第14話 精鋭、人狩り隊
船は更に速度を上げ、ついに研究所の目前までたどり着いた。
しかしそこは既に虐殺が起こった後だった。
研究所を守るシェフィール兵はほぼ一方的にルベルの精鋭『人狩り隊』によって殺害されているのである。
「うぉッ!? 駄目だこれ以上近づけねぇ!」
「もとからすんなり行けるなんて考えてない。飛び降りる」
ヘラルトはヘッドホンを肩に掛けると機関砲含む銃器を持ち、川に飛び込んだ。
「気を付けて行けよ! ヘラルト!」
「ああ、釣りでもして待ってろ」
川を全速力で通り過ぎていくアントンに手を振りながら、ヘラルトは川岸へと急いだ。研究所を守ろうとしているシェフィール兵はそれなりの数が存在している。
ヘラルトから見える範囲だけでも100名以上は居るだろう。しかし、劣勢なのは彼らの方だった。
「警報装置はどうした!? 援軍は!?」
「破壊されてやがる!」
「政治家共め! 予算削って結果がこのざまか!」
シェフィール兵は1人、また1人と人狩り隊の放つ銃弾によって倒れていく。シェフィール兵が進撃を阻止するために重機関銃まで持ち出してきたが、物陰に隠れ、夜闇に紛れ人狩り隊は距離を詰めてくる。
威嚇は通じなかった。
断じてシェフィール兵が弱いわけではない。兵士の数が足りないわけでもない。設備が悪いわけでもない。
ただひたすら実力に差がありすぎたのだ。
『ヘラルト! 研究所の後方からも奴らが迫ってる! 早いとこ行かねぇと爆弾が奴らの手に渡る!』
「分かってるさアントン。なんとかする。釣りでもして待ってろ。鮭が釣れるらしいぞ」
川岸にたどり着いたヘラルトはその場に伏せて周囲の状況を把握しながら煩く吠えるヘッドホンに答える。
川の周囲は森があり地面は下草でよく見えない。しかし今ヘラルトは人狩り隊とシェフィール兵の間、一時的に出来た中間地点にいる。留まればいずれ流れ弾を食らうだろう。
研究所周辺の状況を鑑みても急ぐ必要があった。少し考えたヘラルトは腰に付けた煙幕弾を手に取る。
「走るか。兵士は足が命だしな」
2発しかないが、ヘラルトは2発共自分の周囲に投げた。
「誰が煙幕投げた!?」
「知らねぇよ!」
突如出現した煙の壁に、シェフィール兵達は驚きの声を上げた。
そしてその瞬間、ヘラルトは動いた。
「ごきげんよう」
煙の中から姿を見せたヘラルトは眼前に立ちふさがるシェフィール兵に向け機関砲の引き金を引く。吐き出された20mm弾は過たずシェフィール兵の足に当たり、血と肉片をまき散らした。
「1人突っ込んでくるぞ! 撃ちまくれ! 何が何でもここを通すな!」
「馬鹿! そいつばっかり見てるんじゃねぇ!」
ヘラルトは歩みを止めない、銃を向けてくるシェフィール兵のみを倒し、先へ先へと急いだ。
「ああ畜生抜けられた! 誰か行って狩ってこい!」
「正面で手いっぱいだ! 後ろの奴等に任せて俺達は正面に集中しろ! グァッ──」
ヘラルトはシェフィール兵の守りを突破、森の木々や影を利用し研究所へと一直線に向かっていった。
後方でヘラルトの突撃を見ていた男がいる。
「あいつは──確か賞金稼ぎのヘラルトだな。なんでこんなところにいる?」
黒髪のその男はルベルの精鋭部隊、人狩り隊の副隊長でありルベルの若頭。名前をウィレムと言った。
「恐らくどこかから嗅ぎつけたんでしょうな。金になると踏んできたんでしょう」
隣で銃を撃つ仲間の言葉に、ウィレムは眉根を寄せた。
「軍も、ヴォスも知らない情報をか? ……まぁいい、邪魔になるならなぎ倒すまでだ。モーレンを破壊した男の実力、見せてもらおうか。こちらにも丁度モーレンを破壊したもう一人の男がいることだしな」
ヘラルトの突撃によって、少しだけ敵は混乱している。人狩り隊はこの機を逃さずシェフィール兵の守りを突破し、先へと進んでいった。




