第16話 ダミアンの命拾い
痛む足を動かして、ヘラルトは北部の倉庫がある付近まで進む。
『ヘラルト。こっちの防衛線が突破されそうだ。急げ』
アントンはヘッドホン越しにそう言ってくるが、ヘラルトは頭が痛い。
「ダミアンめ」
ヘラルトは視線を感じていた。
現在ヘラルトがいる中庭には立ち木が数本生えているだけ。一見すると誰もいないように見える。しかし確信があった。
いる。
間違いなくダミアンがどこかに隠れている。
「どこだ?」
進みながら目を凝らしていく。どこかに痕跡などはないかと。
しかし探す必要はなかった。
「ここだっ!!」
銃声と共に聞こえたダミアンの声、ヘラルトは咄嗟に近くの立ち木に隠れた。
「賞金稼ぎ、傷のほうはどうだ!?」
「こっちに来て確かめろ!」
「白旗上げるんならな! それか自分の頭を撃ち抜け!」
ダミアンの声がするのは前方の立ち木だ。場所は分かっている。だが出ようとすれば確実に撃たれるだろう。
だから当てずっぽうで機関砲だけを出して射撃した。でてこい、そういわんばかりに。
「タチが悪いな」
ヘラルトの放った20mm弾はかなりの威力と銃声を誇る。そんなものを撃てば大抵の敵は怯む、新兵ならば悲鳴でも上げることだろう。
だがダミアンはそうはいかない。かなりの場数を踏んできたダミアンはむしろ嬉々として隙をついて銃を撃ってくる。
──機関砲の弾も少ない。早いとこなんとかしないとまずい。
何か利用できないものはないかと周囲に視線を向ける。
「……やるか」
ヘラルトは機関砲を再び撃ちながら木の後ろから飛び出し、銃声が聞こえたほうへと走っていく。
「自殺したくなったか! 歓迎してやるぜ賞金稼ぎ!」
ダミアンは走るヘラルトに向けて短機関銃を撃とうとしたが、そこで気が付いた。
ヘラルトが素手で突っ込んできていることに。
「は?」
顔を出したダミアンがほんの一瞬呆けた瞬間、眼前が黒く塗りつぶされる。
「ホゲァッ!?」
ダミアンの情けない声が響く。彼の顔面に鈍い音と共に黒々とした鉄塊がめり込む。鉄塊の正体、それはヘラルトが突撃と同時に投げた機関砲だ。
「こ、この野郎……」
のけ反りながらもヘラルトに銃を向けようとしたが、蹴り飛ばされた。
「勝負あったな。ダミアン」
すでに気絶したダミアンから短機関銃や手榴弾など、武器と言えるものは全て回収した。その場を去る。投げた機関砲は弾切れだ。
「あばよ。向こうで戦友達と仲良くやれ」
最後にトドメを差そうとしたら、ヘラルトの足元に銃弾が飛んできた。
「命拾いしたな。ダミアン」
ヘラルトはその場を離れ、反対側の銃声と爆発音が聞こえる方へと走った。




