第23話 突撃
「降りてこないとサイロもろとも吹き飛ばすぞ。降りてくるなら挽き肉にしてやるがな。好きな方を選べ。三流狙撃手」
畑に侵入してもヘラルトはアクセルを踏み込む足を緩めない。
ガタガタと揺れる車内、大柄のヘラルトは何度も頭を天井にぶつけた。しかし止まればウィレムの狙撃の的になる。
止まりたくても止まれない、というのが正しい。
「流石にこれだけの速度で走らせてれば狙いは付けられまい」
1人っきりの車内、ヘラルトがほくそ笑みながらそう言った直後だった。
窓ガラスを貫き銃弾が飛び込んできた。
飛び込んできた銃弾はヘラルトのこめかみを掠め、座席へと吸われていった。
「……やるじゃないか」
あと数cm横に弾がずれていればヘラルトの頭はくす玉にされていただろう。考えを改める必要がある。慢心せず、座席に出来る限り潜り込んで被弾する面積を減らすのだ。
ウィレムが居るサイロまではあと100m程度、ヘラルトが車で来ている以上ウィレムが逃げようとも必ず追いつける。
「そらどうする? もうお前の居る場所に届くぞ」
速度を落とさずにヘラルトはサイロへと突撃しようとした瞬間、ウィレムが銃を構える姿がちらと目に入ってきた。
ウィレムの銃には普通の小銃にはない棒状の物が銃身に取り付けられていて……
「まずい」
ヘラルトが頭を出来る限り低くした瞬間、車の中に大量の銃弾が撃ち込まれてきたのだ。そしてその速度は通常の小銃と同じではない。
「アダム・アパラートとはな、そんな物を大事に使っている奴がいたとは思わなかったぞ」
ウィレムの小銃に取り付けられた棒状のもの、それはボルトを引かなくても弾を連発できるようにする装置。しかしこれは短機関銃が生まれた瞬間使われなくなった。
「狙撃手の風上にも置けない野郎だ。だが勝負は俺の勝ちだ」
車には無数の穴が開き、ガソリンも漏れだしている。帰りは徒歩確定だ。
「あばよボロ車。ウィレムを後で送るから仲良くやれ」
ヘラルトはドアを開けると短機関銃と線で繋がったボタンのようなものを手に飛び出した。
「あばよ」
ゴロゴロと転がりながらヘラルトはボタンを押す。
すると次の瞬間、ヘラルトの乗っていた車、その後部座席から炸裂音と衝撃波が迸った。
その衝撃波の正体は車の後部座席にあらかじめ置いておいたダイナマイトとガソリン。今回はそれに加えてダイナマイトに大量のボルトや釘、鉄片が付けられている。
爆発と同時に鉄の破片や釘、そして車の車体が無数に周囲へとまき散らされた。爆発の威力が弾き出したそれはまき散らした釘や鉄の破片を殺人兵器へと変える。
車はサイロに衝突する直前に爆発四散したがそれでもウィレムに危害を加えるには十分。
「星になれ。ルベルの若頭よ」




