第33話 機関銃の嵐
「お前等喜べ! ルベルの連中はもっと遊んでくれるらしいぞ! お礼の弾は持ったか? 遠慮なくぶち込んでやれ!」
マンネスが叫ぶ。彼の眼前には地面を踏みならし向かってくる戦車と、それに乗る兵士達の姿が見えてきた。
「距離1020m! 弾種榴弾! 左20……いや待て! 」
「どうした?」
ヘラルトが疑問を投げかけると、地響きのような音が聞こえてきた。覗き穴から外の様子を伺うと、そこには夥しい数の発煙弾が空を覆い隠すように煙を出していた。
「なんだこれは? 敵の発煙弾か?」
「いいや味方だ! あいつらめ……誤射したらどうするつもりだ。いちいち派手な登場をしやがる」
段々と、音が聞こえてくる。
猛々しい男達の咆哮が、大地を踏みならす馬蹄の音が、聞こえてくる。
「ムステル救済同盟、その最大戦力、騎馬隊か。てっきり逃げたかと思ったが」
「だから言っただろうヘラルト。彼等は逃げない。それは彼等の誇りが許さない」
ヘラルト達の乗るレウの脇を抜け、騎馬がルベルに向かって突撃を敢行する。手に手に槍や短機関銃を携え、腰にダイナマイトを飾り付けて。
「最後の一兵に至るまで! 突撃ィィィィィィィッ!!」
「敵陣を食い破れ!!」
「うわあああああああああああああああ!!」
煙に紛れ、彼等は馬に乗りひた走る。それに合わせ、ヘラルト達の乗るレウも前進を始めた。
「シーム、前に進め! 続け馬鹿共! 救済同盟の奴等に後れを取るな、俺達も続け!」
救済同盟の騎馬突撃に合わせ、ヴォスの構成員もなけなしの武装を手に突撃を敢行した。
ルベルの繰り出してきた戦車は10両程度。対するヴォスと救済同盟の戦車は1両のみ。それだけ見れば劣っている。
しかし救済同盟の騎兵は数で勝り、士気は高く、練度も高い。ヘラルトの乗るレウも単純な砲の口径ならば勝っている。
「それにしても、普通戦車相手に正面から攻撃を仕掛けるか? 救済同盟の奴等は頭に馬の毛が詰まってるんじゃないか?」
「装填手! 減らず口を叩いている余裕があるならもっと命令を過激にしてもよさそうだな。今まで4秒で装填していたようだが3秒でやれ!」
「無茶苦茶言うな」
装填を済ませると、ヘラルトはのぞき窓から敵を見ようとしたが、煙幕弾によって視界は遮られたままだった。
「もう少しで煙の壁を抜けられる。ヘラルト、持ち場を離れないでくれ」
「馬を轢き殺すなんてことが無いといいがな」
煙を抜けると、そこに見えてきたのは唸り声をあげる機関銃と勇ましく突進する騎兵の姿だった。
馬は悲鳴を上げて倒れ、爆弾を投げ込もうとした救済同盟の構成員も撃たれて倒れもした。
しかし、彼等は止まらない。生き残った構成員がダイナマイトを戦車に投げつけ、短機関銃は戦車から降下した敵を撃ち抜く。
随伴していたレウが突出したり孤立すればヴォスの構成員が覗き穴から手榴弾や短機関銃の弾を叩き込む。
「密集しすぎて砲が使えん! 装填手! ちょっとばかりの休みだ。救済同盟の死にたがり共が消えたらしこたま弾をぶちこんでやれ!」
ヘラルトが覗き穴から前を見る。
彼らの姿は徐々に消えていく。
『ヘラルト、どうやら軍もこの件に感づいたらしい。そっちに空軍の爆撃機編隊が送られてる。その中にはムステルの巨大兵器の1つ『ヒール』も含まれる。気をつけろ』




