レッドドラゴンの力を持って現世に復活した俺は…
前回の続きですけど、今回で最終回にする事にしましたので、どうぞ最後までお楽しみ下さい。
俺の名は真盛太陽、高校2年生の17歳だ。
昨夜は若くて綺麗な声の女神に、飲めば超能力を取得する事が出来ると言う怪しい薬を渡されて、試しに飲んでみたら2回瞬間移動を使えたものの、3回目を使おうとしたら眩暈がして意識を失うと言う変な夢を見た。
目が覚めたらそこは洞窟の中で、ナビゲーターと名乗る女性が脳内に話し掛けて来て、どうやらこれは夢ではなく現実に起きてる事で、俺は死んで勇者に討伐されたと言うレッドドラゴンの生まれ変わりとして異世界転生したと言うのだ。
ドラゴンが持つ何でも願いが叶うと言う如意宝珠に願って、戦争の女神に殺された100人全員を生き返らせて現世に戻して貰った。
短い間に色々と奇怪な事が起こって、昨夜はずっと変な夢を見ていたんじゃないかと錯覚する程の感覚に陥っていた。
でも、学校に行けばまた嫌でもいつも通りの日常に戻らされて、そんな不可思議な体験も次第に忘れて行くだろう。
俺が通う高校は家から自転車で20分くらいの、偏差値50の可もなく不可もなくな普通極まりない公立の進学校だ。
だが、進学するつもりは全く以ってしてない。
何故なら高校卒業後はゲームの専門学校に行って、大好きなギャルゲーを作る仕事に携わりたいと思ってるからだ。
俺の偏差値も性格に比例して至って普通極まりないから、丁度自転車で通える距離にあったのは幸いだ。
ちょっと寝坊したので、いつもより速めに自転車を漕いで何とか始業時間までには間に合った。
今朝は慌ただしかったからスマホを見る時間がなかったけど、戦争の女神に殺された被害者が生き返って騒ぎになってるんじゃないかと思ってスマホを見たけど、SNSには上がってなかったし、学校でも騒ぎになってなかったから、まだネットには上がってなくて、俺が通ってる雄授亜高校でも騒ぎになってないから、この高校での被害者は俺だけなのかも知れないな。
普通死んだ人間が生き返ったら騒ぎになってネットに誰か書き込む筈だから、まだ朝早いからこれから上がって行くのだろう。
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
始業チャイムがなって、担任が入って来た。
俺の在籍する2年2組の担任・閣頭勇雄は、体育会系で体育を教える雄授亜高校で唯一恐れられてるマッチョな強面教師だ。
なので、始業チャイムが鳴る前には既にみんな席に着いている。
角頭が入って来た瞬間に日直が「起立!」と号令を掛けた。
「礼!」
「おはようございます!」
「着席!」
まるで、ヤクザの親分に挨拶する気分だ。
親分と言っても、閣頭は32歳だから若頭と言った方が妥当だが。
「先ずは、今日から入って来た転校生を紹介する。入って来い」
こんな高校に転校して来る奇特な奴が居るのか。
扉を開けて、背の高くて細いクールな感じのイケメンが入って来た。
「入って来いだなんて随分と偉そうだな。こんな高校で教師やってるくらいだから、脳筋なんだろうけどな」
「何だと!」
ルックスとは対照的に、随分と攻撃的な奴だな。
全校生徒が恐れる閣頭に、タメ口で悪口を言うなんて。
「図星か」
「教師に対する口の聞き方がなってないな。先ずはそこから叩き直さないとだな!」
「貴様は聖職者のつもりか?こんなレベルの低い高校で教師をやってる奴の言葉など、聞く耳持たんわ」
「そんな高校に転校して来といて、どの口が言ってやがる!?」
「偉大なお方が居るから来たのであって、貴様に用はない。下がれ」
「てめえ、表に出ろや!」
「本性を表しやがったか、チンピラ風情が。目障りだから、この場から消えろ」
「はい、分かりました」
急にどうしたんだ!?
閣頭が転校生の言う事を聞いて教室から出て行ったぞ。
閣頭が出て行った瞬間、クラス中が湧いた。
「うおおおおおお、閣頭が大人しく出て行ったぞおおおおおおお!!」
「きゃああああああ、カッコいいいいいいい!!」
「あの閣頭を言葉で打ち負かすなんて凄いな!」
みんな立ち上がって大騒ぎだ。
「悪いけど、君達も出て行ってくれないかな」
「はい、分かりました!!」
今度は、クラスのみんなが転校生の言う事を聞いて出て行ったぞ。
そして、教室には転校生と俺だけが残った。
これは一体どう言う事だ!?
「やはり、あなた様でしたか」
「えっ?」
「あなた様からは、とんでもない力を感じますからね」
何を言ってるんだ!?
しかも、さっきまでとは打って変わって急に物腰が柔らかくなったし。
「申し遅れました。私は黒峰龍治と申します。あなた様に直接お礼を言いに、この学校にやって参りました。あなた様は私の命の恩人ですからね」
命の恩人。
くろみねりゅうじ。
黒と龍。
ブラックドラゴン!?
「君も戦争の女神の被害者なのか!」
「はい」
「よく俺がこの高校に居るって分かったな」
「そんなの、如意宝珠を使えば容易い事ですよ」
「如意宝珠って、異世界でしか使えないんじゃ?」
「この世界でも使えますよ。胸に刻まれてますからね」
「胸に?」
俺はYシャツのボタンを外してTシャツを上に捲ると、胸に直径10センチくらいの円状の痣があった。
「いつの間にこんな痣が!」
「それは痣ではなく、如意宝珠が組み込まれた跡ですからね」
「それじゃあ、この世界でも何でも願いを叶えられるのか!?」
「はい」
「それは凄いや!」
「特にレッドドラゴンの如意宝珠は最強無敵と言われてますので、この世で叶えられない願いは皆無に等しいでしょう」
「とんだチートアイテムだな!」
「それだけに、あなた様を狙う輩が次々と現れるでしょう」
「例え誰が来た所で、この力があれば問題ないだろう」
「それがそうもいかないのです。レッドドラゴンの如意宝珠を以てしても、抗えない力が存在するのです」
「何だって!?」
「それは、神の力です」
「神…まさか!?」
「はい、そのまさかです!私の言う事に従え!」
「はい、分かりました」
はっ!
夢か…。
夢で良かったわ。
一応胸を確認してみたけど、如意宝珠の跡はなかった。
やっぱり、今までのは全部夢だったんじゃないか?
今時夢オチなんて、逆に笑えるわ。
異世界転生なんて、フィクションの中だけで十分だわ。
如何でしたでしょうか?
結局、急遽最終回にする事でありきたりな結末となってしまいましたけど、少しでも楽しんで頂ける事が出来たなら幸いです。
そうでなかったら申し訳ありません。
また、次回作にご期待頂ければ嬉しく思います。