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ヘラルト  作者: 田上 祐司
最終章 メラント島襲撃

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第56話 戦艦エムレ

 戦いの火蓋が切って落とされた。


 ヴォスの頭領、マンネスは軍の大型輸送艦に自前の戦車部隊と共に乗り込み、メラント島を目指していた。


 この上陸作戦に合わせてマフィア・ヴォスは総兵力3万を投入、ムステル共和国軍も同じく3万、いまだ占領が続くムステル北部はムステル救済同盟が請け負った。


「クラーケンもモーレンも居ないと堂々と戦艦を使える。嬉しい限りだ」


 甲板の上で戦車と仲間と共に佇むマンネス、その視線の先には、海の上で波しぶきをあげながら進む巨大な戦艦の姿があった。


 ムステル最後の巨大兵器、戦艦エムレ。30cm4連装砲を4基と無数の対空砲、高角砲を備えた


「嬉しい割には顔が笑ってないよ。車長」


 忌々しそうに吐き捨てる隣で、マンネスの専属運転手であるシームは笑っていた。


「当たり前だ! 戦場の主役は陸だ陸! 海軍にデカい顔をさせて満足するわけがないだろうが!」


 唾を飛ばす勢いで怒るマンネスに、シームは耳を押さえて笑う。


「上陸出来れば僕達にも役目はあるさ。気長に海の旅を楽しもう」


「ふん、そうだな」


「……それに、無事に海を渡り切れる。なんて保証はないんだから」


「やめろ。お前の嫌な予感は基本的に外れたことは無いんだからな」


 マンネスは上を見上げると、メラント島へと向かっていく2つの小さな影に敬礼をした。


「装填手、優しい裏切者、お前等にささやかな幸運を」




 


 マンネスが見上げる先に、メラント島へと向かう2機の航空機の姿があった。


 先行するバーレントの赤い複葉機と、その後ろに続くのはアントンが操縦する中型の飛行艇。


『君達の飛行艇は輸送用とはいえ遅すぎるな。私が失速しそうだ』


 後部銃座に付いたヘラルトはヘッドホンから聞こえてくるバーレントの愚痴に耳を傾けていた。思いっきり飛ばしたいバーレントからしてみれば大いに不満なのだろう。


「ヘラルト! ダミアン! そろそろ対空砲の射程圏内に入るぞ! それと前からお客さんだ!」


 メラント島が眼下に見えてくるに従って敵の攻撃は激しくなってきていた。下からは対空砲が、そして前方からは無数の複葉機がヘラルト達に向かって飛んできている。黒く染色されたそれはルベルのもの。


『ヘラルト、ダミアン。対空戦闘だ。撃たれる前に──』


『いいやここからは私の仕事だ。赤百合のイセニアの雄姿を存分に見物するといい』


 先行するバーレントの赤い複葉機が上昇を始め、敵機の上に向かっていく。


『敵機の数は……14機か。ルベルも追い詰められてるとはいえ流石にそこそこの数を繰り出してきたか。ヘラルト。援護射撃の準備をしておけ』


「いらないと思うぞ?」


『は? ……ああなるほど』


 アントンが前に目を向けると、上から急降下してきたバーレントの機体が敵機に向かって飛び込んでいく光景が映る。


 そこから先は、バーレントの独壇場。機関銃の音が響くたびに敵機が被弾し黒煙を上げ蠅のように海面に向かって落ちていく。ヘラルト達の乗る輸送艇に攻撃を仕掛けようとした敵機は背中を見せた時点で終わりだ、後ろから的確に操縦席を撃ち抜かれてゆっくりと下降していった。


 機関銃の音とプロペラの唸るような音が周囲を埋め尽くす。赤い翼が風を切り、後ろを取られた敵機が何とか振り払おうと無茶苦茶に機体を振り回し暴れる。


 仲間を助けようとすれば今度は助けようとした方が的になっていて、助けようとした仲間はいつの間にか一緒になって落ちている有様。


「おいヘラルト。煙草あるか?」


「ほらよ」


「シケモクじゃねぇか」


 ヘラルトとダミアンはもはや最低限の警戒すらもしていなかった。少なくともバーレントがいれば敵の戦闘機は手を出せないだろう。2人とも煙草を出して吸い始めた。


「あと3機か。早いもんだ」


 海上に目を向ければ墜落した敵機が海上で煙を上げながら沈んでいく。上空を見ればバーレントが元気よく敵機を追いかけ撃ち抜き叩き落している。


『ん? おい最後の1機がこっちに向かってくるぞ! 早く対空しろ!』


「おいおいおいおいふざけるなよ畜生め!」


「落ち着けダミアン」


 アントンの声にダミアンとヘラルトが慌てて対空銃座に付く。だが間に合わない。


『君達が私を見ていなかったようだから。ちょっとけしかけてみたんだ、どうかね?』


「ぶち殺すぞ糞野郎! 心臓とまるかと思ったわ!」


「危ない事するんじゃないぞ」


 バーレントに対する非難で埋め尽くされた。


『さて、私への非難はそこまでにしてもらおうか。……どうやら海の方に動きがあったようだ。それも良くない動きがね』


 ヘラルトが味方の居る方向を見る。


 そこには味方であるはずの巨大な戦艦エムレが、味方の船に向かって砲撃をしている光景があった。


 

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