第40話 思いがけない遭遇
ヘラルトの放った砲弾は、ホテルを包囲する戦車の1両を撃破する戦果を上げた。
「馬鹿な! 後ろには味方のレウしか居なかったはずだろ!? 一体何で後ろから砲弾が飛んできてるんだ!」
敵が後ろを見た時、目に入ってきたのはヘラルトの操るレウ戦車の姿。平均して7秒に一発の勢いで砲弾が撃ち込まれている。
弾種は榴弾、近くに着弾した結果敵は吹き飛ばされ死亡していく。
「装填と照準が早いな。まさかマンネスの野郎か?」
「誰だろうが知ったことか! 迎撃しろ!」
敵は包囲に使っていたレウ戦車の一部をヘラルトを撃破するために使おうとしたが、移動させるよりも先にヘラルトに撃破された。
「何とかして破壊しろ! 急げ!」
敵はがむしゃらに接近を試みたが、今度は機関銃が動き始めた。
「まとめて地獄に送ってやる。向こうで悪鬼共によろしくやってくれ」
狭いレウ戦車の中、ヘラルトは砲塔に取り付けられた機関銃を操作し敵を撃ち続けていた。
夜中で視界が悪いと思いきや、火事のお陰で視界はある程度明るい。それが尚の事ヘラルトをイラつかせた。
「ん?」
敵を撃ち殺していると、瓦礫の影に一瞬、白髪の男が目に入った。長い白髪と、驚いたことに眼帯までしている。
「えらく派手な頭だな」
構わずヘラルトは瓦礫諸共吹き飛ばそうと砲を操作しようとした、次の瞬間。
「なに?」
瓦礫の中から飛び出した白髪の男が手に散弾銃を持ちながら一直線に突撃してきたのだ。それもたった1人で。
「馬鹿が。狙い撃ちだ」
ヘラルトは砲の照準をつけるとそのままレバーを引いて砲撃を加えた。吐き出された砲弾は白髪の男を跡形もなく粉砕することであろう。そう思っていた。
「やったか……」
砂煙が晴れると、そこには白髪の男の姿はなかった。仕留めたと思いヘラルトは再び砲弾を装填し次の的に狙いを定めようとした、その瞬間だった。
「ん?」
覗き穴からごとりと何かが入った。ヘラルトがそれの存在に気が付いた時、目を見開き息を飲んだ。
手榴弾。レウ戦車の中に放り込まれたのは手榴弾だった。
──生きていたのか!?
ヘラルトはなるべく被弾しないようにその場に伏せるが衝撃までは防げない。
「ぐぅううううッ!」
破片で足と尻、背中を負傷した。頭が揺れ視界がぐらぐらと回る。
咄嗟にハッチを開けて外へと出たヘラルト。
しかしそこに待っていたのはあの白髪の男だった。
「くそっ」
思わず身体を引っ込め躱そうとしたヘラルト。
待ち構えていた散弾銃から弾が発射され、ヘラルトは左肩を負傷した。ただでやられるほどヘラルトも甘くはない。抜いていた拳銃で迎撃にかかる。
しかし、その拳銃が撃たれることはなかった。
「やめておけ。もう勝負はついた」
白髪の男はヘラルトの手を曲がらない方へ曲げ、拳銃を奪った。
「クソ野郎が!」
もはや自棄だった。ヘラルトは拳を握りしめて白髪の男に殴りかかる。だが無駄だ。白髪の男はどう殴られるのか分かっているのか殴られる前に避けている。
レウから降りて、ふらつく足取りで何度も何度も殴りかかるがその拳は無情に空をきるばかり。
「やめておけ。手榴弾食らってそれだけ動ける耐久力は見事だが。俺には勝てん」
「勝てるぞ。黙ってつったっていてくれ。顔面に拳をいれてやる。蹴りもサービスしてやろう」
白髪の男はふらつくヘラルトを見てあきれていた。
「仲直りしようじゃないか。俺は一度の裏切りは許す人間だ」
「何が仲直りだ。回りを見ろ、こんな有り様にしといて」
ヘラルトの言葉に白髪の男は苦い顔をしていた。
「俺も本意では無かったんだがな。ここにいる連中は俺達と敵対する奴らか俺達を裏切った連中ばかりだ……が、流石に俺も良心が痛む。そういえば自己紹介がまだだったな。俺はエーリク・マイヤーだ」
名前を聞いた時、ヘラルトはようやく白髪の男、エーリクの正体に気が付いた。ルベルの頭領だ。
「クソ野郎……が……」
視界が歪む、ヘラルトも思わずその場に膝をついた。
「お前、気がついてないだけで傷だらけで血まみれだぞ。死にたくはないだろ? 俺の下につけ。ルベルは兵士を歓迎する」
「……お断りだ──このボケ」
息も絶え絶えになりながら口でそう返すと、エーリクはひどく残念そうな顔をしながら拳銃をヘラルトの頭に向ける。
「残念だよ。分かり合えなくて」
いよいよ撃たれる。そう思った時だった。聞きなれた声が聞こえてきた。
「そいつから手を引け! そいつのドタマに弾ぶち込んでいいのは俺だけだ!!」
数発の銃声と共に装甲車が突っ込んでくるのが見える。
エーリクはヘラルトを置いて去って行くことになった。




