第54話 会議
アントンから告げられた作戦は概ねヘラルトの思っていた通りになった。
「作戦決行は明日夜0時、お前とダミアン2人でメラント島に攻撃を仕掛けてもらう。本隊とは違う場所からな」
アントンは地図を広げて太い指で示した。
「メラント島は南部の港以外に船で上陸できる場所はない。ここ以外は全部崖で、船がつけられない」
「だが南以外から侵入するんだろ? どうやるんだ?」
ヘラルトの問いに、アントンは答えた。
「飛行艇を使って俺がお前達を東部まで送り届ける。護衛には、イセニア大尉殿がつかれる」
「なるほど、崖登りはしなくてよさそうだ」
言いながら笑うダミアンに、アントンは咳払いをしつつ続けた。
「侵入に成功したら、お前達は中央部にある指令部へと向かえ。そこには飛行場の他に最後の巨大兵器、飛行船ワルフィスがある。お前達はそれを撃破しろ」
「簡単に言ってくれるな」
「メラント島には南部から撤退したルベルの精鋭、人狩り隊が全員揃っている。くれぐれも気を付けろ。特にコイツだ」
そう言ってアントンは2枚の写真を投げた。1枚目に写っているのはヘラルトが嫌悪する人物。
「マフィア・ルベルの若頭、ウィレム。ヘラルトの腹に風穴を開けたやつだ」
舌打ちしながらもう一枚の写真に目を向ける。
「もう1人はコイツか。エーリク・マイヤー」
2枚目に写っていたのはルベルの頭領、エーリク・マイヤー。戦車砲を避け、ヘラルトを戦闘不能に至らしめた男だ。ダミアン達が来なければ死んでいただろう。
「ウィレムは狙撃が達者なのは分かったが……エーリクはなんなんだ? 戦車砲を避けたのはまぐれだったのか?」
ヘラルトは1度交戦した時のことを思い出していた。
ヘラルトは戦車に乗っていて、距離もあり、圧倒的に有利なはずだった。しかしエーリクは勝った。これはなぜなのか?
ダミアンが答える。
「アイツは戦場に長くいたせいで相手が撃ってくる時が分かっちまうんだとよ。目を撃たれたときにその能力が開花したらしい」
「化物か」
ダミアンは頷く。
「あのくそったれな塹壕の中で、生き残るために張り詰めて張り詰めて、文字通り死にものぐるいで得た能力だ。やつはそれのお陰で今の今まで生き残り、ルベルの頂点に立った」
「それが本当なら、ヘラルトは勝てないな。撃っても撃っても、その先に人間が居ないんじゃ意味がない」
アントンは考え込んだ。
「アントン。難しく考えなくてもいいだろう?」
「あん? じゃあお前は弾を避ける化け物をどうやって殺すつもりだ?」
「死ぬまで殺せば死ぬんだよ」
ふふんと自慢げに胸を張るヘラルトに、その場に居た全員が呆れかえった。
「……まぁいい。どうせ人間、死ぬ時は死ぬ。もう後には退けん。ヘラルト、遠慮はいらん全力で叩き潰せ。そのための物資は運んでやる」
地図と写真を仕舞うと、アントンは準備の為に部屋を去っていく。
「作戦開始までは時間がある。2人とも親しい人間に別れの言葉でもかけてやるんだな」




