第61話 血みどろの上陸
ヘラルトとダミアンによる強襲は順調であった。
空ではバーレントを先陣として空軍が交戦に入り、海では戦艦エムレの攻撃を掻い潜り輸送船が次々にメラント島へと上陸を果たした。
第2波として多数の巡洋艦と輸送艦が到着、戦艦エムレは駆逐艦に囲まれ、魚雷をあらゆる方向から浴びていった。
マンネス達は港に上陸を果たした。
港といってもそこは殆どただの砂浜である。違う点を上げるとするならば後方に野戦砲や要塞砲、機関銃があり、幾重にも張り巡らされた鉄条網と砂の下に大量の対人地雷が存在することくらいだ。
「車長、見なよ。戦艦エムレの最後だよ。呆気ないものだね」
「うるせぇ! 操縦に集中しろ操縦手!」
シームの呑気な声に、マンネスが吠える。
輸送艦はエムレによって数発の副砲による攻撃を浴びた。しかしなんとか自力での航行が可能であり、マンネスと一緒に乗っていたヴォスの仲間も半分は生きていた。
半分は砲撃によって命を落としたのだが。
「死んでいった仲間の分まで暴れてやれ! 鉄条網を引きちぎって、敵のど真ん中食い破るんだ! モタモタするなよお前等!」
他の輸送艦も次々に到着、兵士と戦車が上陸し始める。空からの爆撃によって、ルベル側も損害を受けていた。
しかし、ルベルもやられっぱなしではなかった。
「ま、ママ!! ママァッ!!」
「衛生……へ──」
「伏せろ! 伏せるんだ!」
まだ生きている兵器が、マンネス含む兵士達を襲った。砲は上陸途中の輸送船を破壊し、機関銃は上陸した兵士達をなぎ払う。
悲鳴は砲弾の着弾する轟音にかき消され、大勢の味方が命を落とした。
腹に銃弾を食らい母親を呼ぶ者、下半身が消し飛んだ状態で助けを呼ぶ者、砂浜のわずかな窪みに身を潜め撃たれる者もいた。
「お前ら俺のケツに付いてこい! ケツの穴に逸物ぶちこむくらいびったり張りつけ!」
生き残った兵士達の盾になりながら、マンネスはなんとか前へ前へと進んでいく。
砂浜はなだらかな斜面になっていて、遮蔽物も何もない。敵の真下に行かなければ攻撃も防げない。
「アルベルト! フスタ──」
仲間と連携しようとハッチを開けて叫ぼうとしてみれば、付いてきていたはずの味方戦車は撃破され、すぐそばには焼け焦げた遺体が転がっていた。
「…………進め」
「ああ、行くよ」
空からは撃破された戦闘機が敵味方関係なく降ってきていた。
海は魚雷を受けて沈没しかけている戦艦エムレがせめて道ずれにしようと駆逐艦に砲撃を浴びせ、爆発炎上した艦艇が黒煙と炎を巻き上げる。
陸は死体の山と、そこから染みだした血が川となって海に混ざり赤く染めていく。
「地獄だ」
「運転に集中しろ操縦手。奴らは死んだが、今は生きている連中を気にするべきだ。弔いは全てが終わった後でいい」
次々と味方は上陸している。砂浜も徐々に徐々に進んでいる。巡洋艦からの支援砲撃もすぐに飛んでくるだろう。
あと少し、あと少しだけでいい。耐えて次を待つのだ。
「前進し続けろ! 少しでも多くたどり着いて後ろの連中に──」
マンネスが叫んだその瞬間だった。
後方の上陸地点から凄まじい轟音が響き渡る。
「クソ、こんなときに...…」
「飛行船ワルフィスか」
上を見上げたマンネスが忌々しそうに目を細める。




