなか産まれないから、2人とも疲れて寝ちまった、んで起きたらこの子は産まれてて、オラ達はこんな姿になっちまってたんだ」


 「意味が分からなかった、起きたら産んだ覚えが無いのにお腹から子供が居なくなってて、自分の体は老人になっちまって、こんな姿じゃこの子を満足に育てられもしないから、…やっぱりアタシ達は幸せになっちゃいけないんだよアルバ」


 「そんな事言うんでねぇ! オマエだけは何があっても幸せにするって(ちか)ったんだ!」


 「アンタ…」


 「あぁ〜、盛り上がってるとこ悪いんだが、オマエら呪われてまともな精神状況(せいしんじょうきょう)じゃなくなってるからな? 普通、寝て起きて勝手に子供産まれて自身が老人になってたら発狂(はっきょう)モンだからな?」


 確かにそうである、ミヤビも話を聞いてる中で夫婦が妙に冷静というか起きた出来事に納得し過ぎな気がしていた。


 「…(たしかにおかしい、ってか産まれたばっかの赤ん坊を捨てるか? 体が老いたとしても自分の子をそれだけの理由で捨てるだなんて普通しないよな?)」


 「そういう事だ、…ったく面倒くさい事この上ねぇ状況じゃねぇか、おい! オマエら最近変わった奴に会わなかったか?」


 頭を痛そうに手で押さえながら女性は夫婦に質問をする。


 「最近…、あ! 変な男が居ただよ! ちょっと前に街に出向いた時に急に声を掛けられて、もうすぐ産まれる赤ん坊を(ゆず)ってくれませんか? って、意味が分からねぇし、そん時はオラ1人なのに何でウチに子供が産まれるって知ってんのかも気味が悪かったし、マトモに相手したくなかったから断って逃げてきたんだ」


 「はぁ…、そいつってこんな奴か?」


 アルバの話を聞いた女性は、どこからか紙を取り出し、そこに(えが)かれた人物を見せる。


 「この男だべ! なんでアンタが知ってんだ?」


 「あぁーもー面倒くせぇ! なっんで初っ端(しょっぱな)からコイツに目ぇ付けられてんだよ!? ってかなんで知ってんだコイツ? どこで情報得てんだよ!?」


 アルバの見た男が、自分が知る男だと分かった瞬間、物凄く嫌そうな顔で女性は叫ぶ。


 「(なんだ? そんなやべぇヤツなのか? 助けてくれるって言ってたけど、まだ詰んでる感じ?)」


 女性のあまりにも嫌そうな態度にミヤビもいったいどんなヤバい奴なのかと、先程ヤバい女認定した女性に届くように心の中で聞いてみる。


 「やべぇよ、オマエのここに来た目的思い出してみろ」


 「(えっと、たしか自由に生きてみて死んだ時にこの世界が《存続》か《滅亡》か選ぶだっけ?)」


 「正解だ、んで過去にも何回もそういう奴らを定期的に送ってんのも知ってるな?」


 「(なんかそんな事あの女神が言ってたと思う)」


 「オマエの今の親に話かけて来た奴はな、その1番初めに送り込んだ奴なんだよ」


 「(は? 定期的にって毎年送ってる感じなの?)」


 女性の話ぶりからミヤビは1番初めに送られて来た人と聞いて、単純にここ何年、ちょっと多くても数十年ぐらいなんだと思って聞いてみる。


 「んなわけねぇだろ! アイツをこの世界に送ったのは今から1000年前なんだよ、そこから普通の人間族なはずのアイツは何故か死なずにまだ生きてんだよ、しかも自分の後に送られて来た転生者と転移者の能力を持ってな」


 「(え? それってチート過ぎません?)」 


 そう思ったミヤビは先程のアルバの話からもしかして自分が狙われてるかもしれないと思い背中に冷たいモノを感じた。

この女性の正体は誰なんだ!?(白目)

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