第58話 上陸のち狙撃
ヘラルト達はルベルによる防空網を掻い潜り、メラント島のすぐ近くに着陸、持ってきていた兵器を手に島へと上陸を果たした。
「いよいよ敵の本拠地だ。よっこらせっと。行こうか」
アントンは大きな無線機を背中に装備すると、地図とにらめっこを始めた。肉付きの良い頬をかりかりと掻きながら。
ヘラルトとダミアンも持って来ていた装備を身につけ始める。
ヘラルトは特に重武装だ。いつも着ている軍服の下には固定用ベルト付きの分厚い鉄板を装着、軍服の上には無数のダイナマイト、手榴弾を両の肩からたすき掛け、さらには大振りのナイフと拳銃に加え──
「ここからが正念場だ。ダミアン、今からお前のかつての上官や仲間を大勢殺すことになる。覚悟はできてるな?」
重機関銃を担ぎながらヘラルトはそうダミアンに問うた。
ダミアンは目をまっすぐに見据えながら頷く。
「ああ、覚悟の上だ。奴の、エーリクの野望を打ち砕き終わらせる」
「……上出来だ」
「とっとと行こうぜ。帰ったらお前の女と一緒に酒でも飲もうや。雑に切ったチーズと、ジュネヴァを浴びるほど飲むんだ」
短機関銃に弾倉を差し込みながら、ダミアンは歩き出す。
「ああ、そいつはいい。賛成だ」
「ヘラルト、ダミアン、俺はいつもの通り距離とってお前等の動きを見ながら指示を出す。くれぐれもやられるなよ」
「「あいよ」」
「居たぞ賞金稼ぎのヘラルトだ! 隣に居るのは……人狩りのダミアンじゃないか! 裏切り者が!」
「迎撃しろ!」
爆炎と共にヘラルト達は機関銃を撃ち鳴らしながら駆け抜ける。
本部のある中心部に向かって移動しながら道中目についた兵器や建物には片っ端からダイナマイトと手榴弾を投げ込み、破壊し放火し一切を焼き払う。
ヘラルト達が通り過ぎた後は黒煙が空へと舞い上がる。
『ヘラルト。畑の横だ。輸送車両がある。それを使って中央部まで迎え』
「了解した」
アントンの声に返事しながら、ヘラルト達は畑の横にある輸送車両に目を向けた。おあつらえ向きに荷台には機関銃まである。
「走らせろダミアン」
「あいよ」
輸送車両に飛び乗ったヘラルト達は機関銃を撃ちながら走り去った。
「ダミアン、地雷に気をつけろよ。さもないと俺達はポップコーンみたいにはじけることになる」
「ハッハッハ、何言ってるんだ? ここは連中の豚小屋だぞ? そんなもん埋めてたら兵員の輸送に支し──」
運転しながらダミアンが続きの言葉を言いかけたその時、突如として車の下が爆発した。爆風はヘラルト達を包み込みそれが終わった後には地面で2人そろって空を眺めていた。
「言わんこっちゃない、対人地雷で助かったな。ポップコーンにならずに済んだ」
「まさか地雷まで設置するとは……気を付けて行こう」
立ち上がったヘラルト達は追いついてきた敵に射撃を開始した。
「アントン、ここから本部まではどのくらいだ?」
『歩きなら1時間も歩けば着くさ。問題は上陸部隊のほうだな。第一陣はエムレが6割くらい沈めた』
「戦艦エムレか。ムステルの巨大兵器は半分以上ルベルのものとは……嘆かわしい」
気が付けば敵が輸送車両に乗って続々と現れてきていた。
『エムレについてはマンネス達ヴォスと軍の仕事だ。お前は目の前の仕事に集中しろ』
「ああ、分かってるよアントン。こいつらをぶちのめしたら、次は本部だ」
まずは目の前の敵に集中しよう。
ヘラルトは機関銃の銃口を敵に向け、引き金に指をかけようとした、その瞬間。
「ッ! ダミアン避けろ!」
ヘラルトはダミアンを思いきり突き飛ばし、自身もまた近くにあった輸送車両の残骸に隠れた。そしてその直後、ヘラルトの脇腹を銃弾が掠めていった。
「狙撃……どっから撃ってきやがった?」
「向こうだ、だが正確な居場所が分からん。何度もしつこい奴だ。いい加減ツケの精算をしよう」
ヘラルトは銃弾が飛んできたであろう方角に目を向ける。破壊された輸送車両の隙間から目を凝らすが、狙撃手の姿は見えない。
「かかってこいよ。ウィレム」
ヘラルト達が止まったのとほぼ同時、トラックで敵の増援が現れ、ヘラルト達に向かって射撃を始めた。




