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選定者による異世界革命  作者: P〜ちゃん
第一章 迷走編
14/29

13 掃き溜め

前話のあらすじ


 自室にこもるミヤビにティバニアは入り口を破壊して説教を開始する。

 その爆音に気付いたセバスとテト。

 またかと嘆くセバスをスルーして、テトがアンナの意識が戻った事を伝える。

 すぐさまアンナの部屋に向かったミヤビは、そこでアンナに元気付けられる。

 その興奮のままにセバスに強くなる秘訣を聞こうとするが、その瞬間セバスの手がミヤビの心臓を貫いた。

 痛みにもがくミヤビがセバスに引きづられて行った場所とは……。

 「あそこに戻るのも久しぶりですねぇ」


 セバスの突然の行動に訳がわからず引きづられ、薄れゆく意識の中、聞こえて来たのはそんな言葉だった。


 


 (……ここは?)


 久しぶりのこの感覚……、この世界に来てから何回目かの沈んだ意識からの覚醒。


 「おや、気付きましたかな?」


 「セバス? おい! ここはど……くっ」


 意識を取り戻したオレは、セバスの言葉に横たわっていた体を起こしながら反射的に返したが、その途中で胸に走る激痛に(うめ)く。


 「まだ完全に傷が塞がっていませんので安静にしておいた方がいいですよ」


 「ふぐっ、はぁはぁ」


 どの口が言ってんだ!? と文句を言いたいのに胸の奥からズキズキとした痛みが絶え間なく襲ってきてそれどこれではない。


 「ここはワテクシ……いや、()()()()のホームみたいな場所ですな」


 わざとらしく、芝居がかった素振(そぶ)りで両手を広げながらセバスはオレに向かって今いる場所を紹介する。


 (くっ……痛てぇ、言ってる事も意味が分からねぇし、どうなってんだ)


 「まだ痛むみたいですねぇ、……早めに痛みには慣れた方がよろしいですよ? じゃないとこの後持ちませんよ?」


 「ど……いう……ふぐっ……ことだ……よ」


 (ダメだ、痛みでまともに考えれねぇし喋れねぇ)


 「どういう事も何も強くなりたいんですよね? それならばこの場所は最適ですよ! なにせこのワガハイを唯一()らえた場所なんですから」


 そう言ってセバスはまた大げさな手振りでオレにこの場所を見るように促す。


 「いみ……わかん……ねぇ……」


 「……ほんとに凡人中の凡人ですねアナタ、はぁ……、とりあえずその痛みに慣れるところからがよろしいでしょう」


 ドンッ!


 「おぐっ!?」


 セバスはそう言い終わった瞬間、痛みでまともに動けないオレの腹に蹴りを入れてきた。


 「おー、結構飛びましたな」


 胸の痛みを堪えてる最中に加えられたさらなる痛み、自分の体が飛ぶほどの蹴りを打ち込まれ、地面に打ちつけられた衝撃でオレの意識はまた沈む。





 「……ふぐ、ゲホッゲホッ」


 「おはようございます、いい目覚めですな」


 再び意識を取り戻したオレにセバスが嫌味混じりにそう言ってくる。


 「なん……なんだよ……なにしてんだよ!?」


 「ふむ……、少し前進しましたか、でもまだですね!」

 

 ドゴッ!


 「おぶっ!」


 オレの様子を見てそう言いながら、セバスはまた腹に蹴りを入れてきた。

 前回と同様に軽く吹っ飛ぶオレはまた地面に打ちつけられた衝撃で意識を失う。





 そんな状況が続き、もう何回目かさえ分からなくなり、次に目覚めた時に変化が現れた。


 「……!」

 

 バッ!


 シュンッ!


 「お? やっと避けれましたか」


 意識を取り戻したオレは、これまで何百と繰り返された状況に対して即座に対応する。

 目を開けた瞬間に放たれる蹴りをギリギリ躱わし、それを放った人物を睨む。


 「避けれましたかじゃねぇよ! 何回も何回も蹴ってきやがって! いったい何がしたいんだよオマエは!?」


 「……何って、強くして差し上げてるんですが?」


 何言ってんだコイツみたいな目でオレの叫びに答えるセバス。

 意味が分からずオレもそんな目でセバスを見る。


 「意味が分からねぇんだよ……」


 「どうやらオツムの方も凡人のようですねぇ」


 「チートもなんも貰わずに転生した奴が凡人意外のなんだってんだよ!」


 何百回と繰り返された状況の中で毎回言われた《凡人》と言う言葉にいい加減飽き飽きしていたオレはそうセバスに言い返す。


 「確かに! 凡人ならではのその発言、見事ですね!」


 「馬鹿にしてんじゃねぇ!」


 「実際馬鹿なんだからしょうがないですね……、まぁこれだけやってその勢いがあるのはまだ見所がありそうですが……」


 セバスの明らかに見下す言葉に言い返すが、溜め息を()きながらそう返される。


 「でっ? ここはどこなんだよ?」


 「最初に言ったではありませんか、ここはワガハイのホームと言っても過言ではない場所です」


 「それは何回も聞いて分かってんだよ、ここがどういう場所かって聞いてんだよ」


 オレの問いにセバスはまた大げさな芝居ががった手振りで両手を広げて答えるが、何回も聞かされたその説明に、いい加減にしてほしいオレはもう一度聞き返す。


 「ああ、そういう意味でしたか、それでしたらもっと早く言ってくだされば良いですのに」


 「それぐらい分かれよ」


 「ハハハ、なにぶんココに戻ってくるのは久方(ひさかた)ぶりで気分が高揚(こうよう)しているものでね!」


 セバスはそう言いながら、気分が良さそうにクルクルと回りながら答える。


 「ここは通称《天獄(てんごく)》、まぁアナタに分かりやすく言えば刑務所みたいな場所ですかな」


 「は? こんな何も無い場所が刑務所?」


 オレは辺りに視線を向けながら、どこか見覚えがあると思い、記憶を探ると、最初に転生の女神だとか言ってた《レティ》に会った場所に似ている何も無い場所だった。

 そんな事を思い出しながらセバスに聞き返す。


 「アナタに伝わりやすく言ったつもりなんですが……、えーと、悪人? を捕らえて置いとく場所ですね……」


 「いや、そんな可哀想な目で噛み砕いて説明しないで!」


 オレの言葉に、意味が伝わらなかったのかと噛み砕いて説明するセバス。

 そう言う意味で聞き返したんじゃねぇんだよ!


 「なんでそんな場所に連れて来たんだよ、ってかなんでオマエもここに入れるんだよ」


 「それはですね、ワガハイが……」


 ヴゥン!


 セバスが何か言いかけた瞬間に周りの空気が重くなった気がした。


 「おっとミヤビ殿、ちょっとワガハイが良いと言うまで口を閉じて動かないでおいて下さい、じゃないと完全に死にます、……《インビジブル》」


 セバスがオレの方を指差しながらそう言うと、オレの体が透明になる。

 セバスの言う事に反抗したくなるが、次の瞬間にオレはそれどころではなくなった。


 ゴゴゴッ!


 何も無い空間に響き渡る轟音と共に地面から無機質な冷たい扉が現れた。


 ガチャ!


 キィィーと言う古びた音を響かせてその扉が開いた瞬間に、ハブリシンの前で感じた恐怖が小さく感じる程の、それをはるかに超える恐怖に体が襲われる。

 それを恐怖と言っていいのかさえ分からない。

 ただ1つ分かるのは、何をしても逃れられない《死》。


 コツコツコツ

 カツンッ!


 「久しいな《星喰(ほしく)い》」


 こちらに近付いてくる靴音がオレとセバスの側で止まり、その後に発した一言だけでビリビリと空気が震え、物理的に空気が重くなり、立っている事さえやっとの状態に、セバスが言った『完全に死にます』の言葉が頭をよぎる。




 少しでも動いたら……死ぬ




 「確かにお久しぶりですねぇ、というよりその無駄に重苦しい殺気向けるのはお辞めになってはどうかと……、友達できませんよ?」


 「ふ、我にそんな口を聞くのもオマエぐらいだよ、しばらく戻らないと思ったがもうお遊びは終わったのか?」


 「いえいえ、定期的にここに戻ってこないと、いつ消されるか分かりませんからねぇ」


 「良い勘をしてるではないか、ちょうど時間が開いたのでな、暇潰しにこの場所の掃除でもしようかと思っていたところだったのだ」


 「ハハハ、暇潰しで消されては困りますねぇ、ワガハイの《心臓》を(かく)にして出来てるんですから少しは(いた)わってもらってもいいんですよ?」


 「オマエ程の重罪人を労わるなんてとんでもない、我々の役に立っていなければすぐにでも消される極悪人に、かける情なんてものは持ち合わせていないんだよ」


 扉から現れた人物とセバスが話しているけど、自分にかかるあり得ない重圧に視線さえ2人に向けられず、オレはそれどころじゃなくなっていた。

 見えていないからしょうがないけど、そんなオレに構わず2人の会話は続いた。


 「まぁワガハイはこの通り、自分の《命》を捕らわれているのですから、大人しく従うだけですよ」


 「それでいいのだよ、せいぜい我等の為に役立って置いてくれたまえ、……ある程度は見逃すが余り度が過ぎると……消す」


 「文字通り、この部屋の(きも)(めい)じておきますよ、なんなら壁に彫っておきましょうか?」


 「それは良いな!」


 シュン!

 ガリガリガリ!


 「うっ……、有言即実行とはさすがですねぇ」


 「それが我の良い所なのでな、……さて、オマエの元気そうな顔を見れたし、我は帰るとするか」


 余りの重圧に顔を上げられず、下を向いてなんとか立っていると、地面が激しく削る音が聞こえ、それと同時にセバスの苦しむ声が聞こえた。


 「こちらも久しぶりに顔が見れて良かったですよ……《デイズ》」


 ドンッ!


 「ふぐっ!」


 セバスがその人物の名前を呼んだ瞬間、側に居たはずのセバスが吹き飛んだ。


 「気安くその名を呼ぶなよ虫ケラが」


 「ハハ、それは申し訳ない」


 オレの真横にいる《デイズ》と呼ばれた人物は、セバスが吹き飛んだであろう場所に向かい、嫌悪感を含んだ言葉を吐き捨てる。


 「フンッ」

 

 コツコツコツ


 「あぁ、どうでもいいんだが、その虫ケラ以下はペットか何かか?」

 

 「……なんの事でしょう?」


 デイズと呼ばれた人物は扉の方へ向かい開ける寸前で、見えていないはずのオレの方へ視線を向けながらセバスに聞くが、言われたセバスは地面に倒れたまま知らない振りをした。


 「フッ、まぁいい……戯れも程々にな」


 ガチャ

 キィィ

 バタン!

 ゴゴゴ!





 「……もう普通にしても大丈夫ですよ」


 「ぷはぁ! ハァハァハァ……、あ、アレなんだよ!?」


 「ただの刑務所にいる看守(かんしゅ)みたいなモンですよ」


 「あんな化け物通り越した存在が看守なわけあるか! ハブリシンなんか()にならねぇぞ!」


 「あんな小物と(くら)べてもねぇ」


 デイズが扉と共にこの空間から消えた後、しばらくして言ったセバスの言葉に、訳が分からないオレは質問するが、返ってきた言葉に余計に混乱した。


 「ハブリシンが、小物?」


 「実際そうでしょう? 先程の人物を知る前と後ではアナタの中でハブリシンの存在はどれほど小さくなりましたか?」


 「確かに……、じ、じゃぁ、あの人? にハブリシン倒してもらったらいいんじゃね?」


 「はぁ……、先程の会話からどうやってそんな考えが出てくるかほんとに疑問です」


 セバスの言葉に、確かにデイズと呼ばれる存在を知る前と後では、オレの中のハブリシンの存在が違って見えた、だからその人にハブリシンを倒してもらったらと名案が浮かびセバスにそれを伝えるが、それを聞いたセバスは溜め息をつきながら馬鹿にするようにそう返してくる。


 「な、なんだよ……、お願いしたらワンチャン聞いてくれるかもだろ?」


 「あんな化け物にワンチャンもツーチャンも無いんですよ……、ワガハイでさえ虫ケラ扱いなんですから……」


 それでも食い下がるオレにセバスは同じ態度で馬鹿にしたように返してくる。

 そのセバスの喋り方に、ふと気付いた事をオレは聞いてみる。


 「そう言えばなんで自分の呼び方が《ワテクシ》から《ワガハイ》に変わってんの? ってか《星喰い》って何? そもそも《天獄》って何?」


 「急にすごい聞いてきますね!」


 「だってこの場所に来てからやっと落ちつけたんだぜ? そら聞きたい事もいっぱい出てくんだろ」


 1つ疑問を言葉に出した瞬間、他にも気になる事が出て来て矢継ぎ早に質問したら、セバスは困ったように返してくる。


 「はぁ……、とりあえず《そこ》から説明しましょうか」


 「そこ?」


 「この場所に初めて来た時のアナタと今のアナタで何か変わった所にお気づきになりませんか?」


 変わった所? 考えてみても余り思い浮かばなかったオレはすぐに自分で考えるのを諦めてセバスに聞き返す。


 「なんか変わったっけオレ?」


 「頭は凡人以下ですか!? ここに来た最初とは違い今は普通に話せているでしょう!」


 「あ! 確かに! ……なんで?」


 「はぁ……」


 「溜め息ばっか吐いてないで教えろよー」


 考える事を放棄したオレにセバスは頭を押さえて溜め息をつく、……っていうかなんでオレこんな落ち着いてんだ?


 「ちょっと蹴り過ぎたかもしれませんね……、地面に頭打ちすぎて馬鹿のレベルが上がってしまったみたいですね」


 「馬鹿にしてんじゃねぇよ、……ちょっと考えんのが苦手なだけなんだよ」


 「それを馬鹿って言うんですよ、……まぁいいです、ワガハイが何回も蹴りを入れて傷つけたお陰でアナタはこの場所に《適応》したんですよ」


 「《適応》? それであの痛みとかが無くなったのか?」


 「そうです、この場所は《心臓》を体内に持つ者は生きれない世界ですから」


 「ん? 何言ってんだセバス、心臓がなきゃ生きてこんなに喋れるわけねぇじゃんか」


 頭を押さえながら説明する言葉の中に間違いを見つけたオレは指摘する。

 心臓が無かったら死んでるじゃないか。


 「……気付いてなかったんですか?」


 「何が?」


 「そこ……見てください」


 オレの指摘にキョトンとした目をしたセバスは、オレの左胸の方を指差しながらそう言う。


 「そこ? ……ん?」


 「気付きました?」


 「……何これ?」


 「何って、……風穴?」


 「へっ?」


 セバスが指差した自分の左胸に視線を向けると、まるで最初からその部分が無かったように、ポッカリと穴が空いていた。





 「この場所は《天獄》、命を糧に存在出来る《天界》の掃き溜め……、ようこそ! 地獄すら生温い最悪の場所へ!」




 セバスのそんな言葉を聞きながら、左胸がポッカリ空いている現実にオレは混乱していた……。


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