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ヘラルト  作者: 田上 祐司
第5章 血の月曜日事件

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第39話 装填手の帰還

 建物の屋根から飛び下りて、ヘラルトはホテルの方へと走った。


 短機関銃を構えつつ敵の背後をとるのだ。


 あとは戦車を奪取できれば包囲している敵の網に穴を開けられる。ヘラルトにはそれを実現できるだけの力がある。


「誰だ! ギャッ──」


 戦車がすぐそばにあるところまで来たところでヘラルトは敵の一団に見つかってしまった。


 敵は歩兵が7名……から1人減って6名と戦車が1両。


「柄にもないことはやるもんじゃないな」


 ヘラルトは隠密行動にとんと向かない性格と体格だった。


 筋骨隆々の大男が殺気を放ち目を血走らせていれば嫌でも気が付くだろう。


 などと、考えても仕方ないのでヘラルトは瓦礫の影に隠れながら短機関銃を撃ちまくる。


「1人だと? 馬鹿な奴だ」


「生き残りってわけか。包囲網を突破しようとした──いやまて、あいつは……」


 弾が尽きた短機関銃を投げ捨てヘラルトは大振りのナイフと拳銃を手に敵に姿を見せる。敵との距離はそれなりに離れていて、弾数も人数も相手の方が圧倒的に有利、しかし今のヘラルトは負ける気など微塵もなかった。


「賞金稼ぎのヘラルトだ! 生きてやがったのかあの野郎め!」


「撃ちまくれ! あいつを殺せばムステル銀獅子勲章ものだぞ!」


 敵はヘラルトに向けて銃を撃ってくるが、その弾がヘラルトに当たることは無かった。


 ヘラルトはナイフを手に全力疾走しながら拳銃で牽制し、ひたすら前に前に突っ込んでいく。


「嫌だ来るな近寄るな!」


「早く撃ち殺せ!」


「うるせぇお前がやってみろ!」


 喚き散らす敵の姿を見て、ヘラルトも多少は溜飲が下がる。そうこうしている間にもうナイフの届く距離だ。


「地獄に落ちろ」


「ギャア──」


 ナイフの届く距離になった後、そこからは早かった。ヘラルトは敵の腕を切り落とし、首を切り、下腹を突き刺す。何かの成木のような腕から振るわれたナイフはまさに一撃必殺の威力を秘めていた。


「ま、まだ生きてる! やめろ撃つな!」


「撃て!」


 最後、ヘラルトは脇腹にナイフを刺して敵を盾にしながら生き残りに近づいていく。


「大事か? 仲間が」


 どうにも銃を構えたまま撃とうとしない敵に向かって、ヘラルトはそう声をかけた。


「当たり前だろうが! お前みたいなかつての仲間に銃をぶっ放すような裏切者には理解できないだろうけどな!」


「……大事なら抱えておくといい」


 ヘラルトは盾にしていた敵を後ろから蹴り飛ばし敵にぶつけた。


「ど、どけ!」


「抱えておけよ。文字通り死ぬまで、墓に入るまでな」


 仲間を受け止めた敵が最後に見たのはヘラルトが振るってくるナイフだった。


「……確かに俺は裏切り者だ。本来ならお前等ルベルやヴォスのようなマフィアに味方するべきだったんだろう。結成当初なら、俺もどっちかに入ろうとさえ思った」

 

 ヘラルトは戦車のハッチを開けると中にいた乗員を殺し、死体を投げ捨てて砲塔を動かした。


 そうしてぽつりぽつりと漏らす。


「だがな、こんな場所で巻き添えでもなんでもなく誰彼構わずぶち殺すような、そんな奴等に俺はもう同情はしない」


 砲弾を込め、狙いをつける。


「お前等ルベルは殺す。その先にどんな苦難があろうが、どんな結果が待ち受けていようが。殺してやる」


 ホテルを包囲する戦車の1つに狙いをつけ、ヘラルトは発射のレバーを引いた。

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