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ヘラルト  作者: 田上 祐司
第4章 調印式襲撃

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第32話 やけくその救援要請

 さて、調印式を襲撃したルベルの構成員たちだが、彼等は浮足立っていた。


「親父! どうなってるんですか!? あいつら碌な武器も無いって──式典に武器なんか持ってきてないって言ってたじゃないですか!」


「車が全部やられちまった! あの戦車なんなんだよ!? どっから沸いた!?」


 彼等は先制攻撃を仕掛けたが、最初の数名を倒した後は殆ど敵を負傷させられていない。それどころかヴォス、救済同盟の共闘によって押し戻されている。


 今や仕掛けた側のルベルの構成員たちは平原に僅かに出来た窪みに身を寄せ合い、震え、喚いていた。


「親父! どうしたらいいんですか!? このままじゃルドルフ一家は全滅──」


 喧しく喚く構成員の顔面に、親父と言われる男が拳を叩き込んで黙らせた。


「うるせぇ黙ってろ! ああクソ! 手柄欲しさに喜び勇んで来てみれば何なんだこれは!? この体たらくは!」


「親父……やっぱり手を出さない方が良かったんじゃないですか? エーリクの頭領からもそう言われ──」


 親父は反対方向にいた構成員を殴った。


「ふざけるな! お前等の頭はこの俺だ! このルドルフ様だ! エーリクとかいうポッと出の糞野郎なんざ俺は頭だとは認めんぞ! 今はただあいつらに仕方なく従ってるだけだ!」


「お、おやじ──やめ、やめぇえ……」


 全ての苛立ちをぶつけるように、親父は構成員を力一杯殴りつける。


 彼等はルベルが結成されたときに取り込まれたマフィアである。人を殺すのも埋めるのも慣れてはいるが、相手が悪すぎた。ヴォスも救済同盟も構成員の殆どは戦地帰りの軍人達だ。


 状況は好転しない。敵の大将首、それも2人も首を獲れたなら出世が出来ると踏んでかつての仲間と共に来てはみたが、状況は最悪の一言。


「こうなったら仕方ない。信号弾を上げろ! 救難信号だ!」


「わ、分かりましたぁ!!」


 こうしてルベル側は空に向かって信号弾を上げた。






 信号弾の存在を、ヘラルトは戦車の中で聞いた。


『ヘラルト! ルベル側から信号弾が上がった! そこにルベルの援軍が来るぞ!』


 肩に掛けたヘッドホンからはアントンの声が聞こえてくる。レウのエンジン音にも負けないほど声を張り上げているのだろうが、正直よく聞こえない。


「救難? ……ルベルの構成員にしたって軟弱すぎる。しかもこんな大事な式典に──おいマンネス! 敵はどのくらいいる?」


 機関銃を撃つマンネスにそう声をかけると、マンネスはヘラルトの肩を蹴ってきた。


「車長と呼べ! そうだな、不埒な糞野郎共は30人……今はまともに立ってるのは半分以下か?」


「……少なすぎないか? おいアントン! 周囲にルベルの増援は来ているか?」


 ヘラルトはヘッドホンからアントンにそう聞いた。僅かに確認する時間の後、アントンは答えた。


『北側から来ている。もうすぐそっちに行くぞ。見える範囲で……戦車10両 戦闘車5両 自動車10台!』


「おいマンネス。ルベルの追加が来るらしいぞ。そこそこの大所帯だ」


「知るかそんなもの! まとめてぶち殺せ!」


 マンネスはひたすら機関銃を撃ち続けた。


「俺達の方にも援軍が必要だ。アントン。どこでも良いからヴォスに連絡を入れておけ」


「必要ないよヘラルト。僕が既に声をかけておいた。ルベルよりは遅くなるだろうけど、援軍は必ず来る」


 シームの言葉にヘラルトは目を丸くしていた。


『手が早いな。それとその言葉は間違いない。南側からレウⅡが20両ばかし来てる。Ⅰ型、Ⅲ型……ほほう、Ⅵ型まであるじゃないか』


 Ⅰ型は砲の変わりに火炎放射器を搭載した型、Ⅲ型は対空砲を搭載、Ⅵ型に至っては砲塔の変わりに小型のロケット弾を無数に搭載したゲテモノだ。


「戦車戦か。まさかこんなところで砲弾撃ち合うことになるとはな」


「安心しろ装填手! 弾は満タンに詰めてきたからな! しこたま撃てるぞ!」


「その心配はしてないんだがな……」


 マンネスの指示の下、ヘラルトは発射のレバーを引いた。

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