第24話 戦車へ
燃え盛る車には目もくれず、ヘラルトは周囲を確認していく。ウィレムの死体を確認するためだ。
いかに歴戦の戦士といえど、これだけ派手に爆発させれば一溜りもあるまい。だが相手が相手、ヘラルトも警戒しながら死体の確認をする。
しかし、ヘラルトは死体はおろか肉片の1つも発見できなかった。肉片一つも残さずに消えることなどないはずなのだが。
「……どこに消えた?」
『ヘラルト。ウィレムは足をやられて負傷してる。南に向かってるようだ』
アントンがヘッドホンからそう耳打ちしてきた。
「よく見えてるな。あとで酒でもおごってやるぞアントン」
『そりゃいいな。とびっきりのやつを頼むぞ』
「ああ、だが一度俺の膀胱を通してからになる」
『ションベンじゃねぇか!』
いいながらヘラルトは畑の中に目を向ける。
ヘラルトが注視したのは畑の草だ。
──草が踏まれた跡と血痕か。
恐らくはウィレムが通ったであろう痕跡が、畑の中にある。ヘラルトはそれを目で追い、目標を探した。
ひたすらまっすぐ続いたあと、急に側面に歩いている。
「うぐっ!」
銃声と共に飛んできた銃弾があった。恐らくはウィレムが放ったものだ。発砲してきた場所はある程度分かるが、ウィレムの姿は見えない。
「俺を一撃で仕留めなかったのは遊んでいるからか。舐めているのかルベルのごみ処理係」
銃弾は左腕に当たったがまだ動く。出血もさほど多くはない。相手が舐めくさっているのなら、まだ勝機はある。
「1対1だ。借りは返すぞ」
ヘラルトは追撃に移った。
短機関銃を構え、足跡を追いかける。
周囲には撃破された戦車や野戦砲の残骸が転がっている。
「貰うぞ」
ヘラルトは撃破された戦車の残骸から外れかけていた正面装甲の一部を力ずくでひっぺがし、盾代わりに使うことにした。
ルベルの使う戦車、レウⅡの正面装甲は20mmはある。これだけあれば通常の小銃弾などおそるるにたらず。
『ヘラルト。ウィレムとやりあってるところ悪いが報告だ。ルベル側の援軍が迫ってきている。このままでは先に救済同盟が吹っ飛ぶ。雇い主が消えたら金にならん。そいつは切り上げて救援にむかってくれ』
「……了解だ」
『ウィレムはそのまま逃げてる。足をやられたってのに逃げ足の早い奴だ』
ヘッドホンから聞こえてきたアントンの声に、ヘラルトは舌打ちした。
「決着はまた今度だ。それまで死んでくれるなよ。じゃないと俺が殺せない」
ヘラルトの奇襲からしばらくして、ルベルは攻撃を開始した。
周囲に展開していた野戦砲や戦車から砲弾を村へと撃ち込み、歩兵を前に出し始めたのである。
救済同盟も応戦、家屋に隠してあった野戦砲で反撃したが、ルベルの勢いを止めることはできなかった。
「さてどうやって攻めるか……」
『お前がダイナマイトをむやみやたらに使わなければ多少どうにかなったんだがな』
「あの状況だとあれが正解だったんだよ」
『どうだかな』
ヘラルトは双眼鏡で村の周囲を取り囲むルベルの兵隊の数を確認する。
「兵士と……野戦砲12門、レウⅡが8両、戦車の数に対して兵士の数が少ないな」
『ヘラルト。右を向いてみろ』
アントンの言葉の通りヘラルトが右を向いてみてみれば歩兵の1人も連れずにたった1両で砲撃している戦車が存在していた。
『普通のやつなら近づかない。ハッチに鍵だってついてるし機関銃だってあるからな。だがお前なら……分かるだろ?』
「ああ、お前の判断が間違っていないと証明してやる」
そう言うとヘラルトは戦車に向かって短機関銃を片手に向かっていく。




