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ドラゴン戦


 ギャオオオオオオ!


 竜が咆哮をあげます。


 明らかな威嚇。


 ですが、ワタクシは気にせず歩を進めます。

 竜は一瞥すると、群がってくる虫でも払いのけるように、腕を振るってきます。


胡蝶桜嵐流 剣舞『冬の舞』


 前世でも今世でも、数え切らないほど、繰り返した型。

 体の芯まで刻み込まれた型は、恐怖すら超越し肉体を動かします。


「ふっ」

 

 攻撃に、合わせて呼吸を合わせ、薙刀を振るいます。

 薙刀の柄側の先端――石突を竜の爪に当て軌道を逸らしました。

 向きがそれた爪が岩肌にあたり岩が砕けます。


「ユアリティー!」


 若が名前を呼びましたが、気にすることなく、さらに前に踏み込みました。

 崩れてきた岩を花に舞う蝶のごとく華麗にかわします。


「やあ!」


 気合いの掛け声と共に、油断していた竜の額に渾身の一撃を叩き込みます。

 鱗が煌めいて飛び散ります。


 ほんの少しだけ。


 瞳が怒りに染まります。


ギャオオオオオオ!


 今度は威嚇ではなく、怒りの咆哮をあげます。


「ワタクシだって、蚊に咬まれるのは嫌ですからね」


 ようやく、虫けらかもしれませんが、敵だと認識してくれたようです。

 

 竜は、ギロリとワタクシを見下ろし、牙をむき出しにしました。

 ワタクシに噛みつこうとした瞬間。


バンッ!


 竜の額で魔法が炸裂しました。

 若の魔法が、直撃したようでした。

 何事もなかったかのように、竜が首を振ります。


「効かぬか」


 若が悔しそうに呟きます。

 ですが、ワタクシは竜がしかめたのを見過ごしませんでした。

 その威力僅少なれど、無ではないのです。


「若は、額に魔法を当て続けてくださいませ」


 ワタクシは、若に指示を出します。


「わかった!」


 若は頷き、次の呪文を唱え始めます。

 竜が、若の魔力の高鳴りに注意を持っていかれた隙をつきます。

 遠心力を最大限利用するように、大きく振りながら薙刀で首を狙いました。


 竜が気づき、避けます。

 先端だけ、掠りました。

 また鱗がほんの少しだけ、飛び散ります。


「よそ見するのであれば、その首切り落としてあげましょう」


 この世界で誰もが持っている魔力がワタクシにはありません。

 気配は読みにくいことでしょう。

 そして、魔力が生み出せずとも、この心に宿る気迫は本物。

 気持ちは誰にも負けません。


ギュオオオオオォォオ!


 完全にワタクシたちを強敵だと認識した竜が、魔力を口に集中させ始めました。

 竜の息吹――ドラゴンブレス。

 火山竜の名にふさわしく、一気に辺り一面が灼熱を帯びていきます。

 極限まで高まった熱が竜の吐息と共に、ワタクシに向かって放たれました。


 避けることができないほどの、範囲攻撃。

 絶体絶命の危機。

 つまりは、好機ということ。


胡蝶桜嵐流 剣舞『秋の舞』


「もらいうけます」


 ワタクシは、薙刀の柄を回転させながら、刺突しました。

 薙刀の刃の部分が光り輝くと、竜の息吹を吸収していきます。

 この薙刀の先端についている刃物は、元聖剣。

 敵の魔法を吸収効果を持つ魔法剣。


 竜の息吹は言ってしまえば、高火力の魔法にすぎません。

 薙刀の刃は、灼熱を帯び、真っ赤に光り輝きます。

 

 薙刀の柄の長さを利用して、空高く飛び跳ねました。


 竜が、ワタクシの姿を追うように、見上げ、口を開けます。

 ワタクシを噛み千切るつもりでしょう。


「そうはさせない!」


 若が、走り込んできて、竜の足を斬りつけます。

 竜が、痛みで体勢を崩します。


 好機です!


「その命、頂戴いたします!」


 カッと目を見開くと、竜の脳天をしっかり見据えます。

 狙いは、若が何度も魔法を放ち鱗がはがれたほんのわずかな傷。

 弓を引き絞るように、薙刀を持つ手に力を込めます。


胡蝶桜嵐流 奥義『神帝霹靂』


 ワタクシは、まっすぐに竜に向かって薙刀を投擲しました。

 夏の積乱雲から打ち下ろされる稲妻のように、放たれた薙刀。

 世界が割れるほどの、衝撃と共に、竜の額に突き刺さりました。


ギャウウウウゥウーン。


 火山竜は、断末魔をあげながら、大地に崩れていくように倒れていきました。

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