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選定者による異世界革命  作者: P〜ちゃん
第一章 迷走編
24/29

23 お子ちゃま

前話のあらすじ


 〝こちら側〟の全てを知られてると思ったテトは、断る選択肢も無く、簡単に勝てる戦いなのだからとセバスの提案を受け入れる。

 そのやり取りを聞いていたミヤビはセバスに怒りながら詰め寄るが、逆に彼に諭されてしまう。

 そしてやる気になったミヤビがテトと対峙し、いざ戦闘が始まるが、ミヤビが本気の全力で撃とうとした一撃の余りの出鱈目さにテトは思わず静止する。

 だが一度発動したスキルを止める術を知らないミヤビはそのまま一撃を放ってしまう……。

 「っっっぶねぇ!」



 テトは知らなかった、知るはずもない。



 「うへぇー、初めて思いっ切り撃ったけど想像よりすげぇや」



 いや、今これを見ている読者さえ知りえないだろう……。



 「初めての全力でアレかよ! ってかオマエのその《人》では有り得ない〝魔力〟はなんなんだよ!?」



 《人》は何回も何回も死を経験した場合、精神(中身)は壊れないのだろうかと。



 「なんなんだって言われてもなー、修行の成果?」



  一見(いっけん)して、ミヤビの行動におかしな所は無い。



 「《人》がたった数年鍛えたぐらいで増える魔力量じゃねぇんだよそれは!」



 むしろ、テトの静止に思わず応じてしまうぐらいには〝普通〟の《人》としての感覚は持ち得るのだろう。



 「うーん……あ! アレじゃね? 死の淵から治ったら前より強くなるマンガ的な感じ? ……ってか思いっ切り撃ったからか分かんないけど身体が熱い……」



 だが、少しずつ、確実に異変が(しょう)じ始める。



 「そらあんな燃費悪そうなクソデカ魔力使って撃ったら疲れもすんだろ」



 それはセバスが企んで摂取させた〝毒〟か?



 「いや……、魔力切れとかの感じじゃないんだよなぁ、なんかこう……身体の奥にある〝何か〟が今にも破裂しそうな感じ?」



 それとも数え切れない程の死を経験した異常性からか?



 「おいおい、急に身体が爆散するとかいうオチとかやめてくれ


 パァンッ!!

 ビチャ!


 よ? ……はぁぁぁぁ!?」



 ともあれ、ここからミヤビの〝異常〟がその小さな体の内側から見え始める。





 「お、おいジジィ!」


 目の前で起こった出来事に、テトは思わず離れて2人の戦いを見ていたセバスに動揺しながら声をかける。


 「なーんですかなぁー?」


 呼ばれたセバスは2人から離れているせいか、山で叫ぶみたいなわざとらしい大声でテトの声に応じる。


 「い、いや、は、はれ」


 「ん? 晴れ? いやココは天気とかは関係ないですぞ?」


 「じゃなくて! アイツ破裂したぞ!?」


 「ええ、そうですね」


 「『そうですね』じゃねぇよ!」


 テトは目の前でミヤビの体が爆散した事に驚きを隠せずセバスに聞いたのだが、返ってきたのはその事に何も動じていないセバスの言葉だった。


 「まぁ、長く生きてると爆発する《人》ぐらいいるでしょう、うん」


 「何1人で納得してんだよ! ってか弟子が死んじまったんだぞ! なんとも思わねえのかよ!」


 「なんとも思わない事はないですが……、とりあえずそのお顔に付いた〝お肉〟を拭いてはどうです?」


 「は?」


 まるで普通の事だと言うようなセバスの冷静な言葉に、テトは敵ではあるのだがミヤビを心配するようにそう叫ぶ。

 だが、セバスは〝そんな事より〟とでも言いたげに、テトの顔に付いた〝ミヤビだったモノ〟を拭くようにハンカチを布とは思えない速度でテトに投げてそう声をかける。

 それを聞いたテトは左手でハンカチを受け取り、剣を持った右手で自分の顔を触り、手に付いた少し大きめな〝肉片〟を見て顔を(しか)めた。


 「早く拭かないとお洋服にシミが残ってしまいますよ?」


 「シミとかどうでもいいんだよ!」


 「〝シミ〟を笑う者は〝シミ〟に泣くのですぞ!」


 「っだぁーもう! 会話にならねぇ! ……クソッ! …………アイツが死んだから俺様の勝ちで良いんだな? ……胸糞悪りぃ勝ち方だが〝勝ち〟は〝勝ち〟だよな?」


 セバスの言葉に、まともな会話が出来ないと思ったテトはセバスとの言葉のやり取りを諦め、勝負の決着を確認する。


 「はぁ? まだ〝終わって〟いませんが?」


 「いや、どう見ても終わってるだろ! 見ろよこの状況! これで終わりだろどう考えても」


 「……その〝肉片〟、早く捨てたほうが宜しいですよ?」


 「は? 肉片? 〝これ〟がなんだって〝アツッ!!〟」


 とぼけたようなセバスのその言葉に、ミヤビが先程まで居た場所を指してそう言うテト。

 だが、セバスはテトが顔から拭き取った〝肉片〟を捨てるように促す。

 言われたテトは手に取った肉片に目をやりながらセバスに言葉を返そうとした瞬間、手に強烈な〝(ねつ)〟を感じ、その肉片を剣ごと手放した。


 「今からまだ〝終わっていない〟事が分かりますから少しお待ちを」


 「……なんだってんだよ」


 セバスがそう言うと、爆発で飛び散った〝ミヤビだったモノ〟がひとりでに動き出し、先程までミヤビが居た場所に集まってきた。

 それは次第に、互いにくっ付いて徐々に(かたまり)になり、みるみる内に《人》のカタチを成していく。


 「ここまで粉々になるとさすがに〝時間〟がかかりますなぁ」


 「おいおいおい、まさか! どうなってんだよ!」


 その〝肉の(かたまり)〟は気付けばミヤビの見た目を形作り、服以外は先程までそこに居たミヤビが再生成されていた。


 「おっと、流石に裸では格好が付きませんな」


 パチン!


 「……嘘だろ」


 裸で立ったまま再生されたミヤビに、セバスは指を鳴らして瞬時に服を着させる。

 ミヤビが再生された事に驚き過ぎてテトは、セバスの謎な便利スキルをスルーした。


 「……おっと危ねぇ、……オレ、やっちゃった?」


 「えぇ、ですがまぁ、〝ここ〟なら問題ないかと」


 「そっか、服サンキューなセバス、……じゃ、改めて再開しよっか?」


 「いやいやいや、何普通にしてんの? 俺様がオカシイのこれ?」


 セバスが服を着せた瞬間に目覚めたミヤビは、少しよろけながらセバスにそう聞き、返ってきたその言葉に服の感謝をしつつ、テトの方へ向き直り戦闘を再開しようとする。

 混乱するテトを置き去りにして……。


 「さぁね、知りたきゃオレに勝ってみなよ」


 「くっ」


 少しドヤ顔で、先程自分が言ったセリフを真似して煽るように吐かれたその言葉に、テトは混乱する頭の状況を一旦置いておいてミヤビの方へ向いて構える。


 「いやぁ、初めてセバス以外と戦うもんだからなんか興奮しちゃってさ……、ほら見てよ……鼻血出てきた」


 「おいガキ、オマエなんか変な薬でも〝ヤ〟ってんのか?」


 「いやぁ? クスリらんれひゃってらいよーう?」


 再生されてすぐは〝まとも〟だったミヤビの顔が、まるで酒にでも酔ったみたいに紅くなり、呂律(ろれつ)も回らなくなったその様子に、テトは言い様の無い不快感を覚えていた。


 《魔》の者が住む《ノスコンティ》の辺境で薬物による兵士の強化を研究している場所がある事を知っていたテトは、目の前にいるミヤビがセバスによって〝それ〟と似たような実験を施されているのではと考えたからだ。


 あの研究所の噂は酷いモノで、ある者は四肢を切り落とされ別の魔物の手足をツギハギされただの、ある者は首から下を魔物のモノとくっ付けられただの、またある者は様々な薬品によって死なない身体を手に入れる実験など、〝黒い噂〟が絶えないところだった。


 その噂と、先程ミヤビから聞いたセバスからされていた数々のミヤビへの仕打ち、テトにはセバスがミヤビを使って実験しているのではと考えた。


 「ハハ、そらそんな実験してりゃぁ自分の弟子の事〝作品〟だなんて言うよなぁ……、おいジジィ」


 「なんでしょう?」


 「俺様はこの世界に嫌われてるハブリシンの旦那に味方してるがなぁ、こういった〝命〟を(もてあそ)(やから)は大っ嫌いなんだよ」


 「左様で」


 「ケッ、すました顔しやがって、もう〝こう〟なった奴は助からねぇらしいからな……、コイツ殺したら次はオマエ殺すからそこで待ってろ、差し違えてでも殺してやるよ」


 「それはそれは、楽しみですな」


 それはテトの《神》としての元からの正義感からなのか、それとも彼の過去に起こった何かなのかは分からないが、目の前の様子が可笑(おか)しいミヤビがセバスによる実験のせいだと〝盛大〟に〝勘違い〟したテトの逆鱗に触れ、彼を激怒させた。

 まぁあながち間違いでは無いのだが……。


 「まずはオマエからだな、せめて痛みが無いようにすぐに……、ん?」


 「話し長いよー、それもアンタの言う戦いの躾とかいうやつ?」


 「おい、それ」


 ブシュゥ!

 ポタポタポタ……


 セバスへ怒りの啖呵(たんか)を切った後に、ミヤビの方へ向き直りそう言って一気に戦いを終わらせようとしたテトは、体の一部分に違和感を覚えその部分を確認すると、あるはずの左腕が肩から無くなっており、先程まで〝そこ〟に居たはずのミヤビの声が自分の後ろから聞こえ振り向くと、見覚えのある〝誰か〟の腕を持ったミヤビがそこに居た。


 「隙アリぃってね」


 「ぐっ……、〝欲しいモノはすぐそこだ、さぁ誰が1番速く上手く取れる〟《アトラクト》、〝癒しの神パナケアよ、この身に大いなる貴方の愛を〟《オール•エクス•ヒール》」


 すぐさま失った自身の腕を引き寄せの精霊魔法でミヤビの元から取り戻し、《神》の恩恵による治癒で取り戻した左腕をくっ付けて治すテト。


 「おー、やっぱ《神》って凄いね! でもそれぐらいならオレも出来るよ? ……ほら!」


 シュパッ!

 ボトッ


 「なっ?」


 「んでこれをくっ付けてっと」


 シュゥゥゥ


 テトの再生のチカラを見たミヤビは、自分にも出来ると自ら手刀で左腕を切り落とし、地面に落ちた〝それ〟を拾って切り落とした切り口を揃えると、お湯が沸騰するようにミヤビの切り落とした腕と傷口の血液がブクブクと泡立ち、みるみる内に繋がっていく。


 「……これはすぐにどうこう出来る相手じゃねぇな」


 「ハハ! いつもセバスには一撃も当てられないから戦いってつまんなかったけど、〝当たる〟と面白いんだね!」


 「無邪気な顔して……目がイッてんじゃねぇか」


 「じゃぁイックよー」


 ヒュン!


 「くっ!」


 いつの間にか呂律が元に戻っていたが、少しずつ、様子がおかしくなっていくミヤビのその言葉を皮切りに、彼が破裂する前に感じたスピードよりも明らかに数段上がっている攻撃の速度に、テトは〝必死〟とは言わないまでも辛うじで避けていく。


 「さすが《神》!」


 「っ! 調子に……乗んなよ!」


 やられてばかりではいられないテトは、ミヤビの攻撃の隙を狙って確実に相手の命を絶てるような眼球や首、心臓の辺りを中心に狙って次々に反撃するが、〝避ける〟事に特化したミヤビに軽々と避けられてしまう。


 その攻防は数十分程続き、苦し紛れに蹴り込んだテトの一撃がミヤビの腹に当たり、衝撃を逃す為に大袈裟にミヤビが吹き飛んだ事で、お互いの距離が離れて止まった


 「〝なぁーんだ、こんなもんなんだ〟、セバスの言った通りだ、なんであんなにビビッてたんだろ?」


 テトの本気の攻撃を軽々と避けるミヤビは、セバスとの会話を思い出し、本当に言った通りだなと改めて彼のアドバイスを噛み締める。


 「ずいぶん……舐めた口聞くじゃねぇか」


 「そりゃぁね、アンタの攻撃さ、セバスに比べたら〝大人〟と〝子供〟ぐらいのスピード差があるんだもん」


 「ハハ……、アレに比べられたら仕方ねぇか、だが最後は当たったぞ?」


 ミヤビの見下した態度にテトはそう言って返す。

 ミヤビがどれだけの戦闘経験を積んだのかは知らないが、テトもこれまで数々の経験をしてきたのだ、そんな彼がミヤビとの戦いの中で相手の癖やパターンを見抜くのは必然だった。

 だが……。


 「もうだいたい〝分かった〟から大丈夫だよ? オレが負ける事は無いって分かったから」


 テトの言葉を聞いてもミヤビは至って冷静にそう返す。


 「ちょっと戦ったぐらいで分かったつもりなんてとんだお子ちゃまだな」


 「まぁまだ10歳だからね、でもアンタはこれからその〝お子ちゃま〟に負けるんだよ?」


 「へっ、ホント、ジジィにしろオマエにしろ、俺様を舐めるのもいい加減にしろよ?」


 「いいよそう言うのは、今のが全力なんでしょ? 強がんなくていいから」


 「ハハハハ! ちょっと偵察に来たつもりだったがもういい、オマエとあのジジィは今完璧に俺様の〝敵〟だ、それも〝命〟をかける程のな」


 ミヤビは、テトの言葉がただの負け惜しみにしか聞こえず見下した態度を崩さない、その態度にテトの(まと)っている雰囲気が変わり、彼の身体の周りが淡い金色に輝きだした。


 「おぉー、もしかして第二形態ってヤツ?」


 「だったら倒してみろよ《勇者》になれんぞ? 〝集え精霊よ、この身に宿りてその力を暴れさせよ〟《バースト》、〝全てを統べし《ゼウス》よ、この身朽ち果てしその刹那まで貴方の惜しみない愛を〟《デスパレーション》」


 「ほう……、〝最高位〟の神のチカラをただの見習いが借り受けると……、面白いですねぇ」


 セバスのその感想は、テトの詠唱によって周囲に発生した暴風とも言える風の音でかき消えた。

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