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ヘラルト  作者: 田上 祐司
第5章 血の月曜日事件

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第38話 アーメルスの今

 ヘラルトがアーメルスへとたどり着いたとき、そこには地獄が顕現していた。


「……なんてことだ」


 鳴り止まない砲撃の音、まるで路傍の石ころのように打ち捨てられた死体、抵抗しようとしたのだろう、撃破されたヴォスのレウ型戦車も多数あった。


 そこかしこで火事が起き、助けを求める声や悲鳴、銃声が鳴り響く。周囲には硝煙の臭いの他に死体が焼ける臭いがする。


「たす、けて……お願い、赤ちゃんが──」


 ヘラルトが敵はどこかと視線を周囲に向けていると、どこからか声が聞こえてきた。


 声の主を探すと、居た。倒壊した建物の瓦礫に母親と赤ん坊が挟まれている。


「大丈夫か! 今出してやるからな!」


 全身に力を込め、瓦礫をどかしなんとか救い出そうとしたが……既に遅かった。


 母親は腰から下がつぶれていて、もう助かる見込みがなかった。


「お願い──赤ちゃん……だけ、でも」


「あ、ああ。任せろ、必ず助けるか、ら」


 ヘラルトは努めて冷静に言ったつもりだったが、声が震えた。既に赤ん坊も頭に瓦礫の破片が直撃し事切れて居たからだ。


「安全な……とこ……ろに………………………」


 母親は死んだ、開いたままの瞳孔はただまっすぐに赤ん坊へと向けられていた。


「すまない……」


 せめて一緒の場所でと思い、母親を瓦礫から出し火のないところで赤ん坊を抱かせた。


 こめかみに血管を浮きだたせ、下唇を血が出るほどに噛みしめながら、ヘラルトは立ち上がる。


 力一杯短機関銃の弾倉を突きこみ銃声の聞こえる方へと走った。






 街の中心部に近づくにつれ、銃声の頻度は上がっていった。


 アーメルスの住民をヴォス、救済同盟の構成員たちがどうにか避難させようとしているようだったがそれが上手くいっていないようだった。ルベル側は砲兵に加え戦車、野戦砲、その他十分な訓練を受けた兵士が投入されている。


 退路を断たれ包囲されていた。


「……ホテルにはまだ突入されてないな。エフェリーナは無事か?」


 ヘラルトは少し離れた建物の屋根の上から目視で様子を伺っていた。建物は砲撃以外では殆ど荒らされていない。略奪も行われていないようだった。


 ヘラルトがホテル・アーメルスの方へと視線を向けるとそこには立てこもるヴォスの構成員や周囲を守るレウ型戦車の姿があった。


「ひとまずは包囲している奴等を殺して包囲をとかせる必要があるな……おいアントン。聞こえるか?」


 ここでようやくヘッドホンからアントンを呼ぼうと考えたが……


『………………………………』


「アントン、応答しろ。アントン」


 ヘッドホンからはアントンの声はおろか雑音さえも聞こえない。


「ダイナマイトも、機関砲もなし。あるのは短機関銃と拳銃だけか。派手には動けんな」


 ヘラルトは街を包囲するルベルのレウ型戦車に目をつけた。装填と発射、狙いをつけるのも1人でやれる。砲撃をしないなら運転もだ。


「あれを頂戴するか」


 ヘラルトはいつものように大胆に動くのをやめた。密かに、慎重に、猫のように音を立てずに歩く。



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