第21話 お礼の招待状
新型爆弾騒動から暫くの間は平穏な日々が続いた。
おとといはルベルの下っ端組織が暴れたのを適当に蹴散らした、そして昨日はルベルの下っ端が処刑しようとしていた多重債務者を助けた。
何か間違っているような気もするが平穏な日々だ。
「アントン。このまま何もないと俺もからからに干からびるぞ。何か仕事は無いのか? 飯が食えなくなる」
ヘラルトはアントンに向かってぼやく。
アントンの店に来たヘラルトはソファーに我が物顔で寝っ転がり煙草をふかし水で薄められた安酒を瓶のまま飲んでいた。大きな仕事がないからとヘラルトもだらけているのである。
「ヘラルト。口の端からこぼれてる酒を拭え。家が汚れる」
「今更だろ、武器屋の癖に灰皿には煙草の吸殻が山になってる、埃は雪が降ったみたいに厚く積もってる。これで汚れを気にするような奴はただの馬鹿だ」
気にせず飲み続けるヘラルトに呆れたようなため息を吐きつつ、写真を投げた。
「……なんだ?」
煙草を口に咥えると、投げられた写真を拾い上げ見る。
白黒のそれに映っていたのはどこかの村のようだった。畑があり、まばらに建物があり、そして馬もいる。
一見するとただの平和な村に見えるが……
「防御陣地……いや防衛線か? そこそこの防御力はありそうだ」
「ご名答」
ヘラルトの目には見えていた。畑の中に作物の影に隠れてコンクリート製の防塁が、建物の壁に野戦砲の砲身が見え、他には対戦車用と思われる幅の広い堀がある。
「ここはムステル救済同盟の拠点の1つだ。今現在ルベルの連中がちょっかいかけてる。そのまま捨て置くとここは取られるだろう」
「そんなに重要な拠点にも見えんがな」
アントンは一緒に地図を出してきた。ムステル全体が描かれているが地理的にここはさして重要な拠点ではない。無論拠点は拠点であるから守らねばならないというのは分かるが……
「まぁほっといても救済同盟の援軍が来る、規模がでかくなればヴォスも出張っていくだろう。今回のこれもバラまきの依頼だ。だが、お前はきっと受ける」
「ほう? 理由を聞こうか」
「ここの制圧をするにあたってルベルは部隊を送り込んでるわけだが、その指揮をしているのはお前の腹に穴を開けた男。ルベルの若頭、ウィレムだ」
聞いたヘラルトは煙草を床に投げつけると近くにあった重機関銃を担ぎ上げ外へと向かっていく。
「何やってるアントン。さっさと行くぞ。ケツに鉛弾をぶち込みにな」
「へいへい。やる気があるなら結構なこった。行くか」




