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#知らない場所

目が覚めると、ふかふかのベッドの上にいた。


見慣れない天井と、少し感じる全身の違和感。


横を向くと、船員の二人も同じように寝ているのが分かった。


「鹿野、松原」


呼びかけてみるも、反応はない。


はて、一体何がどうなってこうなったのか。


一人で考え始めようとした時、ドアを叩く音が聞こえた。


反射的に目をつぶってしまう。


何か喋りながら部屋に入ってくるのが聞こえて、藤田は薄く目を開けた。


二人が心配そうにこちらを見て話しているが、言葉が全く分からない。


そのうち、一人が藤田が薄目で様子を伺っていたことに気づいたらしい。


目を輝かせながら近づいてきて、何やら喋りかけてきているが、単語の聞き取りすらできなかった。


言葉が分かっていないのが伝わったらしく、相手も困ったようにもう一人の方を振り返っている。


もう一人は考え込んでいる様子だったが、思いついたらしく何かを言った。


空気が変わるのを肌で感じた。


不思議な感覚だ。


「これでどう、かな」


不安そうに、何かを言ったもう一人の方が首を傾げている。


「言葉伝わる? 大丈夫?」


近くにいた人も心配そうに藤田を見ている。


突然言葉が分かるようになったことに戸惑いながらも、藤田は頷いた。


「よかったあ、助かったんだね!」


嬉しそうにしている人を見て、何が何だか分からず、もう一人の方を見る。


もう一人は苦笑して、藤田に近寄ってきた。


「こら、スク。困ってるでしょ」

「あ、ごめんなさい。俺、スクっていうの。あなたの名前は?」


どういうことだ? と状況に首を傾げながらも答えた藤田。


「藤田っていいます」

「フジ?」

「藤田……ふじ、た、です」

「え? フジタ?」


不思議そうにもう一人の顔を見たスク。


「ロトちゃん、どういうこと?」

「名前が違うんでしょ。スクが混乱させたみたいでごめんなさい。僕はロトっていいます」


ロトは頭を掻くと、はは、と小さく笑った。


「僕もあなたたちのことを聞きたいんだけど……たぶん、フジタさん? はここのことを聞きたいよね。ここはね、ソルセルリーって惑星なの」

「ソルセルリー?」

「うん。魔法の惑星。フジタさんたち、別の惑星の人でしょ。空から落っこちてきたんだもの」


唖然とした藤田。


魔法の惑星だなんて、聞いたことがない。


「宇宙のことは長く研究してるけど……ソルセルリーなんて聞いたことも」

「え、フジタさんって研究者なの? ロトちゃんと同じだ」


スクの言葉に、目を丸くしてロトを見る。


穏やかな雰囲気の人だ。


「スク、余計なことを言って混乱させないの。ごめんね、フジタさん」


スクを怒りながら、申し訳なさそうな顔をしているロト。


「いえ……研究者なんですか?」

「そう言われたらそうかも。学園の先生だから」


とすると、教育機関というものもちゃんとあるらしい。


かなりこの惑星は発展している。


「あまりにも授業をやらないから、この間怒られてたけどね」

「明後日からちゃんとするんですー、授業準備してたの見たでしょ」

「はいはーい」


ロトとスクは仲が良さそうだが、スクは見ている限り研究者ではなさそうだ。


なによりも、スクはまだ子どもだ。


藤田の視線に気づいたのか、スクが藤田を見る。


「俺は学園の学生なの。ロトちゃんの弟子!」

「弟子っていうか、住みついてるだけでしょ。ほら、ユキにご飯あげてきて」

「あ、そうだった。じゃあ、フジタさんまたあとでね!」


そう言って元気に部屋を出て行ったスク。


わ、と階段でつまずいたらしき音も聞こえてきて、藤田は苦笑した。


見れば、ロトも苦笑している。


いつものことなのだろうか。


「フジタさん。聞いていい?」


ロトがかしこまった様子で藤田に向き直る。


「なんですか?」

「この二人の名前は?」


そう言って、隣のベッドを見る。


「あぁ……手前が松原で、奥が鹿野です」

「マツバラさんと、シカノさん?」

「はい」


ロトはうーん? と首を傾げている。


何かおかしなことでもあるのだろうか。


「名前は長くても大体三文字なの。だから、珍しいなって」


藤田も首を傾げていると、ハッと気づいたようにロトが説明をしてくれた。


「そうなんですか?」

「うん。普通は名前は二文字」


かなり名前の文化が違うらしい。


同じ名前の人も結構いるんだ、とロトは笑っている。


「フジタさんのこと、フジって呼んでいい?」

「あぁ……構いませんよ」

「ありがとう。僕のこともロトって呼んでね」


そう言って、ロトは微笑んだ。

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