第60話 強襲
ヘラルト達はひたすら走り続けた。
敵の防御陣地を破壊し、地雷原を抜け、本部へと向かう2人。敵の姿が徐々に増え本部の守りもより強固になっていく。
そして……
『全周に鉄条網と塹壕、コンクリート製の堡塁と地下豪もある。おお、戦車隊もいるな』
ヘラルトの前に、ルベルの本部が姿を見せるとほぼ同時にアントンがヘッドホンの向こうから呆れたようにため息を吐く。
もう馬鹿が考えたのかと言いたくなるほど強固な防御陣地。上陸予定の砂浜も恐らく強固であろうが、ここはそれ以上と言っても過言ではないような有様だ。
「見ろよヘラルト。人狩り隊の連中が混ざってる。他は雑魚だが……雑魚は雑魚なりに数揃えてきてやがる。見えてるだけで1,000人はいるな……」
ダミアンは双眼鏡を覗きながらそんなことを呟いた。
ヘラルトは双眼鏡を奪い取ってみるが、同じような反応だ。
『これをそのまま突破してたんじゃ日が暮れるどころか100年かかる。だが安心しろ。最強の援軍がもうすぐ到着する』
言われてヘラルト達は気が付いた。空から聞こえてくるプロペラの音に。
『やぁヘラルト君さっきぶりだ。贈り物を届けに来たんだ。ぜひ受け取ってくれ』
ヘッドホンから聞こえてきたのは、赤い複葉機に乗っていたあの男。バーレント・イセニアその人であった。
「待ってたぞ。早いとこ頼む。盛大に最大に最高に、このクソ忌々しい要塞を吹っ飛ばしてくれ」
「おっ、イセニア大尉殿か来てくれるんだな? 楽しみだ」
通信を横で聞いていたダミアンが嬉しそうな表情を浮べる。確かにこの状況では嬉しい報告かもしれないが。
「誰か!?」
突然そんな声と共に人影が現れた。ルベルの構成員のようだが……
「ヘラルトだ! ダミア──」
男の言葉を遮り、ひゅーんという音が聞こえたかと思うと彼らの周囲が炸裂音と舞い上がる土砂に包まれる。
空からの爆撃である。
「よし行くぞダミアン。本部に強襲する」
「おう!」
破片でやられた男を踏み越えて、ヘラルト達は本部へと突入していく。
「ヘラルトだ! 撃ち殺せ!」
「ダミアンもいるぞ!」
鉄条網を引きちぎって塹壕の中へと飛び込んだヘラルト達、モーレンを破壊したときのようにお互いの背中を守りながら進んでいく。
「ようお前ら! 久しぶりだな弾を奢ってやるぞ!」
後ろから来た敵に向かって、ダミアンは叫びながら短機関銃を撃ち続ける。
「ダミアン! よくも中尉を裏切ったな! お前のことをあの方がどれだけ大事にしていたかも知らず。よくもこんな大それたことができたものだ! 棺おけに入れて海に流してやる!」
雑魚に混じって、ヘラルトやダミアンがいくら攻撃しても倒れない者達が混ざっていた。
ルベルが誇る精鋭、人狩り隊である。
「流石に連中の相手もしなければならないとなると厳しいなクソッたれ。ヘラルト! こっちは俺に任せろ。先に行きやがれ!」
「任せるぞ」
ヘラルトは外の敵をダミアンに任せ先へ先へと進んでいった。
爆撃のお陰か、進む先にいる敵はそれなりに少ない。対空砲も稼働はしているが、落とせている爆撃機は一部のみで、殆どは支障なく爆撃を行えている。
しかしやられっぱなしというわけではない。空をちらと見たヘラルトはヘッドホンからアントンへ通信する。
「おいアントン。ルベルの連中も航空隊を出してきたぞ。イセニア大尉に伝えてやれ」
空には無数の黒い複葉機が爆撃機を落とそうと飛び立っている最中であった。空を埋め尽くすような数である。こんなものが爆撃機に取りつけば1機も残らず落とされるだろう。
『こちらアントン。もう対処してる、空を見ろ』
見れば迎撃に向かう黒い複葉機にムステルの国章を付けた機体が向かっていくのが見える。先陣をきるのはバーレントの赤い複葉機だ。
『港にはかなり少数だが輸送挺が入ってきてる。海ではエムレに駆逐艦が魚雷をしこたまぶちこんでる最中だ。マンネスは……ハッハッハ』
突然笑いだしたアントンに、ヘラルトは眉根を寄せる。
「どうした?」
『マンネスの野郎、とうとう島に上陸したそうだ。単機で暴れてるとよ』
聞いたヘラルトも思わず吹き出した。
『ま、何はともあれお前はお前の仕事を遂行しろ。変わりがあれば通達する』
「ああ、最後まで頼むぞ。相棒」




