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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 2章 『尾張国を飛び出して』
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第94話 近江への旅と大垣デート

 信長から命じられたのは近江の小谷城へ行って信長と浅井長政の同盟を成立させろというもの。いや、無理じゃん。だって俺あそこの領主の娘の服無理やり脱がせたり、浅井長政の腹撃ちぬいたりしてるんだよ? 絶対無理じゃん。「どの面下げてきた!!」みたいな感じで怒鳴りつけられるのが目に見えている。同盟なんて許されるわけがない。


「どうしよう、利家」

「……まさかこんなことになるとはな。やっぱり顔を隠していくしかないんじゃないか?」

「変装か……、マナー的な問題は大丈夫か?」

「バレなきゃ大丈夫だろ。お前のやらかしたことがこういう形で返ってきたんだ。まさに因果応報ってやつだな」


 こいつッ!! どの口で!! だいたいお前が変なこと言って捕まったせいでああなったんだぞ!! 小谷城に侵入する目的はお前の救出だっただろうが!! 助けてやったこと忘れてるんじゃないだろうな!! 

 どんなふうに怒鳴りつけてやろうか考えていると、その気配を察知した利家は、


「いや、まあもちろん助けてくれたのは感謝してるよ。でもお嬢様から服剥ぎ取ったのはお前だろ!?」

「仕方ないだろ? あれが一番手っ取り早くて確実だった」

「まあ、そうだな。あれ? っていうかあの時俺は顔を見られたけど大助は顔を見られてなくないか?」

「あ! そうか。あの時はずっとお嬢様の顔だったっけ。俺が顔を見られたのはお嬢様と門番の人くらいか」

「声さえ気を付ければバレないんじゃないか?」

「もし声が似てるって言われても声だけなら人違いで押し通せるかも」


 結論、意外と大丈夫そう。たぶん、なんやかんや耐える。というわけで俺は北近江の小谷城へ向かった。メンバーは俺の隊全員と信長の妹の市ちゃん。もちろんいきなり結婚というわけではなく顔合わせという形らしい。隊全員で行くのは市ちゃんの護衛という名目だ。

 市ちゃんは籠、俺たちはその周りを守りながら近江へ向けて出発する。


 出発してから4時間くらいたった頃。


「ねえ大助、私、そろそろ疲れてきたわ」

「ずっと同じ体勢は疲れますよね。わかりました。もう少し進めば大垣の町に着きます。そこで休憩しましょう」


 そういうわけで大垣について休憩タイムとなった。


「ふーっ! 疲れたわ。わあ、結構大きな町ね」

「近江と尾張の中継地ですからね。宿も多くありますし商人もたくさんいます」

「じゃあ少し観光でも……」

「ちょっと待ってください! 市ちゃんその恰好は目立ちますよ!! 城の外ですから危ない人もいますし」

「なら大助、あなたが付いてきなさい。大助がいれば大丈夫でしょ。大助は強いってお兄様も言ってたわ」

「……わかりましたよ。彦三郎、ここで隊の皆を休ませていてくれ」

「は!」


 ということで俺は市ちゃんと大垣の街に繰り出した。

 大垣は清洲や名古屋には劣るもののかなり発展している町だ。出店で食べ物なども売っていて、15歳の市ちゃんのテンションを上げるには十分だった。


「見てみて! あの店、串肉を売ってるわ! あっちは餅!! え!? 何あれ!?魚の……」

「目刺しみたいだけど……あんまり美味しそうじゃないな」

「そうね。とりあえず串肉からよ!!」

  

 数十分後、市ちゃんは串肉片手に串肉をほおばっている。ちなみに俺は謎のだるまとこけしを買わされ、さらに荷物持ちになっている。両手がふさがれている、これじゃあもし襲われたときに守れないぞ。


「ふひはあほおひせよ!!」 

「飲み込んでから喋ってください!!」


 ほんっとうに信長といい、市ちゃんといいこの兄妹は人を振り回すことに関しては天下一品だな。俺は軽くなった財布の中を確認しながらそう思った。

 市ちゃんに手を引かれ入ったのは茶屋だった。団子と抹茶のセットを市ちゃんが注文し(俺の金だけど……!!)、外の和傘のついたベンチに腰掛けた。


「はー! この町は楽しいわね!!」

「そうですね。市ちゃんはお嬢様ですから町で買い食いなんてする機会もめったにないでしょう。まして結婚したらもっと……」

「……」

「あ、すみません」


 結婚の話をした瞬間に市ちゃんが黙ってしまった。そういえば市ちゃんは結婚したくないって言ってるって信長が言ってたっけ。その意志を組んで顔合わせになったんだ。


「大助、私結婚はしないわよ」

「……それは、なぜ?」

「顔も見たことない人と結婚なんて絶対嫌。結婚するなら長秀とか勝家みたいな人がいいわ」


 その二人はだいぶ印象違うけど。共通点といえば顔が良いことくらい。勝家は髪型は変だけどイケオジって感じの人だし、長秀は見た目通り優秀な人だ(最近家がメイド喫茶に近づいてきていることは秘密のお話)。


「可成とか一益でもいいわね」


 あの二人はだいぶ性格終わってるけど。可成はいつまでもガキだし一益はギャンブル中毒者だ。ただし顔だけは良い。織田家臣団になまじ顔だけは良いやつが集まってるばっか市ちゃんの好みの男性が顔が良いやつになってしまっている。


「だいたい大助だっていきなり顔も知らない人と結婚しろって言われたら嫌でしょう?」

「そうですね。俺は既婚ですが」

「ああ、そういえば大助は恋愛結婚だったわね。羨ましいわ」

「やっぱり政略結婚は辛いものがありますよね」

「はっきり言ってくれるわね。私は生まれた時からお兄様の政治の道具よ」

「ああ、そういえば俺と結婚させる話もありましたね」

「あぁ、あったわね。そんな話。大助は愛妻家らしいから大助なら全然アリね。顔もいいし」

「俺は愛妻家なのでお断りですよ。それに浅井長政も結構顔は良いですよ」

「そうなの? っていうか会ったことがあるの?」

「……いろいろあったんですよ。詳しくは聞かないでください」

「ふーん、まあいいわ。お兄様も考慮して顔合わせって形にしてくれたわけだし、とりあえず会ってみることにするわ」

「それがいいでしょう。彦三郎たちも待っていますしそろそろ行きましょう」

「いいの? 大助が私とデートできる最初で最後の機会なのよ?」

「俺は愛妻家なので。これ以上のデートは妻に怒られてしまいますから」

「そう。大助の妻は幸せ者ね」


 そんな短時間ながらも楽しいデートの時間は終わりを告げ、その日の夜には近江国長浜へ到達した。





 


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