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選定者による異世界革命  作者: P〜ちゃん
第一章 迷走編
25/29

24 肩書き

前話のあらすじ


 セバスの盛ったクスリの影響か、それとも何度も何度も死に瀕した影響か、ミヤビは見下した態度でテトと戦い出す。

 そのミヤビに対して、テトは必死とは言わないまでもなんとか彼の攻撃をしのいで行く。

 その中で、ミヤビがセバスによって〝人体実験〟のような事をされていると勘違いしたテトは、自身の〝命〟をも賭けてミヤビとセバスを殺すと決める。

 そして本気になったテトの詠唱が始まった……。

 「こうなったらもう俺様自身でさえ止めれねぇからな」


 詠唱によって起こった暴風が収まると、その中心にいたテトは先程までとは別人のような雰囲気を纏っていた。

 いや、見習いとはいえまがりなりにも《神》なのだから〝別神〟と言ったほうがいいのだろうか……。

 その姿は先程までのチャラそうな雰囲気とは打って変わり、女神田中やこの《天獄》で会った《デイズ》よりはかなり(おと)るが、神々しさを持った白銀の鎧を纏った姿になっていた。


 「ゲームじゃ第二形態のボスって大抵ブサイクな見た目になるんだけどアンタは違うんだね、そっちの方がカッコイイじゃん」


 そのテトの変わった雰囲気を見てもあまり動じていないミヤビ。


 「ゲームと一緒にしてんじゃねぇよ、舐めてると〝こうなる〟ぞ?」


 ブシュゥ!


 「えっ?」


 「ハハ、〝隙有りぃ〟だったっけ?」


 「くっ」


 自身の変わった姿に驚きもしないミヤビに対して、テトはお返しとばかりに先程やられた事をそっくりやり返した。

 テトの手にはミヤビの〝右腕〟が握られており、その腕を見たミヤビはムッとした顔で悔しそうな声を出す。


 「お、やっと《人》っぽい表情になったな、さっきまでの気味悪い余裕の顔はムカついてたからな、そっちの方が子供らしくていいじゃねぇか」


 「アンタは大人気(おとなげ)ないけどね……」


 「言ったろ? 俺様の〝命〟をかけてでもお前らを殺すって、悪りぃがここからは反撃さえ許さねぇよ!」


 ゴッ!


 「ガッ」


 その言葉を言い切る瞬間にテトはミヤビの反応速度より速く彼の後ろに移動し、背中に全力の拳を叩き込む。

 その速度に反応出来ないミヤビは避ける事さえ出来ないままその拳に吹き飛ばされ地面を水切りの石のように跳ねながら転がっていく。


 「おー、よく跳んだなぁ」


 「ぐぅ……カハッ、なん……だ……その……速さ」


 吹き飛ばされたミヤビの前まで瞬時に移動したテトは彼の前で余裕たっぷりにそう言い、初めてセバス以外に大きなダメージを負わされたミヤビは先程までの余裕は消え、動揺した様子でテトに聞き返す。


 「これが俺様の本気だよ、ガキが大人を舐めると痛い目みるんだぜ?」


 「ふん、これぐらい……セバスの攻撃に比べたら弱いんだよ」


 ミヤビはそう言いながら片腕がまだ再生してないせいかゆっくり起き上がり、テトを(にら)みつける。


 「あっそ、まぁ俺様の本気が分かったところで、ここからは〝死ぬまで〟止まらねぇからな、女神の加護で多少はダメージを軽減出来てるみてぇだが、次からはそれさえ無意味だからな」


 「全然実感がない加護なんて有っても無くても変わんないよ」


 「それはどうだろうな、〝我を(さえぎ)る障害に、今この刻ばかりの安息を〟《インスタント•イレース》」


 パリンッ!


 セバスとの修行の日から女神の加護の恩恵をほとんど感じていなかったミヤビがそう言うと、テトは短時間だけミヤビの加護を消す詠唱を唱え、その加護を無効化した。


 「うわ!」


 自分の目の前で加護による見えない障壁がガラスが割れるように粉々に砕ける様子に驚くミヤビ。


 「んじゃ、こっからは楽しい時間の始まりだ! 避けれるもんなら避けてみろよ!」


 「えっ」


 ゴッ!


 「ガハッ」


 その言葉の瞬間、ミヤビが気づいた時には、真正面から顔面を殴られていた。


 「どこまで耐えれっかなぁ!」


 ドムッ!


 「ふぐっ!」


 ゴッ!


 「ハガッ」


 バン!


 「おごっ!」


 ゴキッ!


 「アァァァァ!」


 避ける暇さえ無いテトの攻撃のラッシュになす術もなくただ殴られ続けるミヤビ。

 顔、腹、背中、脚の骨など、テトの攻撃によってミヤビの体に次々に普通なら死ぬ程の傷がついていく……。


 「どうだ? 加護が無くなっても変わんないか?」


 「いたい、痛い痛い痛い!」


 防御をする事さえ出来ない止まらないテトの攻撃に、加護を失ったミヤビは初めて知る〝本当の痛み〟にただただその痛みを受け入れる事しか出来なかった。


 そう、〝初めて〟なのだこんな痛みは……。


 セバスも分かっていたが、それは彼の優しさか、或いは自身が愉しむ為に黙っていたのか……。


 修行の時から、いや、加護を与えられた時から、ミヤビは〝痛み〟に対する認識が他の者とは違うかった。


 それは女神田中がミヤビを想っての事だったが、その想いが今この瞬間に全て裏目に出た。


 今まで加護のおかげで、あくまで他と比べて〝痛み〟に対して鈍い感覚を持っていたミヤビ。


 まぁセバスから身体を切り刻まれたりはしていたが、その時でも何故か〝心〟が壊れる事が無かったのは、他者より痛みの耐性があったからだった。


 その耐性が無くなった今、初めて襲いくる〝痛み〟の連打に、修行を始めてから折れる事の無かったミヤビの〝心〟が折れかけていた。


 それはテトに負けると言うよりは、セバスとの勝負に負ける事を意味していたが、ただただ痛みに耐えているミヤビにはそんな事を考える余裕はなかった。


 そして幸か不幸か、この《天獄》のシステムによって肉体が回復していくミヤビにとっては永遠とも言える長い時間、実際の時間としては1時間ほど、テトの攻撃は続いた……。





 「はぁはぁはぁ、これだけやればもう回復さえ出来ねぇだろ、ガキにここまでするなんて胸糞悪りぃが……」


 「……」


 そう言うテトの前には四肢をもがれ、肉塊と言われてもおかしくない程に変わり果てたミヤビが横たわっていた。


 「おいジジィ!」


 「なんでしょう?」


 「その余裕が腹立つが、次はオマエだ! 構えろよ」


 「ほっほ、そんなにワガハイと闘いたければいいでしょう、……やはり〝凡人〟はどれだけ鍛えてもこの程度という事が分かりましたしね」


 そう言ってセバスは、落胆した表情で意識の無いミヤビに視線を送り、テトに向き直る。


 「自分の鍛えた弟子に言う事がそれだけか……」


 「まぁ少しばかりの〝暇つぶし〟にはなりましたよ? あぁそうそう、ミヤビ殿と勝負してまして、ワガハイが勝ったのでこの後あの獣人メイドを殺しに行かなければならないので、闘うなら早めにサクッと終わらせたいのですが」


 「なんの勝負だよ」


 セバスの言葉に呆れたようにテトがそう言うが、彼は全く気にもしない様に自身のこの後の予定を並べ始めるが、セバスとミヤビの勝負の内容を知らないテトは気になりセバスにそう質問した。


 「いやぁ、ただの遊びの延長ですよ? ワガハイとミヤビ殿が戦い続けて、ワガハイが飽きるのが先か、ミヤビ殿の心が折れるのが先かという勝負です、ミヤビ殿が負けたら彼が大切にしているあの獣人メイドを痛ぶって殺す約束なんです」


 「心底クズじゃねぇかこのジジィ……」


 その質問に楽しそうに説明するセバスを見て、テトはミヤビの胸中を思い浮かべて吐き気を(もよお)す。

 きっと、愛する人を守る為に幼いながらも必死でこの5年もの間を耐えて来たのだろうと……、そしてその想いを自分が潰してしまったと感じ、目の前のセバスに対してテトは、ミヤビの想いの分も背負って戦う覚悟を決める。


 ……まぁ実際は、ミヤビ自身もただ強くなりたいだけだったのだが。


 少し思い違いが激しいテトは、勝手に想像したミヤビの想いを胸に、セバスと向き合う。


 「まぁワガハイの生なんてモノはただの暇つぶしですので……、なんと言われても何も感じないですよ?」


 「ミヤビの純粋な想いを踏み(にじ)ったオマエは絶対許さねぇ!」


 純粋かどうかはさておき、ミヤビをボロ雑巾みたいに踏み躙ったテト本人は、そう言って勘違いしたままセバスに怒りを向ける。


 「許してもらわなくても大丈夫ですよ、それよりいいんですか? ワガハイを殺せば〝アナタ方〟に協力するという話は無かった事になりますが」


 「オマエみたいなクズを仲間に引き入れる程困っちゃいねぇよ」


 「なるほど、……では始めますか」


 セバスの言葉にテトは怒りの表情のままそう返す。

 そして、2人が今にも激突しそうな瞬間……。


 ヴゥン!


 一瞬にして重くなる空気、そして、得体の知れない重圧にテトはその気配の方向に一瞬にして警戒態勢をとり、慣れているセバスはこれから始まる戦いを邪魔された事に舌打ちをこぼしていた。


 ゴゴゴ!

 ガチャ!


 2人から少し離れた場所の地面から扉が現れ、中からはセバスには見慣れた存在が扉を開けて出て来た。


 「……ふむ、どうやらまた何か楽しそうな事をしておるみたいだな《星喰い》よ」


 「アナタ余程暇なんですねぇ、ほんとちょくちょく〝ここ〟へ顔出すのなんなんですか!?」


 扉から出てくるなり、状況を見回したデイズはそう言い、セバスはそれに対してイラつきながらそう返す。


 「フッ、今回はちゃんと用があって来たのだがな……」


 ミヤビとセバスの《天獄》での5年の期間の内、デイズは暇を持て余した老人のごとく、度々2人の前に現れては少し話して帰るという事を繰り返していた。

 あまりにもちょくちょく顔を出すものだから、ミヤビに至っては感覚的には近所のお爺ちゃん的なポジションになっていて、デイズもいつの間にかそれを受け入れていた。

 その事もあってか、セバスに突っ込まれたデイズは、少しションボリした様子でそう言葉にした。


 「……はぁ、なんですか用って? しょうもない用事ならお断りしますよ?」


 「〝仕事〟だ」


 「っ!?」


 デイズのそのひと言で、セバスの眼に力が入る。


 「な、な、なんで?」


 「……おい、よく見ればミヤビでは無いではないか、また関係の無い者を招き入れたのか? ……ミヤビはどこにいる?」


 デイズを震えた指で差しながら、混乱しているテトを見てデイズはそこにいるのがミヤビではないことに今更ながら気づき、セバスに〝またか〟という表情でミヤビの所在を聞く。


 「あぁ、そこに居ますよ?」


 「おいジジィ! なんで〝あの方〟がここに居るんだよ!?」


 「……おい、まさか〝コレ〟がミヤビとか言わんだろうな?」


 「あの、いきなり両方から質問しないでくれます?」


 焦った様子のテトと、驚いているデイズの両方に同時に質問されたセバスは面倒くさそうにそう返す。


 「貴様は黙っていろ! 《星喰い》、〝コレ〟はどういう事だ?」


 「ヒッ」


 デイズの圧にテトは情けない声を上げ、後退りをする。


 「どうもこうも、そこの《見習い神》と戦わせた結果そうなっただけですが?」


 「なに? そこに居るのが《神》だと? ……貴様、何処の所属だ?」


 「は、ハイ! 【軍神 《アレス》様の末席に加えさせて頂いている《見習い神•テト》】と申します!」


 「あぁあの《戦バカ》の……、その雑多な見習いが何故(なにゆえ)《人》と戦うのだ?」


 「そ、それは」


 「早く答えんか!」


 セバスの言葉を聞いたデイズはテトに視線を向け、おそらく《神》に属する者達が自身の身分を証明出来る所属を聞く。

 テトの所属を聞いたデイズはつまらなさそうにそう言い、何故ミヤビと戦ったのかを問いただす。

 聞かれたテトは答えづらそうに言い淀むが、それを見たデイズは声に圧力を乗せて答えを急かす。


 「あのー」


 「邪魔をするな《星喰い》、今の我は機嫌が悪い」


 「いやまぁそれは見れば分かるんですがね、ちょっとした疑問を解消したくて」


 「なんだ?」


 「あの子なんであんなにアナタにビビってるんです?」


 「おいジジィ! なに気安く話してんだ!」


 「いや、いつもこうですが……」


 「その方はな! 【天界12騎士団第一騎士団長《不動のデイズ》】様だぞ! オマエみたいな奴が気軽に話しかけていいお方じゃねぇんだぞ!」


 「へ、へぇー」


 疑問を投げかけたセバスは初めて知ったデイズの肩書きに、キョトンとした顔でそう一言声を漏らし、《不動》の名を冠する割にちょくちょく遊びに来てるよな? と考えていた……。

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