第41話 反撃の準備
「おい起きろヘラルト! 起きろ!」
「仕方ねぇな。ちょっと俺が目覚めのキスでもしてやろう。無論舌もいれてやる。コーヒーと焼きたてのべスハウトも食わせてやるぞ。さぁ起きろ」
五月蠅い声にヘラルトは目を覚ました。
「生きてたかヘラルト。起きれるか?」
一気に覚醒、勢いよく起き上がったヘラルトは周囲に目を向ける。目の前には薄汚れたデブことアントンと、ニヤニヤと下品な男ことダミアンの姿だけがあった。
今この男2人に用はない。ヘラルトは2人をどけ周囲を見るが目的の人物は近くに居ない。
見えるのは酷く荒れた店の中……調度品の残骸から察するにホテル・アーメルスだろう。
「よう、俺が天使に見えるかお寝坊さん」
「……あの片目のクソ野郎はどこに行った?」
「エーリクの事か? あの野郎なら俺達が追い払ったぞ」
ダミアンの言葉に、ヘラルトは舌打ちした。
「残念だったな。あそこでトドメさせてたらこの先楽だったのに」
「うるさい」
「ヘラルト。とりあえず傷は手当てしておいた。痛むだろうが状況の整理だ」
言われてヘラルトが身体を見ると、包帯が巻かれ傷の手当てがされていた。アントンがやったのだろうがなかなかいい仕事ぶりだ。
「正直状況は芳しくない」
ルベルはムステルの各都市、ヴォス、救済同盟、そして軍の拠点を同時に襲撃。
各組織の拠点、都市はかなりの損害を被り、軍の基地、飛行場など複数がルベルによって占領、ムステルの巨大兵器の1つ、ヒールも破壊され民間人の被害はもはや万を超える勢いだった。
月曜日に行われた虐殺、ムステルはこれを『血の月曜日事件』と呼んだ。
「ヴォスは反撃に出る予定だ。救済同盟は各地で民間人の避難誘導やら消火やら、まぁ助けに入ってる。ヘラルト、怪我してるとこ悪いがお前も動いてもらうぞ。このままじゃ家のふかふかなベッドでおねんねなんてできないからな」
「金が貰えなくても今回は行く」
「それでこそ賞金稼ぎのヘラルトさんだ。それじゃ行こうや。悪党をぶっ飛ばして、下らない冗談言いながらハッピーエンドとしゃれこもう」
ダミアンは煙草をヘラルトに差し出した。
「足が要るな。方々駆けずり回るための」
貰った煙草に火を付けると、ヘラルトは立ち上がった。血を失いすぎたのか少しふらつく上に傷が痛むが、痛みはただの危険信号。無視してしまえば支障はない。
「ヘラルト! 無事なのね。よかった……」
「エフェリーナか」
話をしていると拳銃を腰に付けたエフェリーナが姿を見せてきた。手には救急箱の類が握られている。
「下腹撃たれようが手榴弾投げ込まれようが、この頑丈な野郎が簡単に死ぬもんかよお嬢さん」
「ヘラルトも人よ。死ぬ時は死ぬわ。もう危ないことはやめて頂戴、私は貴方が棺で眠る姿を見たくないのよ」
「死なんさ。そんなことよりエフェリーナ、ここは暫く離れた方がいい。従業員も連れて安全な場所に……そうだなヴォスの連中にでも匿ってもらってくれ」
エフェリーナは少し下を見ながら、頷いた。
「よし、行くぞ。アントン、ダミアン」
「ああ行こうや」
銃を肩に掛けると、ヘラルト達は外へと出て行った。
1人残されたエフェリーナは一言。
「なんで男の人はこうも馬鹿ばっかりなの!?」




