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【50万PV突破】 戦国の世の銃使い《ガンマスター》  作者: じょん兵衛
第二部 2章 『尾張国を飛び出して』
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第83話 美濃侵攻とユナの予告

 父上と共に暮らし始めて半年ほどたった頃、信長は次の戦を始めることになった。  

 尾張から見て北、美濃の斎藤氏を攻める戦いである。これまでもちょこちょこ戦ってはいたが、ついに本格的攻め滅ぼしにかかることになった。その原因は美濃の主だった斎藤義龍が死亡したこと。あとは斎藤龍興が継いだのだが、その相続のバタバタを狙って柴田勝家が美濃を攻めたところ、勝利した(森部の戦い)。

 その結果を見て、今ならいけると踏んだ信長が木下藤吉郎に墨俣に砦を築かせ、ついに本格的な美濃侵攻に踏み切ったのである。


「今回の美濃侵攻の主たる武将を発表する」


 家老の林秀貞が会議を取り仕切る。


「まず、総大将は信長様自ら務める」


 まあそうだろうな。まだ織田軍は軍を分けて、大将は城で待機なんて戦略がとれるほど戦力があるわけではない。それに信長が率いているときの織田軍が一番強いしね。

 

「続いて副将、柴田勝家、丹羽長秀」


 妥当だね。最も武力の強い勝家とオールラウンダーでどんな状況にも対応できる長秀。副将にふさわしい人物だ。


「続いて拠点である墨俣城の城主、木下藤吉郎」

「は!!」


 家臣団の末席の猿が元気に返事をする。桶狭間の功績でついに家臣団の末席に加えられた木下藤吉郎。今回、墨俣に砦を築いたことでついに一城の城主にまで成り上がった。


「さらに、前田利家、佐久間信盛、佐々成政、池田恒興、森可成、毛利新助、以上6名」


 え? 俺は? 利家も恒興も信長直下の武将は皆行くのに俺だけ行かないってどういうこと?


「あの、俺は?」

「大助殿は今回は出陣せず、清洲に留まっていただくことになります」

「理由を聞いても?」

「今回、大助殿と滝川一益殿は清洲で西の伊勢などから尾張を守っていただくということになっております」


 なるほどね。確かにみんなで行くのはまずい。でもなぜ俺? 俺は守るより攻めるほうがいいと思うんだけどな。でもまあ信長と林が話し合って決めたのならきっと何か合理的理由があるのだろう。


「わかりました、会議を妨げてしまい申し訳ございません」

「よい。では、各々準備に取り掛かれ。出陣は3日後だ」


 

 3日後、宣言通り信長と大部分の家臣は美濃へ進行していった。そして清洲に取り残された俺と一益は、


「暇ですね」

「そっすね」


 暇を持て余していた。尾張を守るといっても西側は大吾と彦三郎を配置して常時警戒態勢を維持している。東は元康のいる三河だから問題ない。美濃は今信長たちが攻めている。尾張の中央で俺たちはすることは無くなっていた。


「今頃、信長様たちは戦ですか」

「まだでしょう。今朝出発したばかりですから。ですが私の計算によると今日中にも先頭は墨俣城に入るでしょう」

「そうですか」

「はい」

「……」

「……」

「暇ですね」

「そうですね」

「あ、そうだ。せっかくですから一緒にギャンブルでもどうですか? 楽しいですよ、ギャンブル」

「結構です」

「まあまあそう言わずに。暇でしょう?」

「お金を捨てる趣味はありません」


 一人でギャンブルに行くという一益と別れ、おとなしく家に帰ることにする。


「ただいま」

「おかえりなさい、ご主人様」

「おかえり、大助」


 家に帰った俺を出迎えたのは夕飯を作っている祈とそれを座って見ている父上。


「大助、さっき客が来たぞ」

「客?」

「若い女の子だったな」

「あ、ユナさんです。何かご主人様に用があるからと」


 ユナか。あれからたまに未来の機械いじりの手伝いをしたりしていたけどユナが未来に帰る手掛かりはつかめそうになかった。何しろ宇宙船の時間を移動する一番大事な所が壊れているのだ。俺なんかにわかるわけもなかった。


「わかった、明日会いに行くよ」

「そうするのがいいでしょう、はい、ご飯ができましたよ。今日のメニューはカレーライスに落とし卵のスープです」

「か、カレーライスだと……?」

「な、なにそれ……?」


 俺が適当にスパイス混ぜて米にかけたら美味しいよって言っただけなのに……再現度が高すぎる。

 父上は単に知らない料理が出てきて驚いてるだけっぽい。


「「いただきます」」


 カレーだ。ちゃんとスパイスカレーだ。美味い。


「今日のは力作です!」

「ほ、ほんとにすげえよ……」


 ちょっと引くレベル。なんで出来るんだよ。

 父上の瞳に少し涙がうかんでいる。辛いの苦手だったっぽいわ。


 これ、ユナに食わせたら喜ぶかもな。あいつしばらくこういう料理食ってないだろうし。明日のユナへの手土産はカレーに決定。


 

 翌日、俺は尾張某所のユナの家を訪れていた。


「おっすー」

「いらっしゃい」

「これ、お土産。祈のカレーだ」

「え? すご。あんたの嫁本当にこの時代の人?」

「間違いないはずだ」


 ユナも祈のカレーに驚いている。だってカレーなんだもん。


「ありがと。あんたの嫁にお礼言っといて。それより今日は戦の話よ」

「戦?」

「そ。藤吉郎さまの活躍で墨俣に砦は築けたんだけど、本来の歴史ではこの後信長は一度美濃から撤退することになるわ」

「そうなのか」

「ええ、犬山の信清の裏切りでね」

「それ、やばくね? 犬山って結構重要な拠点だぞ」

「ええ、本来は滝川一益が対応するんだけど……なぜか滝川一益がギャンブル狂で信用できない。そこであなたにお願いが」

「聞いてやるよ」

「本来の歴史の一益の代わりに犬山の信清の反乱を鎮圧して欲しい」

「……わかった、引き受けるよ。信長様の為にもなるしそもそも尾張国内は今俺たちに任されてるからな」

「そう、助かるわ。何としてでも本来の歴史通りに進めなくちゃいけないの。それが秀吉様の為」

「……」


 きっと俺が信長に従うようにこいつは秀吉に従っているらしい。そして秀吉を天下人にするために動くのだろう。

 ……こいつとはいずれ、敵対することになるかもしれないな。

 そんな一抹の不安を抱えながら、俺はユナの家を出た。

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