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ヘラルト  作者: 田上 祐司
第6章 巨大潜水艦を撃沈せよ!

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第51話 魚雷のち取り付き

 回頭する姿を見たアントンは舵をきろうとした。


「駄目だアントン。そのまま突っ込め」


 しかしヘラルトが止めた。回頭を果たしたクラーケンがヘラルト達の乗る船目掛け、こともあろうに右弦の魚雷を一斉に発射したのだ。


 水中を進む独特な魚雷の航跡はどう回避しようとしても当たるような密度である。


「避けなかったら全員海の藻屑だぞ! 分かってるのかヘラルト!?」


「自殺したいならそう言いやがれこのボケ! 俺が頭に弾をぶち込んでやる!」


 ヘラルトは船に取り付けられた魚雷発射管の片方にとりついた。


「おいヘラルト、まさかお前……」


「そんなことやれんのか!?」


 不安がる2人には目もくれず、ヘラルトはその時を待った。


 魚雷に対し真っすぐに向かっていく船、向かってくる無数の魚雷、こんな船程度当たれば一撃で粉々にされてしまうだろう。だが発射管のすぐそばで待つヘラルトは冷や汗の1つもない。


「ここだ」


 ヘラルトの発した声と共に、こちらの魚雷は発射された。


 向かい来る無数の魚雷に対し放たれた一発の魚雷。それは何もクラーケンへの苦し紛れの反撃に使うためのものではない。


 道を切り開くためのものだ。


「ヘラルト、お前を信じるぞ……」


「死にたくねぇ……」


 アントンとダミアンがそれぞれ不安げな声を上げる中、魚雷は進み……


 船の前方で向かってきた魚雷と衝突し、凄まじい水しぶきをあげた。


「アントン、全速力で前に突っ込め! 次を撃たせるな!」


「り、了解……」


 水しぶきを頭から被りつつ、アントンの駆る船は前へ前へと進んでいく。敵が放った無数の魚雷は後ろへと抜けていった。


「やりやがったなヘラルト! まさか本当にやるとは思わなかったぞ!」


 手を叩いて喜ぶダミアン。


「ふぅ、意外と出来るもんだな」


「まぐれかよふざけんな!」


 やいのやいのとうるさいダミアンを無視してヘラルトは前を向く、もうすぐクラーケンへと接触する距離まで来た。


「ダミアン、もう片方をぶち込め」


「あいよ」


 もうどうやったとしても当たるような距離まで来ると、ダミアンはもう片方の魚雷を発射した。


 魚雷は真っすぐにクラーケンへと向かっていき接触。


「おっと?」


 接触、した。


 しかし爆発も何もなかった。不発である。


「不発だ! もうこうなったら取り付いて内側から吹っ飛ばすしかないぞ!」


「アントン、船を突っ込ませろ。俺達でやる」


「お前こっちの魚雷撃ってたら俺達は終わってたぞ……肝が冷えた」


 不発の魚雷が残した航跡を見ながら苦虫を嚙み潰したような顔で語るダミアンに、ヘラルトは他人事のように言った。


「いやー、よかったな」


「この戦いが終わったらクソがビターバレンに見えるようになるくらいぶん殴ってやるからな」


 言いながら2人は銃を構える。もうすぐクラーケンと衝突する。そうすれば乗り移って暴れる時間だ。


「衝突まで3……2……1……よし行けお前ぐえぁあああ!!」


 アントンの言葉の直後、凄まじい衝撃が船を襲った。クラーケンの横っ腹に船が衝突したのだ。


「海賊様のお通りだ! 金を出せ! 女を寄越せ! 首を切られたくなければ先に死んどけ!」


「少しは静かに侵入しろダミアン」


 ヘラルトは言いながらクラーケンの上部にある艦橋から侵入を試みた。


『ヘラルト、艦橋のハッチを狙え』


「了解だアントン」


 ヘッドホンから聞こえてくるアントンの声に返事しながら、ヘラルト達は水面から塔のように突き出た艦橋へと走っていく。とはいえそこは巨大潜水艦、クラーケン。距離が大分ある。


 敵はそのわずかな時間を使ってハッチの中から機関銃を取り出してきた。


「取り付かれてるぞ! 反撃しろ!」


 そう叫び機関銃を撃ってくるが狙いが下手糞だ。当たりそうもない。


「アホが! 親父の金玉袋からやり直してこい!」


 ダミアンが短機関銃による射撃で敵を撃ち倒すとヘラルトは艦橋のハッチへと猛然と走る。


 ヘラルトは点火したダイナマイトをダミアンに渡し、自分もまたダイナマイトを手にハッチの中を覗き込む。


「あ……」


 下からはしごを使って登ってくる敵の姿が見えた。2人はそんな敵に対し……


「「あばよ」」


「ま、待て待て待て! 馬鹿やめろ!!」


 慌てふためく敵を無視して短く呟くとダイナマイトを投げ込み、しゃがみ込んで爆発から身を守る。


 すぐさまダイナマイトが炸裂する音が響き渡り、ハッチ付近は振動で激しく揺れた。


「ダミアン、追加だ」


「あいよ」


 再度ハッチからダイナマイトを投げ込むと、爆発の後に突入していった。





 

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